「ほどほどの愚痴」にはメリットがある?臨床心理士が教える、愚痴を上手にコントロールする方法
「愚痴」という言葉にネガティブなイメージを持つ人は少なくありません。しかし、ほどほどの愚痴にはメリットもあるのです。今回は適度な愚痴のメリットをご紹介するとともに、愚痴を言い過ぎないために学びたい「愚痴を言わない人の特徴3つ」をご紹介します。
「愚痴」とは?
愚痴とは「言っても仕方のないことを嘆くさま」を指す言葉です。
愚痴のなかには、
・弱音 (例:「こんな自分が大嫌い」「何もかもどうでもいい」)
・後悔 (例:「なんでもっと勉強しなかったんだろう」)
・不満 (例:「なんでこんな会社の命令に従わなきゃいけないんだ」)
・攻撃 (例:「高学歴は勉強ができても仕事はできない」)
など、さまざまな内容を含む言葉が含まれています。
これらの愚痴は、周りの人からの共感・同意を集めるために吐き出されます。具体的な解決策や変化を求めてはいない点が大きな特徴です。
つい言ってしまう「愚痴」のメリット
あまり良いイメージのない愚痴ですが、ついつい言ってしまう人は多いでしょう。なぜなら愚痴には主に3つのメリットがあるからです。
モヤモヤした気持ちがスッキリする
愚痴を言ったときに「わかる」「そうだよね」と聴いてくれる人がいると、「自分だけじゃないんだ」と感じられます。
その結果、1人で抱えていたモヤモヤした気分が晴れ、心が楽になります。
心へのダメージを減らす
愚痴を言うことで「心へのダメージを減らす」という側面もあります。
例えば、不満・攻撃タイプの愚痴は、周囲の人の責任を指摘することで、自分の責任を軽くする効果があります。
弱音・後悔タイプの愚痴も、事前に自分で自分を過度に責めることで、他者から責められたときのダメージに備えたり、他者から責められにくくしたりする効果が期待できます。
他者からの助けを得やすい
愚痴を言うと、自分が悩んでいたり、落ち込んでいたり、苦しんでいたりする状況が周囲に伝わります。
その結果、他者から助けてもらいやすくなります。
愚痴を言わない人の3つの特徴
愚痴にメリットがあるといっても、あまりに愚痴ばかりだと、周りの人をうんざりさせてしまいます。愚痴を言わない努力も必要なのです。
ここからは「愚痴を言わない人の3つの特徴」をもとに、愚痴をコントロールする方法を学んでみましょう。
1)環境や状況へのアプローチを常に考えている
愚痴は、基本的に自分の「内」へのアプローチです。先ほどご紹介した通り、自分の心を整えたり、守ったりする効果があります。
しかし、愚痴を言うだけでは、自分の「外」にある環境は変わりません。愚痴を言うことで一時的にスッキリできても、苦しい状況そのものは改善できていないため、再びモヤモヤした気持ちが溜まってきます。
愚痴を言わない人は、今の自分が「外」の環境・状況にできる行動を考え、実行します。できるだけ愚痴を言わなくて良い環境に居ることを目指すのです。
2)自分と他者の境界を意識している
愚痴は、自分と他者の境界が曖昧なときに発生しやすくなります。
例えば、
■自分で高めていくべき「自信」や「自己肯定感」を他者からの評価で得ようとする
→マイナス評価を受けるのではないかと常に不安で、弱音や後悔タイプの愚痴を言いやすくなる
■他者の気持ち・考え・行動などを無理やり思い通りにしようとする
→思い通りにならない他者への不満や攻撃を示す愚痴を言いやすい
などが見られます。
しかし、愚痴を言わない人は、自分と他者の境界を意識しています。簡単に言えば「自分は自分、他人は他人」と割り切っています。
そのため、他者の言動を気にして愚痴を言うこともありません。
3)心身の健康を大切にしている
私たちは心理的・身体的な不調を抱えると、ちょっとしたことでネガティブな気持ちに襲われます。いつも以上に愚痴っぽくもなるでしょう。
愚痴を言わない人は、自分の心や身体を丁寧に観察し、必要があればケアしているため、ちょっとやそっとの出来事では調子を崩さず、愚痴を言いたくなることもあまりありません。
さいごに
愚痴は「言わない」と「言う」のバランスをとることが大事です。
どんな理不尽な状況でも愚痴を言わずに耐えていると、心や身体を壊すまで追い詰められるかもしれません。一方で愚痴ばかり言っていると、人間関係に支障をきたす危険性もあります。
メリットとデメリット両方を理解して上手に使っていきましょう。
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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