「ほどほどの愚痴」にはメリットがある?臨床心理士が教える、愚痴を上手にコントロールする方法

 「ほどほどの愚痴」にはメリットがある?臨床心理士が教える、愚痴を上手にコントロールする方法
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佐藤セイ
佐藤セイ
2024-03-29

「愚痴」という言葉にネガティブなイメージを持つ人は少なくありません。しかし、ほどほどの愚痴にはメリットもあるのです。今回は適度な愚痴のメリットをご紹介するとともに、愚痴を言い過ぎないために学びたい「愚痴を言わない人の特徴3つ」をご紹介します。

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「愚痴」とは?

愚痴とは「言っても仕方のないことを嘆くさま」を指す言葉です。

愚痴のなかには、

弱音 (例:「こんな自分が大嫌い」「何もかもどうでもいい」)

後悔 (例:「なんでもっと勉強しなかったんだろう」)

不満 (例:「なんでこんな会社の命令に従わなきゃいけないんだ」)

攻撃 (例:「高学歴は勉強ができても仕事はできない」)

など、さまざまな内容を含む言葉が含まれています。

これらの愚痴は、周りの人からの共感・同意を集めるために吐き出されます。具体的な解決策や変化を求めてはいない点が大きな特徴です。

つい言ってしまう「愚痴」のメリット

あまり良いイメージのない愚痴ですが、ついつい言ってしまう人は多いでしょう。なぜなら愚痴には主に3つのメリットがあるからです。

モヤモヤした気持ちがスッキリする

愚痴を言ったときに「わかる」「そうだよね」と聴いてくれる人がいると、「自分だけじゃないんだ」と感じられます。

その結果、1人で抱えていたモヤモヤした気分が晴れ、心が楽になります。

心へのダメージを減らす

愚痴を言うことで「心へのダメージを減らす」という側面もあります。

例えば、不満・攻撃タイプの愚痴は、周囲の人の責任を指摘することで、自分の責任を軽くする効果があります。

弱音・後悔タイプの愚痴も、事前に自分で自分を過度に責めることで、他者から責められたときのダメージに備えたり、他者から責められにくくしたりする効果が期待できます。

他者からの助けを得やすい

愚痴を言うと、自分が悩んでいたり、落ち込んでいたり、苦しんでいたりする状況が周囲に伝わります。

その結果、他者から助けてもらいやすくなります

愚痴を言わない人の3つの特徴

愚痴にメリットがあるといっても、あまりに愚痴ばかりだと、周りの人をうんざりさせてしまいます。愚痴を言わない努力も必要なのです。

ここからは「愚痴を言わない人の3つの特徴」をもとに、愚痴をコントロールする方法を学んでみましょう。

1)環境や状況へのアプローチを常に考えている

愚痴は、基本的に自分の「内」へのアプローチです。先ほどご紹介した通り、自分の心を整えたり、守ったりする効果があります。

しかし、愚痴を言うだけでは、自分の「外」にある環境は変わりません。愚痴を言うことで一時的にスッキリできても、苦しい状況そのものは改善できていないため、再びモヤモヤした気持ちが溜まってきます。

愚痴を言わない人は、今の自分が「外」の環境・状況にできる行動を考え、実行します。できるだけ愚痴を言わなくて良い環境に居ることを目指すのです。

2)自分と他者の境界を意識している

愚痴は、自分と他者の境界が曖昧なときに発生しやすくなります。

例えば、

■自分で高めていくべき「自信」や「自己肯定感」を他者からの評価で得ようとする

→マイナス評価を受けるのではないかと常に不安で、弱音や後悔タイプの愚痴を言いやすくなる

■他者の気持ち・考え・行動などを無理やり思い通りにしようとする

→思い通りにならない他者への不満や攻撃を示す愚痴を言いやすい

などが見られます。

しかし、愚痴を言わない人は、自分と他者の境界を意識しています。簡単に言えば「自分は自分、他人は他人」と割り切っています。

そのため、他者の言動を気にして愚痴を言うこともありません。

3)心身の健康を大切にしている

私たちは心理的・身体的な不調を抱えると、ちょっとしたことでネガティブな気持ちに襲われます。いつも以上に愚痴っぽくもなるでしょう。

愚痴を言わない人は、自分の心や身体を丁寧に観察し、必要があればケアしているため、ちょっとやそっとの出来事では調子を崩さず、愚痴を言いたくなることもあまりありません。

さいごに

愚痴は「言わない」と「言う」のバランスをとることが大事です。

どんな理不尽な状況でも愚痴を言わずに耐えていると、心や身体を壊すまで追い詰められるかもしれません。一方で愚痴ばかり言っていると、人間関係に支障をきたす危険性もあります。

メリットとデメリット両方を理解して上手に使っていきましょう。

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AUTHOR

佐藤セイ

佐藤セイ

公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。



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