「太る」と敬遠されるコレステロール。実は女性の健康を支えている?医師が詳しく解説

 「太る」と敬遠されるコレステロール。実は女性の健康を支えている?医師が詳しく解説
梶 尚志
梶 尚志
2024-09-26

エストロゲン減少で起きる更年期不調は【コレステロール不足】が原因かも!?医師が解説します。

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そもそも「ホルモン」って何?

ホルモンとは、体の中の「メッセンジャー」のようなもので、情報伝達物質とも言われています。たとえば、膵臓から出されるインスリンというホルモンは、血糖を下げる働きがあることは有名です。つまり、体のいろいろな部分(臓器や細胞など)に「こうしなさい」という指示を出して、体の機能を調整するはたらきがあり、ホルモンが正常に働くことで、体が健康な状態に保たれているわけです。

ホルモンは4つの種類がある

ペプチドホルモン

ペプチド(タンパク質)から成るホルモンです。これらのホルモンは一般的に水溶性で、細胞膜の受容体に結合して作用します。膵臓から分泌されるインスリンや脳下垂体から分泌される成長ホルモンなどがあります。

ステロイドホルモン

コレステロールを原料にした脂溶性のホルモンです。これらは細胞膜を通過して細胞内の受容体に結合します。女性ホルモンのエストロゲン、男性ホルモンのテストステロンはこの仲間になります。

アミノ酸誘導体

アミノ酸で作られるホルモンで、水溶性と脂溶性の両方があります。元気ホルモンのアドレナリン、甲状腺ホルモン、睡眠ホルモンのメラトニンなどがあります。

エイコサノイド

プロスタグランジンなどで、炎症や免疫の応答、血圧の調節などに重要な役割を果たしています。

女性のライフステージの変化に深く関わる女性ホルモン「エストロゲン」

エストロゲンは女性の心と体の健康にとって非常に重要なホルモンです。女の子が大人の女性に成長するために必要なホルモンで、乳房の発育や体型の変化、月経の開始に関わっています。また、若い女性にとっては月経周期の調整、妊娠の準備、肌や髪の健康維持に重要なホルモンです。さらに、骨密度の維持にも関わっています。そして、更年期の女性においては、このエストロゲンが減少し、これにより骨密度の低下や皮膚の弾力性の低下が起こります。また、ホットフラッシュや気分の変動など更年期症状に関与しています。

エストロゲンと更年期不調の関係

エストロゲンは自律神経系に影響を与え、体温調節や気分の安定にも関与しています。そして、更年期といわれる45歳から55歳の間、月経が完全に停止するまでの期間に、年齢と共に卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌量が減少していきます。エストロゲンの減少そのものにより、自律神経系の調整が乱れ、体温調節がうまくいかなくなるため、急に顔や体が熱くなることや夜間に過剰な汗をかくことがあります。また、エストロゲンの減少は、他のホルモン(プロゲステロン、FSH、LHなど)のバランスも変化します。また、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルエピネフリン)のバランスにも影響を与え、気分の変動やうつ状態を引き起こすことがあります。

エストロゲン減少により起きる、さまざまな更年期不調の症状

エストロゲンの減少により起きる更年期不調には、身体的な不調とメンタル的な不調の症状があります。では、それぞれの症状をみていきましょう。

身体的な症状

①ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり):自律神経系の調整が乱れ、体温調節がうまくいかなくなるため、急に顔や体が熱くなったり急な発汗を引き起こす可能性があります。

②ナイトスウェット(夜間の発汗):夜間の過剰な汗を来すことがあります。

③膣の乾燥:性交痛、尿路感染症のリスクが増加します。

④骨密度の低下:骨粗鬆症やそれに伴うリスク増加

⑤肌の変化:弾力の低下、しわの増加を来します。

精神的な症状

①不眠:眠りが浅くなったり、熟眠感がなくなったり、朝早くに目が覚めることがあります。

②気分の変動:情緒不安定、イライラ、怒りっぽい、抗うつ気分、涙もろい、意欲の低下、不安感などが出てきます。

更年期

女性の健康をつかさどる女性ホルモン造りに必要な栄養と食べ物

エストロゲン・プロゲステロンの原料は、健康的な脂質

女性ホルモンであるエストロゲン(エストラジオール、エストロン、エストリオール)と

プロゲステロンはコレステロールを原料として生成されます。

健康的な脂質(オメガ-3脂肪酸)の摂取は、ホルモンのバランスを保つために重要で、これらの脂質は細胞膜の構成要素なため、ホルモンの分泌やホルモンの受け皿である受容体の機能に影響を与えます。

このように、更年期にはエストロゲンの減少により脂質バランスが崩れやすくなるため、健康的な脂質を適切に摂取することが重要です。

健康的な脂質が含まれる食べ物と摂取のポイント

ここでは、健康的な脂質とはどのような脂質を指し、体に対してどのような効果が期待できるのか、さらには、どのような食べ物に多く含まれているのか、摂取のポイントについてご紹介して行きます。

①オメガ-3脂肪酸

[効果]

炎症を抑え、心血管の健康をサポートし、気分の安定を助けます。

[食品例]

・魚類:脂肪の多いサーモン、マグロ、サバ、イワシ

・ナッツ類:クルミ

・種子類:チアシード、フラックスシード(亜麻仁)

・オイル類:亜麻仁油、魚油サプリメント

[摂取のポイント]

オメガ-3脂肪酸を手軽に摂取するには、イワシやサバ、マグロの水煮缶を選ぶといいでしょう。サラダのトッピングがお勧めです。糖質制限にもなりますし、調理の手間も省け手軽で便利です。

②一価不飽和脂肪酸

[効果]

コレステロールのバランスを改善し、心血管の健康をサポートします。

[食品例]

・オイル類:エクストラバージンオリーブオイル

・ナッツ類:アーモンド、ピスタチオ、マカダミアナッツ

・種子類:ゴマ、ヒマワリの種

・新鮮なアボカド

[摂取のポイント]

一価不飽和脂肪酸は、炒め物をする時に積極的にオリーブオイルを使うようにするとか、トッピングや料理のアクセントにナッツ類をプラスするのも良いでしょう。

③多価不飽和脂肪酸

[効果]

細胞膜の構築を助け、ホルモンバランスをサポートします。

[食品例]

・オイル類:サフラワー油、ヒマワリ油、コーン油

・魚油類:魚油サプリメント

[摂取のポイント]

多価不飽和脂肪酸は、青魚に多く含まれているため日々の食事に食用油をプラスしたり魚を使ったメニューを取り入れるなど意識してみてください。

逆に避けて欲しい脂質もあります。マーガリン、ショートニング、市販の揚げ物などの加工食品に多く含まれるトランス脂肪酸です。トランス脂肪酸はコレステロールや中性脂肪を増加させ動脈硬化や心臓病、生活習慣病のリスクを高めることで知られています。また、炎症を引き起こす物質の生成を促して、免疫細胞の機能を低下させることも知られていますので、摂取は控えると良いでしょう。

女性ホルモン造りやホルモンのバランス維持をアシストする亜鉛

亜鉛は、体内で300種類以上の酵素の構成要素として機能し、DNA合成、細胞分裂、タンパク質合成など、多くの生理機能に関与しています。

特に、亜鉛は、エストロゲンの合成に必要な酵素の活性化に関与しています。具体的には、アロマターゼという酵素の機能をサポートし、テストステロンをエストロゲンに変換する過程を助けます。また、亜鉛は、エストロゲン受容体の機能を調節し、エストロゲンの効果を高めることができます。これにより、エストロゲンが体内で効果的に働くようになります。

ですから、亜鉛不足によって、エストロゲンとプロゲステロンの合成が低下し、ホルモンバランスが乱れる可能性があり、気分の変動、疲労感などの症状が現れることがあります。

<亜鉛を多く含む食べ物と摂取のポイント>

[食品例]

・肉類:牛肉、豚肉、鶏肉

・魚介類:カキ、カニ、ロブスター

・豆類:ひよこ豆、レンズ豆、黒豆

・ナッツ類:カシューナッツ、アーモンド、ピスタチオ

・種子類:カボチャの種、ヒマワリの種

・全粒穀物類:オートミール、玄米、全粒パン

[摂取のポイント]

亜鉛は動物性食品に多く含まれています。よって、肉、魚介類を含めたバランスの良い食生活が大切です。また、コーヒーは亜鉛の吸収を阻害するとされています。亜鉛を含む食品と同時に摂取するのは避けるとよいでしょう。

まとめ

コレステロールは「脂質」だから「太る」というイメージからコレステロールの値を下げようと摂取を控える方もいらっしゃるかと思います。しかし、良質なコレステロールは女性ホルモンを造るのに一番大切な栄養素のため、辛い更年期症状を和らげるためにも良質なコレステロールをはじめ、亜鉛を含む多様な食品を取り入れ必要な栄養素をバランスよく摂取することを心がけてください。

さらに、骨密度の維持とストレス管理に役立つウォーキングや筋力トレーニングといった運動をして十分な睡眠とることもホルモンバランスを整える上で大切なポイントです。

その他、屋内でできるヨガや瞑想といったリラクゼーションや趣味の時間を持つのもホルモンバランスの維持には効果的ですので、自分にあった方法を取り入れて上手に更年期と付き合ってみてください。

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梶 尚志

梶 尚志

梶の木内科医院 院長総合内科専門医、腎臓専門医、家庭医、総合内科専門医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「体の不調」に栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行う。著書に『「え、私って栄養失調だったの?」その不調は病気ではなく状態です!』、『「えっ、うちの子って、栄養失調だったの?」その不調は食事で改善します!』(共に、みらいパブリッシング)がある。



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