慣れない環境で必死に奮闘するうちにたまってしまう心の疲れ。心を安定させるためにできる5つのこと
新年度を迎えると、自分自身や家族の人事異動や昇進、子どもの入園や入学など環境が大きく変化することがあります。慣れない環境で必死に奮闘するうちに、心や身体に疲れが溜まってしまうことも。この疲れは「五月病」を招くきっかけにもなります。そこで今回は少しでもメンタルを安定させるためにできる5つの取り組みをご紹介します。
(1)規則正しい生活をする
毎日新しいことと出会うのは、刺激的で楽しくもありますが、心や身体に負担も積み重なってしまいます。
新しい環境で頑張るためにも、家では規則正しく、安定した暮らしを心がけましょう。「代わり映えのしない平凡な生活」が理想的です。
(2)無心になって脳を休める
私たちは新しい環境に入ると、「危険のサインはないか?」と周囲を警戒します。また、万が一危険が襲ってきたらどうするかを考えつつ、安全な過ごし方を身につけるために、ほかの人の様子を観察します。
新しい環境に慣れるまで、脳は「将来」に起こりうる危険の可能性を考えてフル回転。普段以上に疲弊してしまいます。
脳を休めるために、「無心」で過ごす時間をつくりましょう。
・野菜のみじん切り
・楽器の演奏
・黙々とできる作業(編み物、パズルなど)
など、目の前にあることをただ淡々と行う時間をつくることができればOKです。
(3)自分の「内側」に注意を向ける
新しい環境では危険を避けようと思うあまり、自分の「外側」にばかり注意が向きます。しかし、それでは自分の「内側」で起こる心身の変化に気づけず、突然調子を崩してしまうかも。
「今この瞬間の自分」と向き合う「マインドフルネス」に取り組んでみましょう。なんだか難しそうな言葉ですが、実は特別なことは必要ありません。毎日の生活のなかで普段よりもじっくりと五感を意識すれば十分です。
例えば「ご飯をひとくち食べる」というときに、
・ご飯の香り
・口に入れたときの温度
・お米の粒の舌触り
・噛んだときの歯ごたえ
・噛むごとの味の変化
・喉から食道へ通っていく感覚
などをじっくり感じます。
もちろん、「お風呂に入ったとき」や「電車の吊り革につかまって立っているとき」などでも、マインドフルネスを意識して過ごせます
(4)「できたこと・成功」を記録する
新しい環境は慣れないことばかり。どうしても失敗が多く感じられ、「自分はこの場所でうまくやっていけないんだ」と落ち込むこともあるかもしれません。
ただ、私たちは成功よりも、失敗を記憶しやすい傾向があります。失敗の記憶は同じ失敗をしないための大切な情報だからです。しかし、成功の記憶は実用性があまりありません。そのため、脳は「失敗こそ重要な記憶だ!」と判断し、記憶を定着させてしまうのです。
しかし、あまりにも失敗ばかり思い出すと、新しい環境で頑張る意欲を失います。
成功を忘れてしまう脳の代わりに、「できたこと」を手帳などに記録してみましょう。失敗の記憶で落ち込んだときに見返すと、「案外できていたんだな」と、これまでうまくやれていた自分を思い出すことができます。
(5)五感でリラックスする
新しい環境に緊張している心と身体をリラックスさせるために、自分の五感がほっとするものを用意してみましょう。
例えば、
・視覚:新緑の風景、焚き火の映像、星空
・聴覚:川のせせらぎ、クラシック、小鳥のさえずり
・味覚:おかゆやココアなどやさしい味わいのもの
・触覚:やわらかなタオルケット、ぬいぐるみ、熱すぎないお風呂、整体やマッサージ
・嗅覚:アロマ、お香、入浴剤
などです。
五感の刺激しすぎに注意!
疲れを吹き飛ばそうと考えたときに「大量のお酒」「辛いもの」「大音量の音楽」など刺激を求める方がいます
気持ちを高揚させる強い刺激は、一時的に疲れを麻痺させます。しかし、疲れが回復する訳ではありません。それどころか心身が休むのを妨げ、さらに疲労を蓄積させてしまう危険性があります。本当に疲れの回復を目指すなら、刺激的なものの使用はほどほどが良いでしょう。
おわりに
新しい環境に慣れないうちは、毎日が初めて自転車や自動車を運転するような状態。
「次はどうするんだっけ」と、いつ・何を・どうすればいいかを逐一考え、恐る恐る運転し、たまに危ない思いもします。「もう運転なんてしたくない!」と思うこともあるかもしれません。しかし、そうやって取り組むうちに、いつしか身体が運転を覚えているような状態になっていきます。
慣れるまで少し苦しいですが、適度に休みを取りながら無理なく過ごしていきましょう。
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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