甘いもの=太るとは限らない!【医学博士が解説】「太りにくいおやつの食べ方・選び方」

 甘いもの=太るとは限らない!【医学博士が解説】「太りにくいおやつの食べ方・選び方」
AdobeStock/canva

甘い物は食べたいけれど太りたくないというのが女性の本音。おやつを我慢しないで体型を維持できたら理想的です。その願いを叶える甘い物との上手なつき合い方を医学博士の岩崎真宏さんに教えていただきました。

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我慢しなくていい!?  甘い物を欲するのはエネルギー不足のサイン

仕事や運動を頑張った後、甘い物が欲しくなりスイーツについ手が伸びてしまうことはありませんか。食べてしまって後悔する、を繰り返しがちですが、実は体が甘い物を欲しがるには理由があるのです。

「糖質(ブドウ糖)は、体や脳を動かすために最も効率よく働くエネルギー源であり、血糖値を正常な血糖値範囲である90~100mg/dlに保つことが必要です。そのため脳には血糖値の微妙な変化を感知するセンサーがあり、血糖値が下がるとエネルギー不足を防ぐために糖質を摂取するように指令を出します。それによって、空腹感よりも『甘い物を食べたい』という食行動に駆り立てられるのです。またエネルギー源となるブドウ糖はグリコーゲンに形を変えて肝臓に蓄えられ、グリコーゲンが減っても甘い物が欲しくなります。体力や集中力を使った際、無意識に糖質を含む甘い物をつまんでいるように思えますが、実は活動に必要なエネルギー源を補うための理にかなった行動なのです。食べ過ぎに注意して適度に糖質を補給しましょう」(岩崎真宏さん)

スイーツ好きに朗報!「甘いのに太りにくい食べ物」

「甘い物は別腹」というように、お腹がいっぱいでも食べてしまうのがスイーツの罪。食べたい欲求と健康や美容との折り合いをつけるのが難しいですが、ダイエット中でも「選び方」を間違わなければ無理に甘い物を我慢する必要はありません。食べても太らない甘い物とは?

カロリーゼロの「羅漢果糖」

「カロリーを気にせず食べられるのが、中国の桂林で栽培されている羅漢果という植物からとれる『羅漢果糖』です。モグロシドと呼ばれる甘さが砂糖の約300倍あり、腸で吸収されず体外に排出されるためカロリーはゼロ。その他、天然の甘味成分として自然界にわずかしか存在しない希少糖というものもあり、人の体にはあまり食べないものをエネルギーとして代謝するしくみが備わっていないため、吸収しないまま排出されます。しかしこうしたゼロカロリーの甘い物ならいくら食べてもいいかと言うとそうではなく、希少糖などであっても摂り過ぎると糖代謝が低下して糖尿病になりやすいという報告があります。次はその仕組みを説明していきます。希少糖を摂取すると体はそれをブドウ糖と勘違いし、一旦は細胞に取り込みますが吸収できず体外に排出します。このサイクルが続くと本物のブドウ糖を摂取しても腸が吸収できなくなり、結果インスリンが分泌されず食後の血糖値が上がりやすくなってしまいます。次に紹介する人工甘味料でも同じことが言えます。ですから習慣的に摂るのではなく、デザートや間食を我慢できないときなどに上手に活用し摂取カロリーを調節してください」(岩崎真宏さん)

甘味
ラカンカ/写真AC

少量で甘みを感じる「人工甘味料」

「砂糖の代替甘味料として作られた人工甘味料は、清涼飲料水やガムなどに広く使われています。砂糖よりも甘みが強く、少量で甘い味つけができるため低カロリーをキープできるのが魅力です。しかし『天然』のものに比べて『人工』の甘味料は体に悪いと思っている人は多いようです。実際はどうかと言うと……。人工甘味料が体に及ぼす影響を調べて研究によれば、アスパルテーム、エリスリトール、サッカリンなど人工甘味料はさまざまあり、その中でサッカリンは摂り続けると太りやすくなることがわかっています。これはサッカリンをエサに成長する大腸菌が腸内に存在し、その大腸菌が排出する成分が脂肪細胞の炎症を引き起こすためです。炎症が起こると脂肪細胞に対するインスリン感受性が低下し、脂肪の燃焼効率が落ちて太りやすくなるのです。また、インスリンが効きにくい状態が続くと血糖値のコントロールができず糖尿病のリスクも高まります。最新の医学的な研究では、その他の人工甘味料の健康への影響は認められていません。(現在サッカリンは人工甘味料として使われていません)」(岩崎真宏さん)

「食物繊維」が豊富な甘い物 

「食物繊維は、消化酵素によって分解されずに大腸まで届き、腸内で糖の吸収を穏やかにして食後の血糖値の上昇を抑える働きがあります。食物繊維を多く含む食品には干し芋や寒天を使ったスイーツ、果物(リンゴ、ミカン、キウイ、イチジクなど)、蒟蒻芋に含まれるコンニャクマンナンという食物繊維が入ったスイーツなどがあり、これらを常備しておけば罪悪感なく甘い物を楽しめます」(岩崎真宏さん)

干しイモ
食物繊維を多く含む干し芋がおすすめ/写真AC

甘い物を罪悪感なく食べる2つのヒント

甘い物が好きで太ってしまうのは、「食べ方」にも問題があるかもしれません。糖の吸収を抑える食べ方を知っていれば脂肪を増やす心配がなく、「食べても太りにくい」を叶えられます。意識したいのは「食べるタイミング」と「一緒に食物繊維を摂る」の2点だけ。

ヒント1<甘い物を食べるタイミング>

基礎代謝が高まる昼間がベスト

「人が生命活動を維持するために最低限必要な代謝を基礎代謝と言い、代謝量は朝・昼・晩で変化します。甘い物を食べるのに適しているのは、人が最も活動的になりエネルギーが燃焼される昼の時間帯。ランチタイムや午後の休憩時に食べると糖がエネルギーとして消費されやすく、体に溜め込む脂肪の量を抑えられます」(岩崎真宏さん)

甘い物
食べるタイミングを工夫することも大切/Adobestock

意外!太りにくいのは食後より食前?

「食事のときは最後に甘い物を食べるのが一般的です。しかし太りにくいという観点では、実は最初に甘い物を、それから料理を食べるのが理にかなっています。というのも、摂り過ぎた糖は中性脂肪として体内に蓄積されますが、最初に甘い物を食べるとエネルギーとして優先的に消費されるので脂肪が増える心配が少ないのです。また肝臓の手前には血糖値の変化を感知する門脈という血管があり、甘い物を食べて血糖値が上昇すると門脈から脳につながる神経が食欲抑制のシグナルを発信し、後に続く料理の食べ過ぎを防ぎます。空腹時に甘い物を食べると血糖値の乱高下を心配する人もいますが、食後は180mg/dlぐらいまで血糖値が上がるのは一般的であって、2時間程で通常値に戻るので神経質になりすぎなくて大丈夫。逆に食後の血糖値が200mg/dlを超える場合は、糖尿病の可能性が高いと言えるでしょう」(岩崎真宏さん)

ヒント2<糖の吸収をゆるやかにする食べ合わせ>

「糖は最終的にすべて小腸で吸収され、食べ合わせを工夫しても糖の吸収をゼロにする “魔法”はありません。ですが『食物繊維を含む甘い物を選ぶ』、『食物繊維が豊富な食品と一緒に甘い物を食べて』糖の吸収スピードをゆるやかにして太りにくくするのは可能です。食事で摂取した糖はブドウ糖に分解されて小腸で吸収され、一部はグリコーゲンとして肝臓や筋肉に、余剰分は脂肪組織にも貯蔵されます。一気にたくさんの糖を摂取すると肝臓や筋肉で処理が追いつかず、早い段階で糖が脂肪組織にも取り込まれて中性脂肪を作り始めることに。それを防ぐには糖の吸収スピードを抑える働きがある食物繊維を一緒に摂るのが有効。『食物繊維を含む甘い物』は前途した食品がおすすめです」(岩崎真宏さん)

もし甘い物を食べ過ぎてしまったら……

太りたくないと思ってもつい食べ過ぎてしまうことは誰にでもあります。過剰に摂取した糖は脂肪として蓄積され、なかったことにするのは不可能です。しかし体を動かして体脂肪を燃やしたり、その後の食事量を減らしたりしてバランスを取れば肥満を予防できます。

「体を動かすときに、何をすればどれだけエネルギーを消費できるのか分かるとダイエットを計画的に進められます。その目安となるのが、運動によるエネルギー消費量が安静時の何倍にあたるかを示す『メッツ値(Met’s)』(家事や育児などの生活活動も含む)。安静時1メッツに対して、例えば「ハタヨガ2.5メッツ」「スリヤナマスカー(太陽礼拝)3.3メッツ」「フィットネスクラブでの運動7.8メッツ」。家事や育児については、「掃除機をかける3.3メッツ」「ペットへのエサやり2.5メッツ」「座位で子どもと遊ぶ2.2メッツ」です※。次の計算式を使って消費カロリーを割り出し”溜めない体”を目指してください!」(岩崎真宏さん)

身体活動や運動による消費カロリーの計算方法

消費カロリー:メッツ×体重×運動時間×1.05

※出典:国立健康・栄養研究所が作成した『身体活動のメッツ表

ヨガ
メッツを活用するとゲーム感覚で消費を楽しめます/写真AC

甘い物の食べ過ぎで罪悪感を抱えてしまうのはストレスのもと。食べ過ぎたと感じたらヨガをしたり、少し多めに家事をこなしたりして脂肪を燃やし、ダイエット中もストレスを溜めないようにしましょう。

教えていただいたのは…岩崎真宏さん
医学博士、管理栄養士、臨床検査技師。病気の治療だけでなく健康やスポーツなど多様なライフスタイルの中で栄養の大切さから栄養学の道に進む。医学の視点から生活習慣病のメカニズム研究を行い、病院で管理栄養士として働き、食生活を改善し必要な栄養を摂ると細胞レベルで体が変わることを知り、臨床でも食事を変えると治療薬の効果が上がることを実証する。医学的根拠のある栄養学を伝え、それを実践できる土壌を作ろうと独立。運動指導者、医療スタッフ、保育士、介護士、アスリートなどを対象にヘルスケア人材の育成と雇用創出、コンテンツ開発を行う教育事業を開始し、病気になってからではなく、健康なうちから使いこなせる栄養学を発信している。2017年には一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会を設立し代表理事に就任。「活用すること」に特化した栄養の知識を習得する栄養コンシェルジュ資格の発行と、資格取得後の活動の場を提供。ライフスタイルに合った食生活の提案に留まらず、環境問題、農業の活性化、地域活性化などさまざまな社会的課題に取り組んでいる。

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text by Ai Kitabayashi

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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