身体機能の回復以上にヨガで目指すものとは|病院を飛び出したふたりの医師の挑戦

 身体機能の回復以上にヨガで目指すものとは|病院を飛び出したふたりの医師の挑戦
Kenji Yamada
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アクセシブルヨガ×フレイルヨガで受講者の心身に前向きな変化が

――アクセシブルヨガとフレイルヨガでは、どのようなプログラムを実践していますか?

陽子:アクセシブルヨガは、ベースとなるシークエンスがあります。しかし、誰でもアクセスできるヨガであるために、そのときの受講者に合わせて毎回プログラムを変えているんです。重視するのはポーズの形より効果。例えば、片脚で立つポーズを脳性麻痺の患者さんが行う場合、椅子に座ってヨガブロックを足の指で押すだけでOK。それで体の軸と集中力の高まりを感じられたら、このポーズをやる意味は十分達成できたと考えています。

輝基:こうでなくちゃダメという概念はなく、強制もしません。その人ができる動きを拾い上げ、その場にいて参加しているという体験の共有が大事。椅子に座っている人、車椅子の人が混在してよくて、介護者の参加もウエルカムです。

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椅子に座って行うダウンドッグで全身を伸ばし、腕や脚の筋肉をアクティブに

陽子:フレイルヨガは何かというと……。単なる運動指導ではありません。例えば、歯科医師監修の口腔嚥下体操、栄養士が考えた高齢者のための栄養指導の座学も行い、様々な専門家の力を借りてフレイルリスクを軽減するプログラムを作っています。

輝基:クラスでは、アクセシブルヨガにフレイルヨガを組み込んで提供しているんです。体を動かしながら、口腔嚥下体操や座学も行う。フレイルの早期発見やフレイルという概念の普及にも努めています。

――クラスを体験した人には、心身に前向きな変化が見られるようですね。

輝基: そうなんです。精神的な疾病を抱えた患者さんは、不安との付き合い方に変化が見られました。今までは薬が手放せず、いつ服用すればいいのか、服用したら本当に効くのかと、常に不安が尽きない状態。このケースではヨガの呼吸法の指導を続けたところ、不安が沸き上がったら呼吸に集中することで立ち止まれるように。すると、症状と冷静に向き合うことができ、薬を飲むタイミングなどをコントロールできるようになりました。

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メドケアヨガを受講している、福祉施設で働く娘さんとご両親と一緒に

陽子:高齢者や障害者の場合、回数を重ねるうちにできなかった動きができ、自分で体の可能性に気付くことで気持ちが前向きになるようです。

輝基:ある高齢者施設では、クラスには参加するけど笑顔はなく、ずっと腕組みしている男性がいたんですね。楽しんでもらえていないと思い職員に相談したところ、「毎回参加するのは先生のクラスだけですよ」と言われ、見た目の印象とのギャップに驚きました。周りの人と同じ空気を吸い、雰囲気を共有することが男性には喜びなんですね。コミュニティを作りの必要性を改めて実感しました。

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クラスには息子さんを連れて行くことも。受講者の笑顔を誘う癒しの存在

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Photos by Kenji Yamada
Text by Ai Kitabayashi



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