【柔軟な体を作るヒント】動的・静的ストレッチの違いを知っている?「程よいストレッチ」のやり方
柔軟な体でいるために行う動的ストレッチと静的ストレッチは、ヨガのルーティンにおいて、どのように役割を果たすのでしょうか。
昔から、私たち人間は輪ゴムに例えられてきました。ストレッチをしていないと体は硬くなり、ずっと使っていない状態が続くとプチンとゴムが切れるように体を壊してしまうのです。一方、緊張感を持っていても、ストレッチをし過ぎると、緩く役に立たない輪ゴム同然になってしまうのです。すると、もはや輪ゴムというより、ヨーヨーのように感じるかもしれません。
では、程よいストレッチとはどの程度のものでしょうか? ランナーたちにとってどんな役割を果たすでしょうか? いつ行うべきでしょうか? それはあなたが思い描くストレッチのタイプによるでしょう。
静的ストレッチ vs 動的ストレッチ
ニューファンドランド・メモリアル大学(カナダにある州立大学)の人間運動学とレクレーション学の教授であるデビッド・ベームさんは、輪ゴムのたとえに関して、ストレッチはよりゴルディロックスの原理(*童話「三匹のクマ」の喩えから名付けられている。ちょうど良い程度という概念を意味する)であると説明しています。「体をもっと引き締めたいかもしれませんが、筋肉と腱を緊張させ過ぎてはいけません」と彼は言います。
静的ストレッチと動的ストレッチは、効率的に走り続けるために必要なホメオスターシス(恒常性)に身体が到達するのを助ける上で様々な役割を果たします。静的ストレッチでは、通常、関節を快適に移動できる範囲まで動かしてからホールドします。静的ストレッチのホールドは30秒またはそれ以上続ける場合があります。これは、可動域を広げ、筋肉をリラックスさせ、運動後のこわばりや痛みを防ぐために非常に効果的な方法です。ハードラーズストレッチやひざまずく腰関節屈筋ストレッチは静的と見なされます。
動的ストレッチは、ランニング中の筋肉の動きのタイプをリハーサルすることを目的とした安全でアクティブな動きです。この種のストレッチは筋肉を活性化し、筋肉を収縮させて物理的に温めます。「それもまたウォームアップであり、活動を見越して運動量を増加させることによって神経系を温め、準備します」とベームさんは言います。ウォーキングランジ、レッグ・スイング、かかとを天井へと引き上げる動作などは全て動的ストレッチです。
しかし、ストレッチとは筋肉や腱だけのことではありません。学術誌「Journal of Physical Activity and Health」に最近発表された研究によると、ストレッチは血管を物理的にストレッチすることにより、血圧を下げることができます。著者らは、高血圧の人に一般的に推奨されるウォーキングよりもストレッチの方が効果的であることを明らかにしました。
ランナーはいつストレッチすべきか?
日々のスケジュールにランニングを組み込むのが難しい場合、ウォームアップとクールダウンをカットして手抜きしたくなるかもしれません。しかし、毎回ストレッチを行わなければいけない理由をご紹介しましょう。
ランニング前のストレッチ
ウォームアップの一環としてのストレッチは、最も戸惑うところです。よくある質問:走る前にストレッチする必要はありますか?静的ストレッチを長時間行うと緊張が高まり、こわばってしまいます。これはランニングする直前に必要ではありません。「静的なポジションを1時間キープしたければ、静的ストレッチは良いでしょう。しかし、私たちはランニングをしている時、そのセット時間はずっと繰り返し筋肉を使い続けます。30秒間の静的なホールドではなく、その生理学的な動きに備えて体を準備する必要があります」とウィスコンシン大学の女性クロスカントリーチームのヘッドコーチであり、陸上競技のアシスタントコーチであるマッケンジー・ウォーテンバーガーさんは言います。
代わりに、ウォームアップ・ルーティーンの一部として動的ストレッチに焦点を当てることをお勧めします。可動域を広げることが目的です。「あなたが感じられるポイントまで適切にプッシュすることが重要です。可動域のギリギリの場所にいるような感覚に少し感じるはず。そうしたらすぐに戻しましょう」と彼女は述べます。このプロセスは3〜5回繰り返す必要があり、リピート毎に2%深くなることを目指します。「どのような動きをしているのかに応じて、その収縮または伸長が急速に繰り返され、筋肉が温まり、筋肉と腱の力が発揮されます」。
筋力強化とランニングのコーチであり、プロランナーでもあるネル・ロジャスさんは、ウォームアップで動的ストレッチをモビリティワーク(可動性のためのワーク)に組み込む必要があることを断言します。「 “筋肉をだます”ようなもので神経をリラックスさせます。筋肉が伸びることはありませんが、体は少しリラックスすることができます」と彼女は言います。
ベームさんの研究によれば、ウォームアップでの静的ストレッチは問題ありません。例えば、一部のコーチは静的な股関節のストレッチをウォームアップに組み込むことを好みます。「静的ストレッチがフルウォームアップに組み込まれている場合、パフォーマンスにわずかな影響があります。静的ストレッチは、特に爆発的な動作による筋肉や腱の損傷を減らすことができます。しかし、ストレッチはすべての原因によるケガの発生率を低下させるわけではありません」」と彼は述べます。
ウォームアップでストレッチしたい主要な筋肉は次のとおりです。
●足底屈筋
●股関節伸筋
●ハムストリングス
●内転筋群
●大腿四頭筋
ランニング後のストレッチ
ワークアウトの後に猛ダッシュで帰宅し、やらなければいけないTo doリストをこなす。誰もがこのような経験があるでしょう。しかし実際には、ランニング後のストレッチをスキップすると、体に良いどころか害があります。「静的ストレッチがクールダウンの終わりに素晴らしいということは最近の科学で証明されています。筋肉や筋膜、腱の繊維を伸ばして、ある程度の可動性を回復する絶好のチャンスです」とウォーテンバーガーさんは言います。ウォーテンバーガーさんが指導するアスリートたちは、ウォーキングドリルでクールダウンを開始し、動的ストレッチを行ったり、やめたりを繰り返します。「すべてが本当に短くて体に優しいものです」と彼女は言います。フォームをローリングし、体が完全にクールダウンするのを待って初めて、静的ストレッチに入ります。「静的ストレッチの準備がちゃんと整っていない場合、メリットよりもデメリットを与える可能性があります」とウォーテンバーガーさんは述べます。最初にフォームをローリングすると、筋肉がリラックスし、可動域が広がります。これにより、静的ストレッチに入るときのケガのリスクを減らすことができます。この種のストレッチは、可動域を広げ、柔軟性を高めます。ストレッチをしないと、関節や筋肉の可動性が大幅に低下し、特に筋肉に絶えずストレスをかけるランナーにとって、ケガのリスクが高まります。
「筋肉と関節の柔軟性が低下すると、生体力学や正常な機能が変化し、腱の緊張が高まります。例えば、大腿四頭筋がタイトな人は、膝蓋骨腱炎をより発症する可能性が高まります。理由は、タイトな筋肉が膝蓋骨の付着した腱を引っ張ることで、緊張、炎症、痛みを増大させるからです」と、元アスレチックトレーナーでDJO(整形外科およびモビリティ・ソリューションを開発する医療機器メーカー)のプロダクト・スペシャリストであるアンナ・ムノスさんは述べています。膝蓋骨腱炎を防ぐため、大腿四頭筋と周囲の筋肉を伸ばすのにワークアウトの後に必要な時間はわずか5分です。
多くのランナーがタイトな股関節とハムストリングスを持っています、とムノスさんは説明します。これらの筋肉群をストレッチし忘れると、膝の痛みにもつながる可能性があります。「膝に痛みのある患者は、大腿四頭筋、股関節屈筋、およびハムストリングスを強化し、ストレッチする運動を推奨されます」。これらの筋肉は膝蓋骨を継続的に引っ張ります。それらがタイトな場合、引っ張られ、より多くの痛みを引き起こします。痛みを防ぐために、筋肉を緩め、正しいストレッチを行いましょう。
クールダウンでストレッチしたい主要な筋肉は次のとおりです。
●大腿四頭筋
●ハムストリングス
●ITバンド(腸脛靭帯)
●ふくらはぎ
●梨状筋
●腰筋
●臀筋
●股関節屈筋/股間
ストレッチをルーティーンに取り入れれば取り入れるほど、何が効果的で何が効果的でないかを理解できるようになります。ランナー認めるこれらのストレッチを試して、始める準備を整えましょう。
教えてくれたのは……マリッサ・ローデンバーグさん
マリッサ・ローデンバーグさんは雑誌「ウーメンズ ランニング マガジン(Women's Running Magazine)」の編集者。クリエイティブ・ライティングの学士号、またサイエンス・ライティングの修士号を取得している。現在、マリッサさんは、健康、科学、自然分野の執筆に情熱を注いでいる。これまで、サイエンスマガジン、デンバーライフマガジン、シカゴトリビューン、ヒストリーマガジン、AvidLifestyleマガジンなどに寄稿している。
ヨガジャーナルアメリカ版/「What Happens When You Stretch? And What Happens When You Don’t?」
AUTHOR
ヨガジャーナルアメリカ版
全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。
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