医療従事者たちに今まで以上にヨガが必要な理由

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医療従事者たちに今まで以上にヨガが必要な理由

ストレス緩和のために、今まさにアーサナ、瞑想、呼吸法が必要とされている。

肥満専門外科医で、スタンフォード大の研究員を務めるアルガバン・サレス医師は、救急隊員や看護師、医師などの人命救助にあたる人々が日々直面しているストレスについて知り尽くしていた。だが今回の新型コロナウィルスの世界的流行下で彼らが晒されているストレスは、彼女にとっても計り知れないという。

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、医療提供者たちは誰が治療を受けて誰が受けないかという人生を左右する大きな決断を迫られている。いま彼らは普段以上の長時間労働を強いられ、中には賃金が減る者もいる。そして人命救助のために、自分や家族の命を危険に晒している。

テキサス大学オースティン校の心理学部教授、アーサー・マークマン教授はBBCに対し、次のように述べている。「ほとんどの医療従事者たちは、トリアージ(重症度・緊急度判定)の実務経験がないまま、機器不足のために相当な数の生死を分ける決断を迫られています。その結果、彼らが道徳的損傷を負ってしまう機会が必然的に増えています」

マークマンが指摘する「道徳的損傷」とはメンタルヘルス上の問題であり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)としてあらわれることが多い。BBCと同様に、道徳的損傷の専門家リタ・ブロックとHCパルマーが新たに共同執筆した論文でも次のように述べられている。「次々と容赦なく運び込まれてくる患者たち、危険と隣り合わせの業務、死に至らしめる見えない敵、極度の肉体的・精神的疲労、不十分なリソース、際限なく増え続ける死者数。これらの点から見ても、新型コロナウィルスとの戦いは戦場医療に酷似している」

つまり、医療従事者がヨガや瞑想を実践する重要性がいっそう増しているのだ。

最前線で新型コロナウィルスに立ち向かう医療従事者たち

サレス医師は、毎週土曜日にSNS上で無料のオンラインクラスを開催し、医学界やその他の人々とヨガや瞑想の恩恵を共有している。

そのレッスンは、シカゴで産婦人科の研修医4年目として働くリンジー・マカラーネン医師のような人々にとって、まさに必要なものだった。「いま私は、オンラインでサレス医師とヨガを練習しています」とマカラーネンは語る。「新型コロナの感染拡大によって私はいきなり腎臓内科に配属され、右も左もわからない状態でした。でもヨガのおかげで混乱の中でも落ち着いて集中し、平穏でいられるようになりました」

ニューヨークで放射線科の研修医をしているアミナ・ファルーク医師もマカラーネン医師と同じ意見だ。彼女もパンデミックが最初に起きた時に、サレス医師とヨガを始めた。「本当にすごい効果だわ」と彼女は説明する。「病院の中も研修医としても、あらゆるものが変化している中で正気を保てているなんて奇跡です」

もちろん、想像を絶するようなストレスに対処するのは容易ではない。だがサレス医師と彼女のヨガ仲間は、ダウンドッグを数回行うだけで新型コロナ患者の治療に伴う不安が和らぐなら、試す価値はあると思っている。しかも、彼女たちの練習の効果を裏付ける科学的根拠は少なくない。

科学的観点から見たヨガのストレス軽減効果

ハーバード・ヘルスによると(また、ヨガ経験のある誰もが証言するように)、定期的なヨガの実践は「過剰なストレス反応の影響を軽減し、不安やうつ症状にも有益である」ことが科学的な調査でたびたび示唆されている。

さらにハーバード・ヘルスは、ヨガの実践を通じて自覚しているストレスや不安を軽減することで、自分でストレス反応を調整できるようになる可能性があると付け加えている。「例えば、心拍数や血圧の低下、呼吸の安定化など生理的覚醒レベルが低下する。また、ヨガの実践がストレス対処能力の指標となる心拍変動の上昇に役立つことも立証されている」

予防医学国際ジャーナル (International Journal of Preventive Medicine)で2018年に発表された研究によると、ヨガには「ストレス、不安、うつ症状を軽減する効果」があるという。さらに科学者たちは、抗不安薬など他の治療法を補完する手段としてヨガを用いることで「薬の使用が減り、治療にかかる医療費」を削減できる可能性も指摘している。

さらに具体例をあげると、2019年の臨床医学ジャーナル(Journal of Clinical Medicine)では、医療従事者のストレスとバーンアウト(燃え尽き症候群)を管理するためのヨガの利用に関する論文が発表されている。その中で、研究者たちは次のように結論づけている。「ヨガは、筋骨格と心理的な問題の予防と管理に効果的である。ヨガや瞑想を実践している被験者には、身体的な問題や睡眠の質の改善に加え、ストレスレベルとバーンアウト症状の両方において緩和が見られる」

医療従事者のための無料クラス

いまメディアには、休憩中に身体を動かしたり瞑想をする医療従事者たちの画像が盛んに投稿されている。これはワシントン大学病院のドライブスルー方式検査センターの看護師たちの写真だ。このような写真を目にすると、多忙を極める中にあっても、ほんの数分の息抜きがストレス軽減に大きな違いをもたらすことがわかる。

医療従事者の皆さんには、仕事の後や長い休憩中もヨガを試してほしい。様々なプラットフォームが、人命救助に関わる人々のための無料のオンラインヨガクラスを提供している。

Down Dog App

「最前線」で働く医療従事者向けに無料アクセスが提供されている(2020年7月1日まで)。登録はウェブサイトへ。

Yoga 2.0 Studio

このプラットフォームでは、医療専門家向けに無制限でオンラインクラスを提供している。登録には職務を証明できるものをメールで送る。

I Love Namaste

完全にデジタル化されたこのヨガスタジオでは、すべての医療従事者に無料のZoomクラスを提供している。登録はウェブサイトへ。

Sweat Yoga

スウェットでは、病院で働くすべての医療専門家とスタッフに無料クラスを提供している。アクセスするには、顔写真と身分証明書の画像をメールで送る。

Headspace

この瞑想アプリでは、2020年末までHeadspace Plusへの無料アクセスを提供している。同社は次のような声明を出している。「今起きていることは誰にとっても試練です。しかし、医療専門家の皆様には特に大きな負担がかかっています。Headspaceは皆様のためのものであり、できる限りのサポートを提供したいと考えています。この困難な時期を乗り越えるために、皆様のセルフケアと健康維持のお手伝いをします」 Headspace Plusにアクセスするには、ウェブサイトのフォームに記入する。

Meditation Medicine

オンラインヨガクラスで集まった寄付金は、最前線で働く人々の防護具の購入に充てられる。医学部 3年生と彼のヨガティーチャーの妹が始めた瞑想療法のクラスは、地域社会に貢献しながら常に前向きに健康を保つのに役立つだろう。

もちろん、サレス医師の週末練習への参加も可能だ。あるいは、数分目を閉じてリセットするだけでもいいだろう。

「人々が何を求めているかを知ることが大切です。でもそれがほんの少しの平安や穏やかさであるなら、数分で得られるでしょう」とサレス医師は言う。「それこそが、瞑想の効果だからです」そして彼女は、混乱の中にあってもユーモアを忘れずにこう付け加えた。「心を鎮める手助けはできるけれど、手品みたいに何でもできるわけではないわ。いきなり頭に足をのせたいと言われても、すぐには無理よ」

by Stacey Leasca
translation by Sachiko Matsunami

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