日本に出回っているハーブの知識はごく一部?【ハーブ専門家に聞く!知って得するハーブの話|前編】

 日本に出回っているハーブの知識はごく一部?【ハーブ専門家に聞く!知って得するハーブの話|前編】
Photo by Brooke Lark on Unsplash

「ハーブ」と聞くとどんなことをイメージしますか?「ハーブティー」「パーティー料理」「リラックス」といった答えが寄せられるかもしれません。実はわたしたち日本人の多くが持っているハーブの知識はほんのごく一部。だから「ハーブは特別なもの」とイメージしたり「ハーブを余らせてしまう」という問題に直面するのも珍しくないようです。そこで今回はハーバリストの蘭さんに、ハーブについての疑問のあれこれを3回にわたりお答えいただくことに。前編では、蘭さんがハーブ修行をされたアメリカと日本のハーブに対しての考え方の違いについてお話していただきました。

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アメリカの食卓ではハーブは調味料?!

—— 蘭さんがハーブに出会ったのはアメリカですか?

蘭さん: 実は日本でもハーブ講座に参加したことがあったんです。けれど、その時はあまりハーブにときめかなかったんですよね。

—— なるほど、その時はハーブに対してどんな印象を持ったのですか?

蘭さん: もう結構前のことなので、今は違うかもしれないのですが…外国のものを雰囲気で味わうという印象がありました。「ハーブ=非日常的なものを楽しむ会」というような。

—— 確かにハーブは特別な時に使うというイメージがあります。手の込んだ特別な料理に使ったり、お客さんが来た時に出すハーブティーを出したり…

蘭さん: そうなんです。日本ではハーブは非日常的なものとして扱われることが多いんですが、アメリカに渡った時に、ハーブを日常的に使っていることに驚きました。それがないと生きていけないというように。「ハーブって役立つんだ」ということに気づいたんです。

—— それでアメリカでハーブの勉強をはじめたんですか?

蘭さん: 勉強というか、アメリカで暮らすのにハーブを使いこなせるようにならないと料理ができなかったというのが本当のところです。日本って、料理をする時に調味料を使うじゃないですか。けれど、アメリカでは料理にハーブで味付けをすることが一般的なんです。

アメリカに住んで最初の頃は日本の調味料を買っていたんですが…売っている場所も限られているし見たことのないようなメーカーだったりして(笑)値段も日本の3倍したので、これでやっていくのはちょっとキツイなと思ったんです。5年間アメリカに住む予定だったので、ハーブを使いこなせるようにならないとここで暮らすのは難しいということに気づき、ハーブを使った料理を試行錯誤しはじめました。

—— アメリカの家庭では味付けはハーブだけということですか?

蘭さん: 塩コショウにプラスしてハーブという感じですね。ハーブの香りの違いで、味の違いを出します。日本は、みりんだったり、めんつゆだったり、本当に調味料の色々なボトルがあって、それで味を変えるのが日本風だと思うんですが。

—— 海外にいると料理の幅が広がりますね。

蘭さん: そうですね。自分で試行錯誤しながらハーブを料理に使うようになって、料理の腕が上がったと思います。ハーブを使えば、減塩にもつながるので本当に便利です。

アメリカではハーブは「役立つ植物」

——アメリカではハーブはどう捉えられているんですか?

蘭さん: 日本でハーブというと、薬草や香草と言われることが多いと思うのですが、アメリカでは、昔は「ハーブ」「野菜」という境目がなかったんです。今でも「それって野菜でしょ?」というものが海外のハーブの本に載っています。例えば、玉ねぎや人参の葉っぱ、ごぼうなど。にんにくや生姜も日本だと野菜とイメージする方が多いかもしれませんが、アメリカだとハーブに分類されているんですね。あと、日本のハーブとしてすごいと言われているのが、椎茸と舞茸です。

——椎茸と舞茸も?!

蘭さん: そうなんです。日本でいうバジルやミントのような感じで、アメリカでは椎茸や舞茸をすごいハーブとして扱っています。ハーブを一言で表すのは難しいのですが、人によっては「役に立つ植物」という人もいます。

——どんなことにも使えるという意味ですか?

蘭さん: そうですね。料理やお茶にもできますし、掃除や消臭剤としても使えたりするので、何にでも役立ちますね。ハーブに役に立たないものはないです。

—— どんなことにも役立つようになったハーブの普及の裏には歴史的背景があるんですか?

蘭さん: アメリカでは、ハーブは先住民の時代から薬用として使われていたと言われています。その後、ハーブを医療として活用するヨーロッパ人からの知識がアメリカに入ってきて、それが融合したんですね。実はアメリカにハーブの知識が入った時には、ヨーロッパではもうすでに「ハーブは古いもの」として扱われて、一度廃れてしまったそうです。その間に、アメリカでは中国の移民の方もたくさんいたので漢方の知識も入ってきて、さらにどんどん新しくアップデートされていったと言われています。

—— アメリカではハーブにも多様性があるんですね。

蘭さん: そうですね。色々な民族の人がアメリカにはいますので、いろいろな知識が融合されたのがアメリカのハーブです。今は、アメリカのハーブの知識がヨーロッパに逆輸入されるくらい、大きなものになっています。

—— 「ハーブは料理に使うもの」「ハーブはハーブティー」という決まったもの以外は使えないものとイメージしていましたが、ハーブの使い方に間違いはないというような印象を受けます。

蘭さん: はい。料理の他にも、昔はあまり家が清潔な状態でもなかった上、芳香剤のようなものものなかったので家のニオイ消しに使ったり、冷蔵庫がなかったので殺菌効果のあるハーブを使って食べ物を長持ちさせたりしていて、それらの知識を利用して今でも料理以外の場面でハーブを活用されている方は多いです。

—— おばあちゃんの知恵袋として、現代にも受け継がれているんですね。

蘭さん: そうですね。アメリカでハーブのない家って本当にないんです。場所にもよりますが、一軒家に住んでいる人が多いので、お庭でハーブを育てている人が多いですね。 

日本のハーブ情報はごく限られたもの

—— 日本でアメリカで学んだハーブの活用方法や知識を発信するようになって違いを感じることはありますか?

蘭さん: 日本にあるハーブの情報は本当に限られたものです。例えば、アメリカのハーブの教科書が分厚いものであるのに対して、日本のハーブの教科書は数センチ程度なんです。アメリカと比べると、日本の教科書は初級程度に当たる内容で占められていています。 

—— 日本のハーブの知識はごく一部ということですか?

蘭さん: そうなんです。日本には『お決まりのハーブの使い方』のようなものがあり、みなさんそこに忠実に従ってハーブを使っているように見えます。みんながそれ以上のことはしないし、それを学んだ人もまた同じ使い方を守る、という印象です。

—— 応用方法を知らない人が多いんですね。

蘭さん: ある日、わたしがアメリカではみんながやっているハーブの使い方をSNSで発信したんです。すると、忠実に基本からはみ出ずにハーブを使っていた方々が「もっと自由に楽しみながら使っていいんだ!」ということに気付き、「ハーブを楽しく使えるようになりました!」というご意見が多くありました。

—— 新しい風を吹き込んだんですね

蘭さん: 色々なアレンジ方法を知れれば、よく聞く「ハーブを余らせてしまう」ということもなくなると思います。 

ライター取材後記

パンデミックを経験し、健康志向な人が増えました。それをきっかけに、多くの人が新しいレシピに挑戦するようになったのではないでしょうか?ちょっと手の込んだレシピによく出てくるハーブは、一度では使い切ることができずそのままダメにしてしまいがちです。次回【ハーブ専門家に聞く!知って得するハーブの話 中編】では「ハーブを余らせない方法」をご紹介。「ハーブは特別なもの」というイメージから、より身近なものとして活用する方法をご紹介してくれますよ。

取材協力: ハーバリスト 蘭さん

写真: ハーバリスト 蘭
写真: ハーバリスト 蘭

アメリカで5年間ハーブを学びディプロマを取得後、帰国。「ハーブのある暮らし」がなかなか実践できずにいる方へ、明日から試したくなるような楽しいハーブの使いこなしアイディアをご紹介。

instagram: herbs_onme

HP: pinch of HERB

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AUTHOR

桑子麻衣子

桑子麻衣子

1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。



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