黒人ブロガーミア・ケインさんが語る「ウェルネスを一部の特権階級のものにしないために」

黒人ブロガーミア・ケインさんが語る「ウェルネスを一部の特権階級のものにしないために」
Courtesy of Mia Caine

“ヘルスリート”(ヘルス&アスリートの造語)ブロガー、ヨガティーチャー、ブランド・ストラテジストとして活躍する彼女が、SNS上でのパフォーマンスや注目を集めることを目的とした表面的なアライシップ(※)や実生活のなかで変化を効果的に起こす方法について語ってくれました。※アライシップ…当事者ではない人が、社会的マイノリティを理解し支援する考えを持つこと

広告

ミア・ケインさんは、誠実さ、一体感、セルフケアなど、彼女が信じる価値観を表現するブランドを立ち上げてきたウェルネスブロガーです。“ザ・ヘルスリート”として周りからは知られ、ケインさんの健康とウェルネスに対する情熱は、かつてスポーツで最もタフなレースの一つ、400m競争の注目アスリートとしての経験からもインスピレーションを受けています。

転載許可:ミア・ケインさん
Courtesy of Mia Caine

ケインさんは5歳から若者時代のほとんどをノースカロライナ州で過ごし、トレーニングと試合に明け暮れる日々を送っていました。彼女は当時いつも、皆が似たような生活を送る小さな町よりももっと多くの人生が世の中にはあると想像し、ニューヨークへ移り住むことを夢見ていました。彼女は全額返還免除の奨学金を受けてコロンビア大学に入学が認められ、当時、彼女の学校でただ一人、アイビーリーグの大学に通うことになったと言います。

大学2年目の夏、ケインさんはナイジェリアを訪れ、家族の出身地であるリベリアチームのメンバーとしてオリンピック代表最終選考会に参加しました。しかし、彼女が属する女子リレー 4x400mチームは10分の1秒差でチャンスを逃しました。16年間に及ぶランニングと試合の日々の後、この経験がターニングポイントとなり、何か別のことに挑戦する時が訪れたのです。それまでコーチから常に指示を受けて動く人生を送ってきた彼女でしたが、ふとケインさんは他の人たちは皆何のためにフィットネスをしているのか不思議に思いました。彼女はスポーツジムのClassPass(クラスパス)に入会し、オープンマインドのジュニアイヤー(2年生)に加わり、彼女はピラティスから自転車、ヨガに至るまでこれまで経験してきたエクササイズにはなかったホリスティックなアプローチだと感じる全てのエクササイズを試しました。

政治学とサスティナブル・ディベロップメント(持続可能な開発)の学位を取得した後、ケインさんはマンハッタンのいくつかのエージェントでB to B戦略担当者として勤務した後、自分自身のために働き始めました。 そして彼女はヨガプラクティスを自分の健康とウェルネスブログを始めたいという想いから開始し、大学時代に学んできたことが今日自分の仕事に影響を与えていることに気がつきました。ケインさんはニューヨークシティとマイアミの二ヶ所で生活をし、サスティナブルは素材を使い、自らデザインを手がけるコンフリクトフリーでミニマリストなジュエリーライン、Welthy(ウェルシー)を立ち上げました。

新型コロナウィルスのパンデミックの最中、Welthyは利益の100%を購入者が希望するチャリティ先に寄付しています。「私は地球を持続可能な方向へと前進させるため、自分の役割を果たしています」とケインは述べています。

ヨガジャーナルは、ヘルスリートの哲学、また包括的な(あらゆる層の人が実践できる)ウェルネス、またSNSにおける注目を集めることを目的としたうわべだけのアライシップの問題や幻想についてもっと知るため、ケインさんに意見を伺いました。

この会話はわかりやすくすることを目的に、編集および要約してお届けします。

YJ(ヨガジャーナル):一部の人たちのためのものではない「あらゆる層の人が実践できる」ウェルネス、をどのように理解されていますか?

ミア・ケイン:ウェルネスとは一つの側面だけを見るべきではありません。日々私が健康で元気でいるためにしていることは私自身で選択して行っています。最善を尽くすために行っていることは人それぞれ違います。購入する必要があると思うものによって、ウェルネスに投じるお金も異なります。例えば200ドルの商品を購入する人もいれば、20ドルのグリーンジュースを買う人もいるでしょう。ウェルネスは、特権階級の人と健康にお金を投資する余裕のある一定以上の所得がある層が中心です。

しかしながら、ウェルネスは、毎日の生活の中の瞑想のような小さな習慣からも実行可能で、その小さな習慣が人生に影響を与え得ることさえもあります。私は毎晩日記を書いていますが、それは私のゴール設定に大変役立っており、モチベーションを保つための助けとなっています。次から次へ商品を購入するよりも、健康でいられる方法はこの世の中にたくさんあります。私がブログを書き始めたとき、それなりのアスリートウェアを着て行く必要があるお洒落なフィットネスジムに行かなければいけないようなプレッシャーを感じていました。しかし、それに掛かる金額を考慮すると理にかなわないのです。金銭的に健全でいられることは健康的な暮らしを送る上で重要なことのひとつです。健康で元気な見た目のためにお金を全て費やす必要などありません。真のウェルネスに値札など必要ありませんから。

お仕事の一つとして、ウェルネスが一部の人たちのものとなっている問題の改善に取り組んでいらっしゃいますか?

ウェルネス業界は実際のところ、それほど包括的ではないことは認識しています。ウェルネスブランドと企業は、流行りのバズワードもしくはBIPOC(黒人、先住民、有色人種の頭文字をとった言葉)画像を使用して包括的なイメージをアピールしようとしても無駄だということを理解しなければなりません。多くの読者はよくわかっていて、表面的なアライシップを見抜くことができます。真の包括性というのは、固定観念を打ち破り、マイノリティの中にすでに存在している声を広め、それら多くの同じ意見を持つ人々の活動も同等に評価し、人道問題に声を上げることを恐れないブランドを育み、職場内や消費者の間で多くの人がそれらの価値を理解した上でアライが実現できるのです。これら(またそれ以上)を行うことによって、包括性は会話にとどまらず、実生活の中でも育まれるのです。ブログを書き、日々多くのブランドから問い合わせを頂く身として、常に実情をよく調べるように努めてきました。お問い合わせしてくださるパートナーシップのお話を全て受けられたら素晴らしいとはわかっています。しかし、自分が目指す包括的メッセージとは合わないブランドに対してはっきりと「NO」を伝えるという私の読者に対するメッサージは揺るぎないものです。また、ごく一部の人にとってのみ現実的な価格帯の製品を作っている会社とも提携しません。そういった高額な商品をあなたに必要だから、とオーディエンスに売りつけるのは酷なことです。

Atman Studios
Atman Studios

この不安と混乱の時期に、自らを安定させ、やる気を保つために、どのようなプラクティスを行ってきましたか?

スローダウンしても良いのです。緊迫感が常にあったとしても、全ての物ごとが常に最高度に重要なわけではありません。時間はあくまで構成要素であり、今日すべてを完了することができなくても問題はありません。一度に全てのことをしようと思う代わりに、私はスケジュールを立て、一度に一つのことに集中できるようにしています。それから、ほぼ毎日、呼吸する時間を作り、瞑想もしています。しかし、自分自身に毎日必ずしなければいけないというプレッシャーはかけません。従って、1日であろうとも数日であろうともスキップしても良いのです。とはいえ、瞑想は重要なことの一つです。朝起きて、波長を整え、自分の呼吸にフォーカスし、また今日も新たな1日を迎え、生きていることをただ祝うのです。5〜10分間の瞑想の後、手帳を開き、自分が感謝している3つのこと、目標を達成するために今日できる3つのこと、誰かの一日をもっとよくできる方法を書き綴ります。すると感謝すべきことがたくさんあること、感謝の心を持ちながら、目標を達成するために仕事が続けられていることを認識し、それによってポジティブなマインドセットを持ち続けることができるのです。

今日必要とされている人種差別防止の活動において、インナーワークは必要不可欠だとお考えですか?

はい、間違いなく必要ですね。たくさんのことが起こってニュースで報道されていますし、毎日のように人がなくなっています。寄付、請願への署名、自分のSNS上での情報発信、人との会話など自分ができること全てを行いながら、心を沈める必要があります。これらの事件は常に起こり続けているため、感情的にならないのは難しいです。黒人女性として、不利なこともありましたが、同時に恩恵も受けました。抱える問題に背を向け、私にはお手上げだ、と言うだけで物事は済むでしょうか?済むかもしれません。でも私はそうしません。私はそれができない人たちがたくさん存在することもわかっています。だからこそ、その人たちのためにも私は立ち上がらなければいけないのです。この活動をサポートし、彼らの声を広げるためにできることは何でもします。私が今暮らしているようにより多くの人々が生活をしっかり送れるように。そして日々恐れや不安を抱えながら暮らすことの内容に。2019年8月に警察によって窒息死させられたイライジャ・マクレーンさんの話を知りました。この事件のように、よくある一般的な事件のように扱われ、報道もほとんどされない事件があまりにもたくさん起こっています。私はそれにただ苛立ちを覚えます。アイビーリーグの教育を受け、人生における多くの素晴らしい経験を踏み、ウェルネス業界で起業家として働いていても、黒人ゆえの問題を抱えています。ある一部で起こっている問題ではなく、どこでも起こり得るのです。

現在、多くの人が無意識に悲しみ、不確実さ、怒り、フラストレーション、哀しみをあまりに多く抱えています。自分の感情に苦しんでいる人たちに何かアドバイスはありますか?

原因を改善し、正義と平等のために戦い続けるためには、できるだけ存在を示していくことが重要ではありますが、自分自身を労っても構いません。自分のコップが空っぽでは誰も助けることはできませんし、その場合、自らを労わり、癒すことに時間を割く必要があります。また、抗議や寄付だけでなく、周りの人々との会話を持つことも重要です。私は周りの皆に警察による暴力や組織的な圧力など、黒人に対する行き過ぎた行為だけでなく、白人の優遇についても話しています。一部の人には難しい議題であり、優遇というコンセプトが不快なことも理解しています。しかし、優遇は大小様々な形で現れます。白人の優遇について理解するためには、例えば、あなたが白人で優遇によって救われている状況、もしくはそれによって他のだれかに辛い思いをさせている状況、そういった様々な観点から考え、本当の意味で理解する必要があります。人々が自分の人生を見つめ、白人の優遇を経験する瞬間を理解しようと努めれば、将来的に自分の身にそれが降りかかった時、ああ、実際に間違ったことがここで起こっているわ、と理解しやすいでしょう。その時こそ、あなたが声を上げるときです。そして奉仕すべき時であり、不正に立ち向かうべき時です。SNS上、同じような考えを持ったフォロワーたちとは既に結束はしているので、SNSにただ何かを投稿することは、表面的なアライシップでしかありません。道を歩いている時も、机に向かって仕事をしている時も、スーパーに向かっている時も、本当に重要なのは目の前に起こっているその現実の瞬間とそれに対して自分がどう応えるかです。あなたが変化を起こすことができるのはSNSの中だけではありません。

教えてくれたのは…アンドレア・ライスさん
アンドレア・ライスさんは、ヘルス、ウェルネス、ライフスタイル分野のライターおよび編集者。これまで、Yoga Journal、New York Yoga + Lifeなどの媒体に寄稿している。また、新聞「ニューヨーク・タイムズ」および「インディ・ウィーク」のジャーナリストとして勤務した経験を持つ。ニューヨーク州ニューヨーク市で200時間のトレーニングを修了し、著名なヨガティーチャーであるエレナ・ブロワーとアレクサンドリア・クロウの元、さらにヨガを学び、10年の経験を持つヨガティーチャーとしても活躍している。

ヨガジャーナルアメリカ版/「Blogger Mia Caine On Conscious, Inclusive Wellness

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

広告

By ANDREA RICE
Translated by Hanae Yamaguchi

RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

転載許可:ミア・ケインさん
Atman Studios