【理学療法士が解説】ヨガの基本ポーズがラクになる「背骨」の動かし方
アーサナの質を上げる肝は、背骨にアリ。そこで、屈伸、側屈、ねじり、そして真っすぐと、あらゆる基本ポーズで背骨の使い方をマスター。ポーズを深めて目指すは脱・初心者!
まずは背骨の特徴をチェック。「背骨が動く」のは椎間関節だから
「ヨガのアーサナは背骨から動かすことで正しく、快適にとれる」と中村尚人先生。椎骨という小さな骨が積み上がって形成される背骨は、椎骨をつなぐ椎間関節によって、曲げる、反る、ねじるなど、さまざまな方向に動きます。
背骨のなかでも、可動性のあるのは首にあたる頸椎、胸にあたる胸椎、腰にあたる腰椎の3パーツ。得意な動きや可動域もそれぞれ異なるそう。
「腰椎は、椎間関節の形状が左右で挟む形になっているため、ねじる動きが苦手。一方、頸椎や胸椎は屈曲、伸展、側屈、回旋とあらゆる動きが可能です。特に首は肋骨とつながる胸椎に比べると、動ける範囲が広くなります」(中村先生)
頸椎、胸椎、腰椎の割合をおさらいしておこう
中村先生は「背骨=ほぼ胸椎と考えてもいい」と言います。
「多くの人は鎖骨より上は首だと考えますが、実は頸椎は喉ぼとけのあたりで終わりです。頸椎と腰椎は手のひら1枚分に対し、胸椎は手のひら3枚分。胸椎が背骨に占める割合は、実に5分の3にもなるんです」
それだけにヨガの動きのなかでも胸椎の役割は大きいそう。
「たとえば反る動作がもっとも得意なのは腰椎です。得意なだけに伸展系のポーズの際、過剰に腰が反りやすく、結果、背骨の5分の1にストレスが集中。腰を痛める原因にもなります。そこで、背骨の多くを占める胸椎を中心に動作することを意識すると、負荷が分散し、ポーズが楽にとれるようになるわけです。このように背骨のどこを使うかで、動きはまったく変わってきますよ」
自分の「胸」を意識すると……
鎖骨の上に手をあてて呼吸に集中。「鎖骨の上まで胸」とイメージしながら深呼吸を繰り返そう。それだけで呼吸が深まり、鎖骨あたりまで大きくふくらむようになる。
腰から反ろうとすると腰が詰まり苦しくなる。一方、胸椎を使って動くと、背骨の一部だけに負担がかからなくなるため、痛みがなく、楽に体を反らせることができる。
背骨=胸椎から動いてポーズを深めるカギは「肩甲骨」だった
胸椎が大事なことは理解できたものの、胸椎のある場所には「肋骨」という大きな骨がドーンと存在。首や腰と違って、なんとなく意識しづらいし、単独で動かすのは難しそう……。
「そこで胸椎をうまく使うカギとなるのが、肩甲骨です。胸椎は肩甲骨とともに動いているので、肩甲骨を意識して動かすと、胸椎もうまく使えます。また、肩甲骨は腕の根っこでもあるため、腕の使い方でも変わります」(中村先生)
肩甲骨と連動した胸椎の動きを習得すれば、体幹の筋肉も働き、ポーズが安定。当然、動きは大きくなり、ポーズも深まっていきます。さらに、ヨガによってもたらされる効果もより大きいものに。
「胸椎を使えるようになると胸が開くので、呼吸がしやすくなり、内臓も圧迫から解放。自然とメンタル的にも前向きになります。漫然とポーズをとり続けるよりも、たくさんのメリットがありますよ」
そもそも「背骨から動くとポーズが深まる」理由は?
1.真ん中から動くと大きな動きになる
背骨の動きそのものは小さくても、手先・足先と末端に行くに従い、中心軸の動きの大きさが影響。軸から動くほどポーズものびやかに!
2.体幹の大きな筋肉を使える
背骨の近くには腹筋群、脊柱起立筋、広背筋など大きな筋肉が集結。背骨から動くことで大きく、強い筋肉が働き、ポーズが安定。
教えてくれたのは…中村尚人先生
理学療法士、ヨガインストラクター。TAKT EIGHT主宰。理学療法士としての知識と経験を活かした指導で人気。医療とボディワークの融合、予防医学の確立を目指し、指導者育成、執筆活動、講演等幅広く活動。
モデル…池田莉子先生
幼少から新体操を始め、全国大会に出場するなど活躍するが、疲労骨折で引退。その後ヨガと出会い、ヨガインストラクターの資格を取得。現在、雑誌や広告・CMなどでモデル業をこなしながらヨガ講師としても活動中。
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