不妊治療、5割が「転院」を経験|5140人に聞く不妊・不育治療の病院選びのポイントは?
晩婚化や出産の高齢化が進む昨今。日本で不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)カップルは、5.5 組に1組といわれています。この記事では、不妊治療経験者5140人のアンケート結果から、病院選びで重視した点や実際に経験したトラブルなどを紹介します。「いつか子どもが欲しい」と考えている人は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
不妊治療は「病院選び」からスタート。迷ったことがある人が大多数!
不妊治療を行う上で、まず考えなければならないのが「病院選び」。「NPO法人Fine(ファイン)」が、不妊治療・不育治療をこれから受ける・受けたことのある男女5140人を対象に「病院選びのポイント」についてたずねたアンケートによると、77%の人が「病院選びに迷ったことがある」ということがわかりました。
不妊治療や不育治療の病院を選ぶうえで、 迷った経験はありますか?
・すごくある…45%
・少しある…32%
・どちらでもない…5%
・あまりない…13%
・全く無い…5%
自分に合った病院を選ぶためには、事前に下調べを行うことが必要です。
2つの設問「選ぶ上で事前に知りたい情報」「選ぶ際に重視した点」の回答は、前者が「実際の患者の声・評判(口コミ)」(80%)、「治療費用」(74%)、「治療成績」(72%)であるのに対し、後者は「通いやすい場所だから」(70%)、次に「評判(口コミ)がよいから」(49%)と続きました。
このことから、当事者は「実際の患者の声・評判(口コミ)」に注目していること、また「治療費用」や「治療成績」を重視しつつも「通いやすい立地」が大きな決定要素になっていることがわかります。
病院を選ぶ上で、どのような情報が知りたいですか?
・実際の患者の声・評判(口コミ)…80%
・治療費用…74%
・治療成績…72%
・診療日・診療時間…72%
・治療内容やその方法…69%
・治療方針…67%
・交通の便…67%
・受けられる検査項目…52%
・病院施設の雰囲気…47%
・混雑具合…46%
・決済手段…37%
・Webやアプリで予約ができるか…35%
・医療機関の審査を受けているか…34%
・プライバシーへの配慮があるか…33%
・具体的な通院スケジュール例…31%
・医師や病院の知名度…28%
・医師やスタッフのプロフィール…24%
・子どもを連れていけるかどうか…16%
・担当医が固定かどうか…15%
・Webやアプリで問い合わせができるか…14%
・担当医の指名制度の有無…11%
病院を選ぶ際、重視したことは何ですか?
・通いやすい場所だから…70%
・評判(口コミ)がよいから…49%
・治療実績が良いから…38%
・通いやすい診療時間だから…33%
・治療方針が自分にあっていそうだから…27%
・医師が信頼できそうだから…27%
・病院の雰囲気がよさそうだから…26%
・知名度…21%
・紹介されたから…18%
・Webやアプリで予約ができるから…14%
・男性不妊も扱っているから…14%
・治療費用が適切だから…11%
・スタッフが親切そうだから…10%
・決済手段が便利だったから…10%
・プライバシーに配慮がありそうだから…10%
・産科もあるから…8%
・待ち時間が短いから…6%
・不育症も扱っているから…6%
・担当医が固定だから…5%
・治療費用が安いから…4%
・Webやアプリで問い合わせができるから…3%
・担当医を指名できるから…2%
転院を選択した人は半数以上…その理由は?
事前リサーチを経て通い始めたものの、実は転院した経験のある人は53%。検討中・検討したことはあるを含むと65%にのぼります。また、転院した経験のある人のうち、約7割(69%)は2回以上の転院経験があることがわかりました。
転院の理由は、回答者のコメントより、ステップアップ(次の治療に進むこと)や現在の病院ではできない治療を行なうためと考えられます。
これまでに転院したことはありますか?
・ある…53%
・ない…35%
・検討したことはある…8%
・検討中…4%
これまでに転院した回数は?
・1回…31%
・2回…42%
・3回…18%
・4回…6%
・5回以上…3%
転院理由にまつわるコメント
「治療開始が40歳代近かったので、最初から不妊治療専門の病院にかかれば良かった」
「前の病院ではできない専門の検査と治療を受けるため」
お金、時間、労力…転院によって生じるリスクとは
転院することで状況が好転する人もいれば、その逆も然り。転院によりデメリットを感じた人は32%、感じなかった人は68%と、約3割の人は不利益を被っていると感じたようです。
具体的には、多い順から「高額になった医療費」(54%)、「通院距離の長さ」(51%)、「検査の重複」(46%)といった回答が見られました。
・高額になった医療費…54%
・通院距離の長さ…51%
・検査の重複…46%
・待ち時間の長さ…36%
最も多かった「高額になった医療費」について、転院による「治療費の総額」はどのくらい差がでるのでしょうか。
転院したことがない場合、半数(49%)が「50万円未満」と答えたのに対して、転院したことがある場合は「100万円以上」が約6割を占めていました。
これまでに支払った治療費の総額は?
転院したことがない場合
・50万円未満…49%
・50〜100万円未満…15%
・100〜200万円未満…21%
・200〜300万円未満…7%
・300万円以上…5%
・わからない…3%転院したことがある場合
・50万円未満…24%
・50〜100万円未満…15%
・100〜200万円未満…27%
・200〜300万円未満…15%
・300万円以上…17%
・わからない…2%
上記以外にも、治療にかけた金銭・時間・労力といったリソース面でのロス、精神的ストレス、そして病院とのトラブルなど不利益の内容は多岐に渡るようです。なかには、卵子の移送のハードルが高いといった具体的な治療内容に言及するものも…。
転院したことで不利益を感じたことのある方のコメント
金銭、時間のロス
・結局また同じ検査を受けることになったのがお金のロスと感じた。
・自分の生理周期と紹介状を用意する時期が合わなかったので1周期治療開始がズレた。
・紹介先の大学病院の初診が2カ月待ちだった。
・治療期間と年齢の無駄遣い。
・これまでやって来た治療にかかった時間と労力。精神面での負担
・精神的不安。
・(転院先で)死産のことを一から説明しなくてはいけなくてつらかった。病院とのトラブル
・一番困ったのは医師によって意見が違うこと。
・前院と方針が違うと治療履歴を参考にしてもらえない。
・今までの治療をこと細かに説明しても、違った解釈で捉えられることもあるので難しかった。
・治療の経緯、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)やアレルギーなどの引き継ぎ不足。
・紹介状持参でも、毎度これまでの経緯の説明が必要。
・自分では今までの治療内容を伝えきれない。
・紹介状をもらえなかったこと。
・転院したい旨を相談した際にも暴言とぞんざいな態度を取られ、紹介状も拒否され精神的に負担だった。卵子移送にまつわるトラブル
・卵子の移送のハードルの高さ。
・凍結受精卵が(転院先に)移動できなかった。
・若いときの採卵した卵は、捨てることになった。
まとめ
いかがでしたか? 不妊治療を考えている人はもちろん、「いつか子どもが欲しい」と考えている人は他人事にできない問題ですね。
不妊治療には時間とお金が必要ですが、そのリソースは限られています。妊娠の可能性を高めるべく病院を変えることは1つの手段ですが、具体的なリスクを知らずに転院を繰り返すと、治療期間が長引き、治療費の増加につながる可能性も考えられます。
大切なのは、どのようなリスクがあるかを事前に把握しておくこと。リスクを100%回避するのは難しくても、可能性があるかを知っておくことで、事前に備えることができるでしょう。
日本で体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)によって生まれた子どもは、2017年では出生児全体の約16.7人に1人にのぼり、累積では約60万人に達しました。納得のいく治療を行えるように、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
参考:「どうする?教えて!病院選びのポイントアンケート2020」
調査期間:2020年4月27日~2020年7月31日
調査方法:外部調査ASPを使用したWEBアンケート。自由回答を含む全38問
対象者:不妊治療・不育治療をこれから受ける・受けたことのある男女
回答数:5,140
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。
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