「口を挟まずただ相手の話を聞けばいい」わけじゃない?臨床心理士が教える【上手な話の聞き方】

 「口を挟まずただ相手の話を聞けばいい」わけじゃない?臨床心理士が教える【上手な話の聞き方】
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南 舞
南 舞
2021-10-18

今はカウンセラーの間だけでなく、企業の管理職研修など一般的にも【傾聴】という言葉が浸透しています。ところが、傾聴というと、『相手の話に口を挟まずにただ聞くだけ』といった意味で使われていることも少なくない様子。良かれと思って聞いているつもりでも、それが逆にコミュニケーションをギクシャクさせていることも。正しい傾聴のやり方と、話を聞く上で頭に入れておくとコミュニケーションに生きることを、聴くことのプロである臨床心理士が解説します。

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傾聴の本来の意味は?

傾聴とは、カウンセリングにおけるコミュニケーションの技法のことで、相手の話すことに積極的に耳を傾けて関わっていくことです。米国の心理学者、カール・ロジャーズは、相手の話を聴く際に大切にされるべき3大要素を以下のように提唱しています。

共感的理解

相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。

無条件の肯定的関心

相手の話を良し悪しなどの評価を入れずに聴く。相手の話を否定せずに、「そのように考えるのはなぜか、どんな背景があるのか」と言ったように肯定的な関心を持って聴く。

自己一致

聴き手が相手にも自分にも真摯な態度で、話が分かりづらい時には「分かりにくい」という旨を伝え、相手の真意を確認する。

傾聴にまつわる誤解とは?

ロジャーズが唱えた傾聴とは、言い換えれば【積極的傾聴】と言えます。つまり、「聞き手も積極的な姿勢でいる」ということです。本来の傾聴とは、身動きせず、ただ笑顔で「うんうん」と話を聞きっぱなしにするというものではありません。「それから?」と話の続きを促したり、「いつからそんなふうに感じるようになったの?」など具体的な質問を投げかけることも、立派な傾聴のスキルです。傾聴と聞くと、日本では「指示や意見をしないで相手の話を聴くのが良いこと」といったイメージが持たれがちですが、それでは話を聴く側がモヤモヤした気持ちを抱えることになってしまいます。わからないことは「わからない」と言い、違和感を覚えることはその旨を伝えることが、「相手を知ろうとする」という本来の傾聴の姿なのです。

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南 舞

南 舞

公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。



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