炭水化物が「発がん性物質」の発生を抑える!?がんのリスクを下げる食べ方とは【管理栄養士が教える】
ダイエットや健康の大敵とされる「炭水化物」ですが、正しく理解して摂ることで、太らない・疲れない ・寝つきがよくなる生活を送れるようになる、と語るのは文教大学教授・管理栄養士の笠岡 誠一さん。笠岡さんの著書である『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(アスコム)より、炭水化物の本当に正しい食べ方について一部抜粋してお届けします。
炭水化物が発がん性物質の発生を抑える!
腸が元気になることで、大腸がんのリスクを減らすことができます。2022年の統計で、死亡数が多いがんは、女性の第1位、男性の第2位が大腸がん。罹患者数は、年間約16万人もの数になります。大腸がんの発症には、生活習慣、特に食生活との関連性が強く指摘されています。日本人の食生活が炭水化物を減らす方向にシフトしてから、急激に患者数が増えたがんの一つです。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、炭水化物の摂取量は1955年には1日411グラムありました。それが、2019年には248グラムまで低下しています。1日当たりのエネルギー摂取量も減少、米の摂取量も低下しています。炭水化物の摂取量が減少するのに反比例するように、大腸がんにかかる人が急増しています。疫学的な研究で、炭水化物(でんぷん)の摂取量が減ると、大腸がんの発症頻度が上がるという報告もあります。
善玉菌が生む「短鎖脂肪酸」ががんの増殖をブロック
炭水化物に含まれる食物繊維は、善玉菌の「エサ」になり、エサを食べた善玉菌は、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの「短鎖脂肪酸」を作り出します。この中の「酪酸」が、大腸がん予防にすごい働きをしていることが近年の研究でわかってきました。通常の細胞はブドウ糖をエネルギー源としていますが、大腸の細胞は、酪酸を主要なエネルギー源としています。そのため酪酸の量が不足すると、エネルギー不足に陥り、細胞が正常に機能できません。
また酪酸は、がん抑制遺伝子の一種「p53」を活性化することもわかりました。p53遺伝子が活性化すると、がん化した細胞が増殖するのを防いだり、死滅させたりと、がんの発症リスクを下げることができるのです。つまり、酪酸を増やすことが、大腸がんの予防につながるというわけです。炭水化物を食べ、善玉菌にしっかりエサを与えて腸の中に短鎖脂肪酸を増やしてあげることが、発がん性物質の発生を抑えるのみならず、遺伝子レベルでもがんの増殖を防ぐための効果を発揮するのです。
この本の著者/笠岡 誠一
文教大学健康栄養学部教授。管理栄養士。博士(農学)。
1967年広島県三原市生まれ。1993年東京農業大学大学院修了後、山之内製薬(現・アステラス製薬)を経て、2000年より文教大学専任講師。2014年より現職。専門分野は栄養生理学、食品化学。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方の性質を兼ね備えた「レジスタントスターチ」に早くから注目し、腸内環境を改善する”腸活”を多方面で世に広める。著書は、『炭水化物は冷まして食べなさい。』(アスコム)、『脳と体がみるみる若返る 30の食習慣』(高橋書店)など多数。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
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