脳を使いこなすとパフォーマンスが上がる?【格闘技ドクターが教える】運動が上達する脳の使い方

 脳を使いこなすとパフォーマンスが上がる?【格闘技ドクターが教える】運動が上達する脳の使い方
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「運動イメージ」を変えると、「運動の質」が変化する!

ここで脳と運動の関係を知る実験を行ってみましょう。肘関節を90度に曲げて手のひらを天井、手の甲を床に向けて準備してください。何ものっていない手のひらにミカンがのった、とイメージしてみましょう。次に肘の角度を変えないように注意して、ミカンがリンゴに、リンゴがメロンに、メロンがスイカに変わっていく様子をイメージしてみてください。そのとき筋肉の状態をどうなっていますか。果物が大きく、重たくなるほど、実際には持っていないのに「それを持って支えている」と想像すると上腕二頭筋や肩の前側の筋肉(三角筋)が収縮するのを感じられると思います。このように実際に運動を行わなくても、それをイメージするだけで筋肉の収縮が起きうることがわかります。

では、「腕や肩の筋肉を収縮させてメロンを支える」という運動はどのように生じたのでしょうか。意図的な運動は、「脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)で想起された運動イメージ」からスタートすることがわかっています。脳の前側には前頭葉と呼ばれる部位があり、前頭葉の一番前には記憶、思考、判断、行動、応用、感情のコントロールなどを司る前頭前野があります。前頭前野では身体の外部・内部、そして脳全体から集めたさまざまな情報をもとに「今からこんな運動をする」という運動イメージをつくります。その運動イメージの情報は前頭前野の後ろにある運動前野、補足運動野、帯状皮質運動野などから構成される高次運動野へと移動し、さらに一次運動野に到達。その過程で大脳基底核や小脳によって「運動の最適化」がなされます。

そして最終的な「運動指令」が一次運動野から脊髄を通って伝達され、必要な筋肉群が収縮して意図した運動が行われる。これが運動が生じるシステムだと考えられています。

脳 運動 イメージ
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意図的な運動は、前頭前野で想起される「運動イメージ」に起因することはわかりました。しかし、運動イメージは過去にリンゴやメロン、スイカ等を持ったことがあり「だいたいこのぐらい重さだろう」という記憶のストックがないと想起するのは難しいはずです。つまり適切な運動イメージを想起するには、記憶のストックが不可欠なのです。

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Text by Ai Kitabayashi



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