あの人、自己中心的かも? ナルシシズム(自己愛)について心理師が解説


「ナルシシズム」という言葉を聞くと、どんな人を思い浮かべるでしょうか? 自分の話ばかりする人、他人の意見を聞かない人、やたらとSNSで自撮りをアップする人……。実はこれらの行動の背景には、心理学でいう“ナルシシズム的特性”が関係していることがあります。
ナルシシズムとは?
ナルシシズムとは、自己愛が強く、自分の価値を他人よりも高く見積もりやすい心理的傾向を指します。そして、ナルシストはその傾向を持つ人を指します。特徴的なのは、「他人の感情に鈍感」「自分が認められていないと不安」「評価されたい気持ちが非常に強い」といった点です。ただし、これらは必ずしも「病的」というわけではありません。「評価されたい」「認められたい」という思いは、誰の中にもある自然な感情です。
たとえば、自分の過去の手柄ばかりアピールする上司がいたり、友人の悩みに耳を傾けるふりをしながら、気づけば話題をすり替えて「自分語り」ばかりする人もいたりします。誰しもがこのような人と遭遇したことや、自分自身でも経験があるのではないでしょうか。誰しもが程度の差こそあれ、持っている性質ですが、それが他人を無碍(むげ)にする形で現れるときです。ナルシスズムの背景には「価値がないと存在してはならない・人から認められない」といった強い思いを抱えている場合があり、他人からの評価や注目によって自尊心を保とうとしています。自分を強く保ちたいからこそ、無意識に人を見下したり、他者への共感や思いやりよりも支配的な関わり方になってしまうのです。

ナルシシズムが強い人との関わり方
それでは、ナルシシズムが強い人とどう関わればよいのでしょうか? まず1番大切なことは、相手を変えようとするよりも「距離感」を見直すことです。相手に振り回されないよう、自分の感情や境界線を大切にする。そうすることで、心理的な疲労を減らすことができます。
感情的に巻き込まれない
ナルシシズムが強い人は、自分を中心に物事を考えるため、相手の感情に鈍感です。そのため、相手に共感や配慮を期待すると、失望や怒りを感じてしまいやすくなります。そのため、「この人は私を理解してくれるはず」という前提を手放すことも大切です。その上で、「どうすれば自分の心を守れるか」にフォーカスしましょう。
自己肯定感を保ちながら距離を取る
自己肯定感が低いと、「あの人にもっと認めてもらいたい」と思って無理をしてしまいます。相手に合わせすぎると、心がどんどんすり減ってしまいます。できる範囲で「物理的」「感情的」な距離をとりましょう。なるべく連絡を取る回数や会う回数を減らしたり、踏み込みすぎる要求があれば、「今は答えられない」「それは難しい」と丁寧に伝える練習を重ねましょう。
「変えよう」とするより「理解して境界線を引く」
ナルシシズムが強い人は、相手に何かを伝えても変化が難しいことが多いです。向き合えば「変わってくれるはず」という期待を手放して、「どう対応すれば気持ちが楽でいられるか」を考えることが自分を守る第一歩です。

ナルシシズムが強い人と距離を取れない時
関係性によっては距離を取ることが難しい場合もあります。相手に何を伝える必要がある時は、「あなたの〇〇で私は傷つく」と、自分の気持ちをアイメッセージ(自分を主語にしたコミュニケーション)で伝えたり、二人きりで対応せずに第三者を交えたコミュニケーションを心がけることも有効です。そして、その相手に気持ちをサポートしてもらおうとせず、他の人間関係を大切にしましょう。信頼できる友人や家族、心理カウンセリング等のサポートで気持ちを整理し、自己肯定感を補います。もし精神的に限界を感じる場合は、たとえ大変な道のりでも「離れる」ことを検討してみましょう。その関係が「あなたらしさ」や「心の健康」を著しく損ねているなら、「離れる」ことは必要な自己防衛です。「これ以上自己犠牲しない」ために強い選択肢を取ることも、自分を大切にすることにつながります。
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