【医師が解説】研究結果が示唆!新型コロナが重症化する人に不足していた「ビタミンD」の正体とは?
体の免疫反応を正常に促す栄養素として注目を集めるビタミンD。新型コロナウィルス感染症予防のための緊急事態宣言が延長された今、健康な体を支えるビタミンD不足が深刻化していると言われます。そこで、機能性医学などに詳しい医師、斎藤糧三先生に、ビタミンDの働きや摂取法について教えていただきました。
日本人の8割が不足?!新型コロナが重症化する人に不足していた「ビタミンD」の働きとは?
ビタミンDは、別名「日光ホルモン」とも呼ばれ、主に太陽の光を浴びることにより、皮膚で作られます。本来は、日光浴などで充足される栄養素ですが、大気汚染などの影響で現代人は日光を避ける傾向があり、ビタミンDが不足しがちに。
「特に日本人は、紫外線をガードする意識が高いため、ビタミンD不足に陥りやすく、女性の8割以上、男性の6割以上が不足していると言われています。加えて、コロナ禍でステイホームが長引き、日光を浴びる機会が少なくなったことで紫外線不足が加速。ビタミンD欠乏に陥り、不調を訴える人が増えています。」(斎藤先生)
ビタミンDが不足すると、具体的にどんな不調がおこるのでしょう?
「ビタミンDの働きと共に、解説しますね。まず、ビタミンDには、腸からのカルシウム吸収をサポートする働きがあります。カルシウムは、もともと吸収率の悪い栄養素で、ビタミンDの働きによって腸からの吸収率が3〜4倍にまで上がり、骨を強くします。骨が成長する幼少期に、ビタミンDが不足すると筋肉低下や低身長を招く“くる病”の原因になったり、成人では骨が弱くなる“骨軟化症”や“骨粗鬆症”のリスクが高まります。
近年の研究では、体内で作られる抗生物質=抗菌ペプチドの分泌を調節する働きがあることがわかり、インフルエンザや新型コロナウィルス(※)、結核などの感染症の予防や重篤化の回避に役立つことでも注目を集めています。また、過剰な免疫反応を抑制し、必要な免疫反応を促す、免疫機能の調整作用もあり、花粉症やぜんそくなどのアレルギー、自己免疫疾患の予防も期待できます。そのほか、発ガンの抑制、高血圧の抑制、糖尿病の予防、心不全や脳卒中予防などにも、ビタミンDが関係していることがわかってきていて、ビタミンDの不足は、全身のさまざまな不具合につながりやすくなると言えます。」(斎藤先生)
下のグラフの解説としては、
*イランでの新型コロナ患者のビタミンD血中濃度の分布をみると、1日2000IUのビタミンD摂取で目指せる30ng/dl(充足域)をクリアすることで、死亡を含め重篤化リスクを軽減できる。40ng/dlを超えることで死亡率が激減し、4000IU摂取の目安の60ng/dl以上であれば50歳以下では罹患者が皆無であった。
感染症予防にも効果的な「ビタミンD」、どのようにどれくらい摂取したらいいの?
健康な体を維持するために推奨される、ビタミンDの1日の摂取量の目安は2000〜4000IU。これを摂取するには「日光浴・食事・サプリメント」の3つの方法があります。
「日光浴で作られるビタミンDと食事からとるビタミンDは、どちらも体の中で同じ効果を発揮します。摂取法としては、1日に浴びる紫外線量に応じて食事から摂る量を調整するのがベター。実際に、推奨する摂取量をとるには、日光浴の場合、真夏であれば太陽が高く昇っている日中に1時間ほど太陽の光を浴びるのが効果的。ただし、ビタミンD の生成には紫外線B波が必要となるため、日焼け止め剤を塗ると生成ができなくなります。また、紫外線B波はガラスを通ることができないため、どんなに日当たりがよくても、窓際での日光浴はビタミンDの生成につながりません。紫外線量が少ない秋から冬、春先までは、日光浴をしてビタミンDを作ることが難しいため、タンニングマシンなどを利用するのも、ひとつの方法ですね。日焼け止めクリームも、ビタミンDの生成を妨げないものもあるので意識的に選ぶといいでしょう。」(斎藤先生)
食事では、紅鮭やいわし、まぐろなどの魚類や、きくらげなどのきのこ類にビタミンDが多く含まれています。ただし、推奨量の4000IUを摂取するには、紅鮭やいわし1日に約300g、きくらげは約1kgを食べる必要があり、かなりのボリューム感。
食事からの摂取が難しい場合は、サプリメントを利用するのが、効率的かつ、現実的と言えそうです。
「サプリメントを選ぶときは、ビタミンD補充を目的としたもので、1カプセルあたり1000IU(25ug)のものを選びましょう。また、GMP基準の品質管理が行われているものを選ぶことも、健康維持につなげるポイントです。」(斎藤先生)
ビタミンDが生成できる日焼け止めクリーム
紫外線から肌を守りつつ、ビタミンDの生成を妨げない画期的な日焼け止めクリーム。
ビタミンDを効率よく摂取できるサプリメント
1カプセルにビタミンDを25 µg(1000IU)配合した高単位ビタミンDサプリメント(左)とビタミンD摂取時に欠乏に注意が必要なビタミンAをあわせて摂取できるサプリメント(右)
知っておこう!ビタミンDを摂ると「ビタミンA」が欠乏する?
ビタミンDを摂るときには、ビタミンAも一緒に摂ることが大切だそう。その理由とは?
「ビタミンDを摂取すると、ビタミンAが相対的に欠乏するケースがあります。なぜかというと、ビタミンDとビタミンAのシグナルを受け取る細胞の核にある受け皿が共通なため、ビタミンDを多く摂ると、摂取量が多い栄養素が優先され、ビタミンA欠乏の症状がでる場合があります。ビタミンAが欠乏すると、暗いところで物が見えにくくなる夜盲症やドライアイを招いたり、ニキビの原因にも。
また、もともとビタミンAが不足気味な人が、ビタミンDを摂り始めると、こうした症状が強くなる場合があるため、ビタミンDを摂取するときは、ビタミンAを一緒に摂取することを心がけましょう。ビタミンAはレバーに多く含まれていますが、食事からとりにくい場合は、やはりサプリメントを上手に活用するのが効果的です。」(斎藤先生)
教えてくれたのは…斎藤糧三先生
日本機能性医学研究所所長。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年、日本機能性医学研究所を設立、副理事長に。2017年、スーパーフードとしての牧草牛の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学舘)など。花粉症とビタミンD欠乏を関係性にいち早く注目し、ビタミンDの重要性を発信していている。ガッテン!(NHK)、林先生の初耳学!(TBS)など、テレビ出演多数。日本機能性医学研究所 www.ifmj.jp
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