動作に必要な運動の「文脈」とは?|理学療法士がヨギに知ってほしい体のこと

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動作に必要な運動の「文脈」とは?|理学療法士がヨギに知ってほしい体のこと

得原藍
得原藍
2019-02-01

理学療法士として活躍する得原藍さんが、ヨギに知ってほしい「体にまつわる知識」を伝える連載。第十三回目となる今回は「時間的変化による、運動の選択肢の多様性」について。

刻々と変わる環境がより運動を複雑にする

前回は、ベルンシュタイン問題についてご紹介した中で、「運動の自由度」についてお伝えしました。「関節は限られた運動方向の中で動くけれど、その運動方向の組み合わせや、使用される筋の組み合わせまでを考慮に入れると実に多大な選択肢がある」という話でしたね。

「ベルンシュタイン問題」では、運動とその制御についての研究者であるベルンシュタインという人が提示した問題なのですが、運動に関する「自由度」「文脈」「単位」について、それぞれが複雑に絡まりあって運動が遂行されていることで制御がいかに難しいものになっているかを問うています。

ある一点に手を伸ばすだけでも、その軌道は無数である…そう考えると、私たちが普段スマートフォンを触っている動作がいかに自由度を制限するのか…自由度を奪われた身体はどうなってしまうのか…容易に想像できるはずです。

今回は、同じベルンシュタインが提示した3つの問題のうち「文脈」について考えてみたいと思います。

体が置かれた環境・条件が、直後の運動に影響を与える

文脈とは「運動の前後関係」です。運動は「ある一点からある一点までの身体の位置変化」とも捉えることができますから、時間的要素も関わります。変化には時間が必要なのです。

この、「時間的要素」について歩行で考えてみましょう。

あなたが今、平らな地面を歩行しているとします。健康な人間の歩行は、ほぼ自動的に足が前へ運ばれる形で行われます。しかし突然、目の前の地面に穴が現れたらどうでしょう?

あなたはそれに気づくと同時に、足を動かす軌道を変化させるでしょう。また、その軌道の変化で全身の平衡も崩れるので、両手を広げたり、身体を傾けたり、全身の運動にも影響が広がるはずです。

つまり、運動は「文脈(前後関係)」によって常に変化し、直前の運動が直後の運動にも影響しているのです。また、直後の運動の目的が変われば直前の運動にも影響してきますから、過去か未来かを問わず、時間的文脈は運動に影響するのです。

腕を伸ばす動作の場合は?

「腕を前に伸ばす」というシンプルな動作の場合はどうでしょうか?

肘を深く曲げている状態から、浅く曲げている状態に移行する中では、運動の根元になっている肩関節にかかる腕の重さが変化しています。腕にかかっている重力が肩関節まわりの回転に作用し、その重力の変化の中で常に発揮すべき筋力も変化しているのです。

このように、運動の文脈(時間的な運動の変化)は、運動の選択肢の多さにつながっています。運動は、体が置かれた環境との相互関係において「いかようにも変化できることを必要としている」とも言えるかもしれません。

つまり、運動をするわたしたちの姿勢としては、文脈に合わせてフレキシブルに反応できる能力の重要性にもっと注目すべきですし、それができる身体を構築するためには、という視点を忘れてはいけないと思います。

ライター/得原藍
大学時代にアメリカンフットボールの学生トレーナーをした経験から身体運動に興味を持ち、卒業後社会人経験を経て大学に再入学し理学療法士となる。総合病院と訪問リハビリテーションで臨床経験を積み、身体運動科学について学ぶために大学院に進学、バイオメカニクスの分野で修士号を取得して5年間理学療法士の養成校で専任教員を勤める。現在はSchool of Movement®️ IES Directorとして様々な運動関連職種の指導者に対してバイオメカニクスを中心とした身体運動の科学を教えている。

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