気づいたら原因不明の不調の嵐。試行錯誤した私の更年期との向き合い方【体験談】

 気づいたら原因不明の不調の嵐。試行錯誤した私の更年期との向き合い方【体験談】
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「更年期」。最近では少しずつ語られることも増えてきましたが、以前はネガティブなイメージも強かったものです。具体的な症状や大変さもまだまだ知られていないことも多いですよね。Life for meプロデューサーの清永真理子(きよまり)さんは、様々な不調を経験し、苦しんだということです。特に、判断力や集中力の変化で、仕事に影響が出ることを想定しておらず、悩んだとおっしゃっています。清永さんの更年期の経験が『この不調、ぜんぶ更年期のせいだったの!?』(解説:木村容子、三笠書房)に書かれています。本書に沿ってお話を伺いました。

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気づいたら、様々な不調の嵐に。

——更年期症状が始まる前の婦人科との接点について教えてください。生理痛やPMSのご経験はいかがでしたか?

私は月経に関しては、ほとんど問題がなかったです。初潮は10歳頃で、中学から高校1年生くらいまでは保健室に行くこともありました。でも、大人になってからはハードワークしていても月経不順になることもなく、ときどきお腹が痛くても市販薬を飲めば大丈夫という感じでした。生理前は食欲が増すなど、軽いPMSはありましたが、大きなトラブルはなかったタイプです。

母が卵巣ガンで亡くなっているので、婦人科系の病気は結構意識していました。以前勤務していた会社が35歳から人間ドックを受けさせてくれていたので、毎年婦人科のオプションをつけて診てもらっていましたが、かかりつけの婦人科医がいたわけではないです。

——47歳から更年期に関する不調を感じ始めたということですが、どのようなことがつらかったですか?

つらい症状はたくさんありましたが、わかりやすく「これがつらい」というよりは、日々、さまざまな症状が徐々にやってきて、気づいたら調子が悪いという状態で。しかも突然ひどくなるわけではないんです。

疲れが取れにくいことから始まって、気づいたら肩や背中がパンパンに張って痛かったり、手が痺れたり、夜中に何度も目が覚めて眠れなかったり。気分が晴れず笑えなくなったり、メールに誤字脱字が増えたり、仕事が思うように進まなくなったり……色々なことで少しずつ調子が悪くなることがつらかったです。

——それまでの人生で経験した痛みや不調とは違ったということでしょうか?

たとえば腹痛って突然痛くなりますよね。そうやって更年期の症状も、突然どこかが痛かったり、不調を感じたりするものだと思っていたのですが、徐々に体調が悪くなるんです。

「なぜ病院に行かないんですか」と聞かれることがよくあるのですが、頭痛、体全体の張り、気分の浮き沈みの激しさ、目眩……と日によって症状が違うことや、複数同時におこること、また症状もじわじわと重くなっていくことで、何科に行けばいいのか、そもそも病院へ行くべきことなのかもわからなかったです。

「不定愁訴(色々な不調があるものの、検査をしても原因が明らかにならない)」という言葉は聞いたことがある人はいても、経験したことがある人はそう多くないでしょう。生理のときにお腹の調子が悪くなったり、貧血になったりすることはあるかもしれませんが、更年期の不定愁訴は様々な不調が重なってくるイメージです。200~300種類あるとも言われています。でも経験したことがないので、この不調の状態が不定愁訴であるということすら、理解できていませんでした。

——さまざまな不調が更年期の症状だと気づくまでに困難があったのですね。

そうですね。症状自体がホットフラッシュなど、私の知っていた更年期と違いましたし、47歳のときの人間ドックで調子が悪いことを先生に伝えましたが、当時はまだ月経が順調にあったため、先生から「まだ早いから、更年期じゃないよ」と言われたのもあったと思います。

「お医者さんがそう言うのだから」と思って、それ以降、更年期を疑うこともなかったのですが、不調は続いていて。原因がわからないことで、不安も感じていました。

更年期に関する講座を行っているのですが、受講生からも、一度病院へ行き、更年期ではないという診断を受けたものの、後から更年期だとわかったという話を伺うことはあります。

閉経は平均50歳と言われますが、それはあくまで平均です。私は52歳で閉経しましたが、59歳だったという方にも、43歳だったという方にもお会いしたことがあります。

更年期は閉経の前後5年の計10年と言われますが、最後の月経から1年経過しないと閉経したことにもならないので、更年期がいつから始まるかも最初はわかりません。結果的に「あのとき閉経した」とわかるものです。私の場合、47歳で不調が始まったのは、更年期が始まる期間とピッタリ重なります。

更年期と診断されてからも大変だった

——更年期と診断されたときのお気持ちはいかがでしたか?

正直、理由がわかってほっとしました。一方で、更年期のイメージがあまり良くなかったんです。「おばさんになった」「閉経=女性が終わる」といったイメージが私の中にあって。実際には単なるイメージでしたが、年を取ったことを自分で認めるようなちょっとした違和感はゼロではありませんでした。

ただ、あまりにも調子が悪く、さまざまな病気、もしかしたら全然想定していないような難病なのではと不安を抱えていたので、更年期と診断されてスッキリした部分が大きかったです。

——ただ、診断後も大変だったのですよね。

薬さえ飲めば治ると思ったんです。漢方にホルモン補充療法、抗うつ剤や、睡眠導入剤……と色々な対応をしたのに、症状はなかなか改善しませんでした。

更年期不調の原因は「身体のホルモンの変化」×「環境」×「気質」。薬だけ飲んでも、生活習慣や思考ぐせがそのままであれば、改善しないのも当然なのですが、当時は更年期不調の原因をしらなくて。

色々な治療を試しても改善しないことに、絶望感を感じました。

診断を受けてからも不調の種類が増えていき、更年期症状としてよく知られているホットフラッシュ・気持ちのイライラ・体が重だるいというレベルを超えていて。仕事にも影響がでてくることがあり。これは、正直ショックでした。

——どんなことでしょうか?

パニック症状で、飛行機にのれなくなってしまい、海外出張はできなくなりました。また、電車に乗れなくなる日も多く、移動はタクシーを使うことも、増えていきました。

最もつらかったのは、以前当たり前にできていた仕事が思うようにできなくなったことです。たとえばアポイントを丸ごと忘れてしまったことがあって。正確には「抜け落ちる」という感じで、手帳に書いてあるのに予定を入れていた認識がないので、忘れていたという感覚すらないんです。

ある日、企業での若手育成トレーナーの仕事を忘れてしまったことがあります。連絡もなく来ない私を心配し、担当者が電話をかけ続けてくれましたが、私は半日後に気づいたんです。手帳を見ると確かに書いてあるのにすっかり抜けおちているのです。それ以降、信頼を失う可能性があるので、新しい仕事を受けることが怖くなりました。

——ほかにも仕事で困ったことはありますか?

毎朝読んでいた日経新聞も、単語はわかるのに内容が入ってこなくなりました。例えば「円高更新」と書かれているとき、以前だったら、その理由がなぜなのか。お客様にどんな影響がでるのかなど、その背景や今後起こりうることをイメージしながら、読んでいたんです。でも、更年期症状が出ていた頃は「円高更新」という漢字が読めるという感じ。その言葉のもつ意味とか、背景など理解できないのです。何度読んでも文字が流れていく感覚でした。

小説も読めなくなりました。ストーリーや登場人物が、うまく整理して覚えられないのです。企画書も書けなかったですし、メールの内容も理解できなくて、日時のやり取りだけは調子の良い日になんとかこなせるレベルでした。慣れた仕事はできても、イレギュラーな要素があると対応できなかったです。

今は更年期を乗りこなせるようになり、症状が改善したので、こんな風に説明できるのですが、当時は何が起きているかわからない中で、できない仕事が増えてくることが本当につらかったです。

——感情面での変化はありましたか?

怒りのコントロールが難しくなってしまったことがありました。たとえば、午前中指定していた荷物が0時5分に届いたとき、その5分遅れたことで特に困ったことがあったわけでもないのに、怒りがこみ上げてきて、印鑑を持つ手がプルプルと震えてしまったり。他人なのでギリギリ我慢できましたが、以前だったら、全く気にしたこともないことでイライラしてしまう。こんな風に、感情コントロールができない自分に情けなさを感じると同時に、今後どうなってしまうんだろうと恐怖も感じました。

体の症状はもちろんつらいのですが、心の変化や脳機能が一時的に落ちることは想定外だったため、余計に苦しみましたね。

※後編に続きます。

『この不調、ぜんぶ更年期のせいだったの!?』(三笠書房)
『この不調、ぜんぶ更年期のせいだったの!?』(三笠書房)


【プロフィール】

清永真理子(きよなが・まりこ)

1969年福岡県生まれ。
GCDF-Japanキャリアカウンセラー、女性の健康経営推進員、5代目酒サムライ・利き酒師。
株式会社リクルートで営業・営業マネージャーとして23年間勤務。2016年、日本酒コンサルタントとして株式会社WABIを創業。その後4年間の更年期障害に翻弄され、キャリアチェンジを経験。
自身の体験と100名以上の経験者の声をもとに「Life for me-更年期講座-」を立ち上げる。現在は、個人講座以外に、従業員の更年期によるパフォーマンス低下による企業損失を防ぐため、企業研修を企画・実施。

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『この不調、ぜんぶ更年期のせいだったの!?』(三笠書房)