2年もつハーブを余らせてしまうのはなぜ?専門家に聞く使い切るコツ【知って得するハーブの話 中編】
使う量は少量だし、使用頻度は低いと思いがちなハーブ。一度で使い切れず、結局ダメにしてしまったという経験はありませんか?けれど、「ハーブはいろいろな料理、また暮らしの中で役立つ植物」と断言するのは、アメリカでハーブ修行をされたハーバリストの蘭さん。【ハーブ専門家に聞く!ハーブの話 中編】では、ハーブを余らせないコツをお話していただきました。
2年もつハーブを余らせてしまう日本人
—— ドライハーブの賞味期限はどれくらいですか?
蘭さん: 大体2年くらいと言われています。1年で使い切るのが理想的と言われていますが、きちんと保存できていれば2年はもちます。アメリカの乾燥している地域などでは、3年位もつ場所もあるんですが…日本は湿気が多く、瓶を開けた時に湿気が入ってしまいやすいのでハーブがもたないんですよね。
——日本でのベストな保存方法を教えて下さい!
蘭さん: 一般的に直射日光が当たらない場所が理想的と言われているんですけど、電気の光など目に見える光すべてを遮断できる場所がおすすめです。あとは湿気が少なくて気温の高くない場所というのは絶対ですね。30℃以上になってしまうとハーブの香りがどんどん揮発してしまうので、30℃以下に保てる場所に保存します。
—— 夏場はどうすればいいですか?
蘭さん: わたしは、エアコンを一番長くつけている部屋に置いておくのをおすすめしています。適温が保たれている場所がいいですね。
——1〜2年もつのであれば使い切れそうな気もしますが、どうして日本の人はハーブを余らせてしまうんでしょうか。
蘭さん: 日本ではドライハーブは値段も高いので「ちゃんと使わないといけない」と思い込んでいる節はあるかもしれません。
——「ちゃんと」とは?
蘭さん: 例えば、日本でよく見かけるハーブレシピって「おもてなし料理」すぎるなと思います。よくハーブレシピ本に出てくるのが、「鶏レバーのパテ」なんですがそういった料理って、そんなに頻繁に作らないですよね。ハーブの料理教室でも、そういった非日常的なレシピが紹介されることが多いので、一度作って「楽しかった」で終わってしまうんだと思います。そもそも普段の料理にハーブを活かせていないのがハーブを余らせてしまう原因だと思います。
ハーブを料理で余らせないためには?
—— 普段日本の食卓でよく作られるような、伝統的な日本食に合う西洋ハーブはありますか?
蘭さん: わたしも実は、それは色々試してみたんですが…やはり違和感が出るんですよね。肉じゃがとか、昔からある伝統的な日本食にハーブの香りを加えると、絶対に家族からブーイングがきます(笑)。その人がこれまでに食べてきた和食にはみなさん特別が思い入れがあると思うんです。いわゆる「家庭の味」の部分に無理に西洋ハーブを使う必要はないのでないかと思います。強いて言うなら…シソに似ているバジルは、日本食に使えなくはないかなと思います。けれど、やはり伝統的な料理には伝統的な味付けが一番だと思います。
——そうなると、西洋ハーブは洋食に使う方が良いということでしょうか。
蘭さん: そうですね。その方が、美味しく食べることができますし、家族からのブーイングもこないです(笑)。けれど、作り慣れていない外国のレシピにハーブを使うと思うとなると、結局その料理自体を作る機会が多くなくて、またハーブが余る原因になってしまうと思うので、いつも家庭で作っている洋食レシピにハーブを使ってみるのはおすすめです。マジックソルトのように。
——和洋食のようなレシピですか?
蘭さん: そうですね。例えばナポリタンなど。食卓にハーブの瓶をおいておいて、香りを足したい時に気軽に足すといったように使うのはハーブを余らせない簡単なコツです。
—— 簡単で良いですね。その他にはありますか?
蘭さん: アメリカ人の方がよくやっているのは「ハーブのお薬」を作ることです。これは、ハーブを料理に加えるよりも、もしかしたらすごく日本人に合っているのではないかと思います。
—— 「ハーブのお薬」とは?
蘭さん: お薬と聞くと錠剤のようなものをイメージすると思うんですが、ハーブのお薬はハーブオイル、ハーブビネガー、ハーブソルト、ハーブシロップなどです。アメリカでは、これらを作る家庭がとても多いんです。
—— どのように作るんですか?
蘭さん: オイル、お酢(ビネガー)にハーブを浸したり、塩や砂糖にハーブを混ぜておくだけです。ハーブの旨味とハーブの香りがうつるので、ハーブを取り除いてもハーブの美味しいところだけが残ります。
日本でもハーブのお薬を作る人はいるんですけれど「薬なので不調な時に使うもの」と思っている方がとても多くて、作っても長期間使わないでそのままおいておくという人が多いんですよね。
—— アメリカでは薬以外の使い方もするんですか?
蘭さん: アメリカではお薬としてだけではなく、これらを料理にも使ってしまいます。例えば、調理オイルとして使ったり、ハーブシロップをはちみつの代わりに使うなど。その方が慣れないおもてなし料理を作るよりも、使いやすいと思います。
—— ハーブの量はどれくらい使うんですか?
蘭さん: 1カップほど使います。しかも2年間はもつので、すぐに使い切る必要もありません。
料理だけじゃない!ハーブの自由な使い方
—— アメリカでは料理以外でもハーブを色々なシーンで活用されているとのことですが、蘭さんが気に入っている使い方を教えて下さい。
蘭さん: アメリカに住んでいる時に、友人がプレゼントでお庭で育てていたローズマリーの花束をくれたことがあるんです。それはとても気に入っています。
—— 素敵ですね!送った側も、もらった側も癒やされそうです。
蘭さん: 海外生活でストレスも感じていた時期だったので、とても嬉しかったです。西洋では、花言葉をからめつつ花束を大切な人にプレゼントするという習慣があるんですが、ハーブは香りも楽しめるのでプレゼントとしても最適だと思います。
—— その他には、ありますか?
蘭さん: アメリカの方は、消臭効果のあるハーブをトイレに飾ったり、ゴミ箱に入れている方もいます。あとは、虫よけとして玄関先にまくなど。
—— ナチュラル志向な方にはいいですね!
蘭さん: アメリカは、ドライハーブなどは日本の1/3の値段で購入できることもあるので、使い方が豪快なのかなというのはありますが…(笑)。あとは、バスタイムにハーブを利用するのも一つの手ではないかなと思います。湯船にハーブを浮かべてハーブバスにすると、ハーブの香りで気持ち的なリラックス効果はもちろんですが、スキンケアやボディーケアにもなるので。
—— ハーブの香りに包まれて気分も良さそうです。
蘭さん: はい。もしお風呂を張ることが難しい方などは、桶に熱湯を注いでハーブを浮かべるハーブスチームもいいと思います。顔を桶に近づけて、頭からバスタオルを被ってハーブの蒸気を逃さないようにします。香りでリラックスしつつ、お肌のお手入れもできますし。あとは、鼻が詰まっている方などは、鼻水が出やすくなり鼻がスッキリします。
ライター取材後記
日本の食卓で育った筆者にとって、ハーブは外国のものだと思いすぎていたような気がします。つい難しく考えがちでしたが、実はとてもシンプルで特別な工夫は必要ないのだなということがとてもよく分かりました。振り返ってみると、ミートソーススパゲッティーや、オムライス、煮込みハンバーグなど、子どもがいる家庭ならではの和洋食を作っていることが多く、そうしたメニューにハーブは実によく合うなと感じます。
取材協力: ハーバリスト 蘭さん
アメリカで5年間ハーブを学びディプロマを取得後、帰国。「ハーブのある暮らし」がなかなか実践できずにいる方へ、明日から試したくなるような楽しいハーブの使いこなしアイディアをご紹介。
instagram: herbs_onme
HP: pinch of HERBAUTHOR
桑子麻衣子
1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。
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