ひじやひざにできるブツブツの正体「乾癬性関節炎」なりやすい人の特徴は?医師が解説

 ひじやひざにできるブツブツの正体「乾癬性関節炎」なりやすい人の特徴は?医師が解説
Adobe Stock
甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-10-10

「乾癬性関節炎」は、そのまま症状を放置すると痛みが増すだけでなく「関節の変形」が起きる可能性があります。症状の特徴や原因について、医師が解説します。

広告

乾癬性関節炎の特徴

乾癬性関節炎とは、皮膚疾患の1つである「乾癬(かんせん)」に、関節の炎症を合併する病気です。

乾癬は、皮膚に炎症が生じることから皮膚の新陳代謝が亢進し、ぽろぽろと皮膚がはがれる症状が現れ、皮膚症状や全身症状に応じていくつかのタイプが知られています。

乾癬性関節炎は、関節や腱付着部、指に炎症をきたす病気であり、日本人では、乾癬を発症した患者さんの約10%程度に発症するといわれています。

発症原因は、正確には不明ですが、30~50歳代に多く、男女比はほぼ同じです。

乾癬性関節炎では、ほとんどの例で乾癬の皮膚病変を認め、例えば髪の生え際や肘、膝、臀部などに多く、赤く盛り上がった発疹と、銀白色のフケの様な鱗屑を認めます。

また、乾癬性関節炎の症状は、

  • 末梢関節炎(手足の指の第一関節を中心に、左右非対称に多関節が侵される)
  • 腱付着部炎(アキレス腱や膝蓋腱など、腱・靭帯が骨に付くところに痛みを認める)
  • 指趾炎(手足の指がソーセージ様に腫れる)

などが挙げられます。

症状
乾癬性関節炎の症状

脊椎関節炎(背骨や仙腸関節に炎症がおこり、腰痛を認める)、あるいは爪病変(爪の一部の剥離、肥厚、凹みを認める)などをきたす場合もあります。

乾癬性関節炎の原因

詳細な発症原因は分かっていませんが、何らかの外部からの要因(環境因子)と体質(遺伝要因)によって免疫系の異常が生じ、慢性的な皮膚の炎症をおこすと考えられています。

環境因子とは、ストレスや食生活(脂肪の多い食事、酒や辛いもの)、たばこ等が乾癬には悪影響を与えるといわれています。

また、遺伝要因を調べる方法にはゲノムワイド関連解析という手法があり、これは遺伝子情報のわずかな違いに注目し、どのような遺伝子多形があるか、あるいは病気のかかりやすさに影響しているのかを明らかにする方法です。

実際にこの病気の皮膚や関節でどのような異常が起こっているのかについては、これまでの多くの研究によって実態が明らかになってきました。

乾癬の病態には、樹状細胞とTh17細胞といわれる2つの免疫細胞が特に重要な役割を果たしていると考えられています。

乾癬の皮疹部では、樹状細胞からインターロイキン(IL)-12やIL-23という物質が作られていて、それぞれTh1細胞やTh17細胞というリンパ球を誘導しています。

また、樹状細胞はTNFαという炎症を起こす物質を作り、これが自身に作用することでさらに活性化します。

Th17細胞はIL-17やIL-22という物質を作成しますが、これらが皮膚の表皮細胞に作用することで乾癬の皮疹が形成されると推測されています。

乾癬性関節炎になりやすい人の特徴

乾癬性関節炎は乾癬の種類のひとつであり、そのまま症状を放置すると痛みが増すだけでなく「関節の変形」が起きる可能性がありますので、適切な対応が特に大切です。

乾癬性関節炎は、免疫バランスの異常が主原因でおこると考えられていて、その患者さんの多くは皮膚の症状が先行し、その後に関節炎を発症しています。

乾癬の症状の重さと関節炎の重症度に相関性はないと言われていますが、乾癬の症状が重い患者さんほど乾癬性関節炎になりやすい傾向があるとされています。

また、乾癬の患者さんのなかで、爪に乾癬がある方、頭皮に乾癬がある方、おしりに乾癬がある場合には、乾癬性関節炎を発症するリスクが高いといわれています。

乾癬性関節炎になったらどんな治療をする?

乾癬性関節炎になったら、病気の活動性を抑えて進行を防ぎ、日常生活の質を上げることを目標に治療を進めることになります。

末梢関節炎が主体の場合、NSAIDsや抗リウマチ薬で治療開始しますし、脊椎関節炎が主体の場合はNSAIDsを使用します。

病気の活動性が強い場合や、骨変化を既に認めるような場合は、生物学的製剤の使用を検討します。

乾癬性関節炎が改善しても、皮膚症状がコントロールできない場合があり、皮膚病変の評価は治療の選択に重要なポイントになります。

乾癬の患者さんは皮膚症状による痒みばかりでなく、皮膚の外見を気にすることで精神的にも苦痛を感じてしまうことがあります。

また関節炎は痛みのみならず、進行すると関節変形や硬直をきたしてしまい、関節構造が壊れて機能が一度失われてしまった部位に対しては、残念ながら現段階では有効な薬物治療がありません。

皮膚症状に加えて、関節の痛みや指の腫れ、腱付着部の痛みを認める場合には、早めに整形外科やリウマチ専門医に相談してください。

広告

AUTHOR

甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

症状