ジェンダーは誰かが決めた"概念上のルール"でしかない|キレイな人の脳内 #3 エリカ・リンダー

 ジェンダーは誰かが決めた"概念上のルール"でしかない|キレイな人の脳内 #3 エリカ・リンダー
(C)2016, Serendipity Point Films Inc.
横山正美
横山正美
2020-06-25
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性別なんて、生物学上染色体の違い以外の何者でもない

そんな彼女は、モデルデビューした当時のことを最近仏モード誌のインタビューでこう振り返っている。「スカウトされた当初はモデルという仕事に全く興味がなかった。(人生で)正しい選択をするには、14歳は若すぎたしね。モデルを始めた時は、周囲から常に“女性のスーパーモデル”という暗黙の肩書きを求められたけど、ピンと来なかった。傲慢になっているわけじゃなくて、本当にしっくり来なかっただけ」。

その後映画『Below Her Mouth』(邦:アンダー・ハー・マウス 2016・カナダ)ではレズビアンの屋根葺き職人の役で俳優デビュー。続く最新ショートムービーでは中性的なアンドロイドの役を演じるなど、順風満帆なそのキャリアにはジェンダーフリーなエリカの“在り方”がそのまま投影されている。

エリカ・リンダー アンダー・ハー・マウス
映画『Below Her Mouth』(邦:アンダー・ハー・マウス 2016・カナダ)より。あるナイトクラブでファッションエディターのジャスミン(ナタリー・クリル)はマニッシュな魅力漂うダラス(エリカ・リンダー)と出会う。積極的に彼女を誘い続けるダラスを最初は避けていたジャスミンだが、次第にその魔性の魅力に溺れていく…。(C)2016, Serendipity Point Films Inc.

「ジェンダーの話題はセンシティブだけど、私はジェンダー自体(誰かが作った)社会概念のようなものにすぎないと思ってる。男性・女性の区別なんて、生物学上染色体の違い以外に明確に証明できるものなんてないから。それに、人は何かにつけて“カテゴリー”を作りたがるもの。特にファッション撮影の時は、性別がはっきりしている方が何かにつけて都合が良いものだしね。でも、私は男だとか、女だとかそういう“通念上のルール”のようなものを打ち破ることに生きがいを感じる。『自分は生きている!』って実感できるから」

エリカ・リンダー
ジェンダー自体が社会概念のようなもの」というエリカ。クラシックなシャネルスーツからワイルドなバイカージャケットまで着こなすその表情は、見事なまでに変幻自在でスタイリッシュだ。(C)2016, Serendipity Point Films Inc.

 そんな彼女は先のモード誌のインタビューで、自身も起用されたルイ・ヴィトンのデザイナーのニコラ・ジェスキエールがアンドロジナスモデルやトランスジェンダーモデルを広告等に多く起用したことを発端に、今後のモード界はよりジェンダーフリー化が加速するのではないか、とも語っている。90年代のアギネス・ディーンやルビー・ローズらアンドロジナスモデルの台頭に始まり、エリカと年が近く共演経験もある美しきアンドロジナスモデルのアンドレイ(現アンドレア)・ぺジックがジャン=ポール・ゴルチエのショーで男性モデル初の“花嫁姿”を披露したのが2011年。その後スーパーインフルエンサーのジェームス・チャールズがコスメブランド「CoverGirl」の顔に抜擢されたり、今年2月のNYコレクションでもエイジェンダー(=社会・文化的無性別)のジュノ・ミッチェルがマーク・ジェイコブズのオープニングを飾ったところを見ると、彼女の見解は間違いなさそうだ。

エリカ・リンダー アンダー・ハー・マウス
何気ない仕草の一つひとつがキマる。ティーンの男の子のような表情を作ることができるのも、スーパーモデルであり、”カメレオンアクター”である彼女の天賦の才能だ。(C)2016, Serendipity Point Films Inc.

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