(1)春野菜はなぜ苦い?
(2)「苦味」がもたらすデトックス効果
(3)小腸と苦味の関係
(4)気を付けたい「苦味」「アク」とは
苦味で身体が冷える?
苦味で失神?「イソチオシアネート」は要注意
苦味やアクを上手に取り入れましょう
苦味に似た成分「アリシン」にも要注意
(5)まとめ
春野菜などの野菜の苦味には「自己防衛」のような役割があります。
冬の寒さに耐え、春先に新芽を出した植物。野生動物もまた寒さに耐え、冬眠から目覚めたばかりのお腹を空かせた動物たちにとって、春の新芽はご馳走です。
そんな動物に食べられてしまわないように、植物の新芽は動物たちが苦手な「苦味」を持ち合わせているのです。
「苦味」は動物が毒物の摂取を避けるために発達した味覚だと考えられていて、特に肉食動物では、少しでも苦味がある食物は食べないとも言われています。
代表的な春野菜は「ふきのとう」「つくし」「こごみ」「タラの芽」「たけのこ」「ふき」「菜の花」「うど」などがあります。また「春の七草」であるセリ・ナズナ・ゴギョウ(ハハコグサ)・ハコベラ(ハコベ)・ホトケノザ(タビラコ)・スズナ(カブ)・スズシロ(ダイコン)も苦味がある春野菜です。
(2)「苦味」がもたらすデトックス効果
春野菜などの苦み成分は「植物性アルカロイド」という物質で、腎臓の役割である老廃物を体外に排出する作用や、肝臓の役割である解毒作用・代謝機能を高める作用があります。
また、身体の余分な熱を取り去る「清熱作用」や整える作用、利尿作用で余分な水分を取り除き水毒を防ぐ作用もあり、デトックス効果が高いと言われています。
また、山菜やタケノコ・ふきなど、春野菜には「苦味」と共に「アク」がある野菜が多いのも特徴のひとつです。
このように春野菜に多く含まれる「苦味」成分や「アク」抜きをした春野菜が私たちの身体に良い作用(デトックス効果)をもたらしてくれるのです。
「五臓六腑」という東洋医学の言葉がありますが、苦味・甘味・酸味をはじめとする「五味」と「五臓六腑」には深い関係があります。
※五臓六腑…五臓(心臓・肺臓・肝臓・腎臓・脾臓)と六腑(胃・小腸・大腸・膀胱・胆嚢・三焦)
五味のひとつである「苦味」は五臓六腑の中で「心・小腸」や「舌」に関連していると考えられ、春はそれらの臓器に症状が出がちであると考えられています。
無性に苦味を欲する時はそれらの臓器が弱っている時であり、また苦味を摂ることにより、体の「熱を整える」「余分な水分を排出する」「頭痛や咳をおさえる」などの働きがあるとも考えられています。
また近年の西洋医学でも、舌で感じるとされていた苦味を感じる細胞の類似物質が小腸にもあるという研究や論文が多く見受けられるようになり、苦味がもたららす身体への影響の研究は今もなお進化を続けています。
苦味がもたらす身体への影響
苦い食べ物の代表ともいえる「ゴーヤ」。ゴーヤは元来、真夏の暑い時期の沖縄の食べ物です。
苦味には老廃物を排出する作用がありますが、身体の熱を取る作用もあります。
また、摂り過ぎると肺や大腸に不調があらわれたり風邪をひきやすくなる傾向があります。
東洋医学では「苦」とのバランスをうまく取ってくれる五味は「辛」とされ、ねぎ・紫蘇・生姜・にんにく・胡椒・山椒など身体の巡りを良くする「薬味」の辛味が有効です。
寒暖差の激しい春先は、毎日の気温の変化で自律神経も乱れがちです。気温差が不安定な時期ですので、春野菜と一緒に是非「辛」を摂ることをお勧めします。
「大根のすりおろしの絞り汁がからだに良い」と聞いたことはありませんか。
脂の多い青魚や多くの料理の薬味に使われる大根おろし(大根おろしの汁)は「アミラーゼ」や「ジアスターゼ」と呼ばれる消化酵素が多く含まれており、胃の働きを良くする作用や、血液をサラサラにする効能があります。
しかし大根に含まれる苦み成分である「イソチオシアネート」と呼ばれる苦み成分は、殺菌効果が高く、胃の粘膜を刺激してしまうため、空腹の胃や胃が弱い方、迷走神経反射など自律神経の弱い方が摂取してしまうと、激しい胃痛に襲われたり失神を招く恐れがあります。
イソチオシアネートは抗酸化作用がありがん予防や動脈硬化予防、排毒作用など身体に良い作用も多い物質ですが、大根に触れると手のかゆみが蕁麻疹が出たり、喉がイガイガしたり胃痛腹痛がおこる「大根アレルギー」症状が起こる方もいます。
「苦い=身体に良い」というイメージのまま、身体が受け付けていないのに無理に摂取することは危険ですので、苦味を自分が欲しているのか拒否しているのかを身体で感じて取ることも大切です。
苦み成分「イソチオシアネート」が含まれている主な野菜は「アブラナ科」の野菜です。
大根をはじめ、クレソン・からし(菜)・わさび(菜)などピリリとする野菜、水菜・小松菜・白菜・ブロッコリー・カリフラワー・かぶなどにも含まれています。
イソチオシアネートはすりおろしたり切ったり、野菜の細胞が壊された時に多く出ます。また、イソシアネートは加熱に弱いので苦手な方は調理方法で工夫してみましょう。
山菜やたけのこなど春野菜の「アク」には「シュウ酸」が含まれています。ほうれん草にも多く含まれている「シュウ酸」は結石や腹痛の原因となるため、糠や重曹などを用いて湯がくことでシュウ酸を取り除く必要があります。
また、「青酸(せいさん)」といわれるアクも身体には悪く、青梅やじゃがいもの新芽や青い皮(食べるとピリピリします)に含まれています。肉を茹でた時のアクもあまり良くありません。それとは逆に、身体に良いアクもあります。
根菜類・芋類・豆類などのアクは抗酸化作用のある「ポリフェノール」や「サポニン」が多く含まれ、身体をサビさせない作用や脂肪を流す作用があります。ポリフェノールやサポニンは水に溶けやすいため、根菜や芋や豆などを水にさらし過ぎは注意し、茹でた煮汁はそのまま調理することをお勧めします。
生の玉ねぎ・あさつき・にんにく・にらなどに含まれる「アリシン」には強い抗菌・殺菌力があり、気管支炎や風邪予防、食中毒を防ぐ薬味として古くから重宝されてきました。
しかしこの「アリシン」も「イソチオシアネート」同様、その効能が強いため、過剰摂取をすると胃腸内の善玉菌を殺してしまったり、胃腸障害を引き起こす原因となり、身体が弱っている時や自律神経が弱い方は失神に至るケースもあります。アリシン同様加熱に弱く、油と調理すると成分が分解されにくいため、生が苦手な方は油と一緒に加熱調理することをお勧めします。
「春野菜=苦味=デトックス」というイメージがありますが、調理法を間違えたり、身体が受け付けないのに無理に摂ろうとしたりすると逆効果なこともあります。
春野菜はしっかりアクを取る、自分の身体がどのくらい苦味を欲しているのか・美味しいと感じるのか、間違えた苦味を摂ってしまっていないかをしっかりと意識し、身体が喜ぶ「苦味」をうまく取り入れ春野菜を愉しみましょう。