再発の不安、治療に伴う不調…その時ヨガに何ができるか|がん患者にヨガを指導する中で気づいたこと
病院は治療を受けるだけの場所ではない
―補完代替療法としてのヨガが、日本の医療現場で行われる機会がもっと増えてほしいですね。鈴木さんは医療とヨガの未来をどのように見ていますか。
「補完代替療法としてのヨガが、日本の医療現場で行われる機会がもっと増えてほしいのは同感です。ただ、私の中ではクリアしなければいけない課題があると感じています。例えば、がん患者さん限定のクラスを作る意義は何だろうと考えたとき、インストラクターはヨガを教えるだけでなく、患者さん同士が喜怒哀楽をシェアし支え合う『共有体験』の場を作ることがとても重要ですが、これはヨガクラスでも同様です。がん特有の悩みを共有できるクラス作りを心がけなければなりません。そして、継続してもらうための動機づけも必要。最近は、ポーズや呼吸法が体と心に効く理由を医学的な視点から説明したうえでクラスを行い、納得して続けてもらうための『患者教育』にも力を入れています。あとは、YouTubeでのヨガ動画の配信など患者さんが利用しやすい受講スタイルの構築や、クラス数を増やすためにはがんサバイバーに対応できるヨガインストラクターの養成も急務ではないでしょうか。医療資格のないヨガインストラクターが院内で指導する場合、医療者のつきそいが必要になるため人員確保が難しく、医療者の中でヨガ資格を取る人が出てくると患者さんにヨガを届ける機会が増えると思います。
あとは、病院側の意識改革も必要だと感じています。地域における病院の役割が細分化されてきている一方で、病気と健康の線引きは曖昧になってきており、病院はもはや病気を治すだけが仕事ではありません。患者さんは治療の過程で様々な困り事に直面するわけですが、これからは治療をスムーズに進めるための包括的なサポートを行うのも病院の役割なのでは。こうした認識が浸透すると、医療現場にヨガが介入する機会が増えていくと思います」
プロフィール:鈴木陽子さん
看護師、メディカルヨガインストラクター。聖路加国際病院に勤務しながら患者へのヨガ指導や、一般公開講座でマインドフルネス呼吸法を指導。都内ヨガスタジオでもメディカルヨガクラスを担当している。アンダーザライトにてオンラインクラスも開催。また、「オーガニックライフ東京」や「YOGAWOMAN」などのヨガイベントにも出演。著書に『聖路加国際病院のナースが教えるメディカルヨガ』(扶桑社刊)がある。インスタグラム:@medyoga.co
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