感情のジェットコースターと向き合うには?不妊治療によって受ける心のダメージ【不妊治療の現実】
妊娠や不妊について学んだ記憶はありますか? この連載では、不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ、また妊活ヨガセラピストとして活動するわたなべまさよさんが、妊娠を望んでいる人が知っておきたいこと、また不妊治療の現状を連載形式で綴っていきます。いつかお母さんになりたい人はきちんと知ってこれからのライフステージをデザインしてゆきましょう。
不妊治療で、心の負担(ストレス)になりやすい要因とは?
不妊治療は心の負担が大きく、感情のジェットコースターと例えられることがあります。妊娠しているかもしれない期待と生理がきたときの落ち込み。その感情の波に翻弄され続けると気持ちのコントロールが難しくなってきます。頑張れば頑張っただけ結果が伴う経験を積んできた人にとって、不妊治療はどんなに努力しても結果が比例しないはじめての試練と感じる人もいます。
不妊を体験する人は同じような悩みを抱えていますが、どんなことが心の負担(ストレス)となるか見ていきましょう。
医師からのことば
妊娠できる見込みが少ないことを告げられたり、どうすることもできない年齢について通院の度に言われたり。不妊治療は妊娠しない原因を探るため、医師から伝えられることはマイナスに聞こえてしまいます。だんだん自分の体に対して自信がなくなり、女性としての自尊心が低くなってしまうことがあります。
お金
治療がいつまで続くのか分からない。治療費が高額なため貯金ができず、子どもができてからのことも不安に感じます。
仕事との両立
治療スケジュールは体が最優先。自分の意思ではコントロールできないため急な通院で休むことが増え、職場の人間関係にも影響が出てきます。仕事との両立が難しくなると不妊治療を優先するために今までのキャリアを捨てた方がいいのか悩みます。
過去の後悔
もっと早く結婚すればよかった、避妊しなければよかったと過去の行動を悔やむ人がいます。
将来への不安
先が見えない。今が楽しめないため子どもがいない人生に幸せを見いだせないと感じる人もいます。
パートナーとの関係
子どもを望む気持ちは同じでも、パートナーが不妊治療に否定的だったり、逆に積極的過ぎたり、丸投げだったり。考えをまとめるのはエネルギーをつかいます。また不妊治療はほとんどの負担は女性側。うまくいかないときに愚痴をこぼすと、じゃあこうすればいいんじゃないか?と夫が提案したときに妻は抑えていた気持ちが爆発します。話を聞いてただ寄り添ってほしかった妻と、悩む妻を何とかしてあげたい夫の気持ちはすれ違い、ふたりの子どもの問題のはずが夫婦関係の悪化に発展するケースもあります。
友人との関係
妊娠・出産の報告で気持ちが揺さぶられます。取り残される不安や嫉妬、憤りなど黒い感情を抱く自分に対して悲しくなる人は多いのです。
両親・兄弟・姉妹との関係
孫を抱かせてあげられない申し訳ない気持ち。両親には心配をかけたくないと打ち明けられず悩む人もいます。逆に孫が見たいと言われたり、精一杯努力しているのにアドバイスをされると傷つきます。増えていく甥っ子、姪っ子。他人以上に身内からのプレッシャーはつらいと感じる傾向があります。
自分自身
理想の自分に近づけない苛立ち。「子どもを産んで一人前」「子どもを産み育てることが女の幸せ」という刷り込みが自分自身を追い込み、大きな無力感は自己肯定感を低下させてしまいます。悪化すると妊娠以外の面に注意を向けられなくなったり、前向きな気分で過ごせなくなったり、ひどくなるとうつ状態に陥ってしまいます。
妊活・不妊治療中の心とのつきあい方を知っておきましょう
黒い感情やつらいという思いは自然な感情で、心に蓋をし前向きになろうとするとストレスは蓄積してしまいます。趣味や好きなことをして過ごす時間は心に栄養を与えます。また、ひとりで抱えずに気持ちを打ち明けることも大切ですが、相手を選ぶ必要があります。よかれと思っているのかもしれませんが、自分の価値観を押し付けてくる人や、やめたらできるらしいよ、などと言う人には注意が必要です。また相手の反応を気にして本音を言えず話の聞き役になってしまうと、だんだんひとりで抱えるようになってしまいます。
そんなとき「カウンセリングを受ける」という方法があります。不妊のカウンセリングにもいくつか種類ありますので、状況によって選択できるといいですね。
- 不妊カウンセリング:医学的な情報提供をして意思決定を支援する
- 不妊ピアカウンセリング:不妊の経験がある人が苦痛や悩みを聞いて心理的負担を和らげる
- 生殖心理カウンセラーによるカウンセリング:心のケアをする臨床心理士の資格を持ち、不妊のつらさを理解したカウンセラーによるカウンセリング
全国には不妊専門相談センターが設けられていたり、「NPO法人Fine」など、当事者団体による相談もあります。小さなお悩みでも気軽に話してみましょう。
不妊治療は短い時間の中で次々に選択を迫られるため、自分自身と向き合う時間を取るのが難しい時期。私らしくいられるため、私を大切にするため、また体の状態にとっても心のケアはとても大切なのです。
ライター/わたなべまさよ
妊活ヨガセラピスト(不妊ピアカウンセラー・ヨガ講師)不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ。妊活コンシェルジュファミワンアドバイザー。長期の不妊治療で心と体のバランスを崩したところ、毎日実践したヨガで回復。その後妊活をサポートする側にシフトし、自治体、病院などで講演やヨガとカウンセリングを併用した妊活ヨガセラピーを行っている。「おやすみ前のリラックスヨガ」22時から20分間オンライン(Zoom)で土曜日をのぞく毎日開催。LINE登録で1ヶ月体験無料。詳しくはホームページまで。
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