さやえんどう・スナップエンドウ・グリーンピース…何が違う?管理栄養士が解説
春先になるとスーパーの店頭に、鮮やかな緑色をした豆類が並びはじめます。さやえんどう、スナップエンドウ、グリーンピースはよく似た形状をしていますが、すべて同じ品種であることをご存知でしょうか?この記事では管理栄養士が、さやえんどう・スナップエンドウ・グリーンピースの違いを解説します。3種類の豆をうまく使い分けて、春のおいしさを存分に味わってくださいね。
実はすべて同じ品種!
さやえんどう、スナップエンドウ、グリーンピースはそれぞれ食べ方が異なるものの、緑色のさやに豆が入っている形状は同じです。実はこれら3種類の豆は、マメ科エンドウ属に分類される同じ品種なのです。
3種類の豆の違いは、収穫時期にあります。現在は専用の種から育てられていますが、かつては同じ種から成長させて、時期をずらして収穫していました。
もっとも収穫が早いのはさやえんどう。「絹さや」とも呼ばれており、主にやわらかなさやを食べます。さやの中の実が大きくなり、さやと実の両方を食べるのがスナップエンドウ。さらに成熟したものがグリーンピースであり、別名「実えんどう」と呼ばれるように大きく育った実だけを食べます。
実は、豆苗とエンドウマメもマメ科エンドウ属の仲間です。中華料理などによく登場する豆苗は、種から生えたばかりの新芽を食べます。豆大福やうぐいすあんなどに使われているエンドウマメは、グリーンピースを完熟させたもの。
マメ科エンドウ属の仲間を収穫時期で並べると、豆苗→さやえんどう→スナップエンドウ→グリーンピース→エンドウマメの順になります。それぞれ形が違うのに、同じ豆なんておもしろいですね!
栄養価を比べてみよう
さやえんどう、スナップエンドウ、グリーンピースの栄養価を比べてみましょう。
さやえんどう | スナップエンドウ | グリーンピース | |
エネルギー(kcal) | 38 | 47 | 76 |
たんぱく質(g) | 3.1 | 2.9 | 6.9 |
脂質(g) | 0.2 | 0.1 | 0.4 |
糖質(g) | 4.5 | 7.4 | 7.6 |
食物繊維(g) | 3.0 | 2.5 | 7.7 |
β-カロテン(μg) | 560 | 400 | 410 |
ビタミンB1(mg) | 0.15 | 0.13 | 0.39 |
ビタミンC(mg) | 60 | 43 | 19 |
100g当たりの栄養価で比べると、さやえんどうはβ-カロテンやビタミンCが豊富です。β-カロテンとビタミンCはどちらも抗酸化作用を発揮して、体を酸化させる活性酸素を除去します。そのためさやえんどうは、体の酸化が原因になる生活習慣病や老化の予防に役立つでしょう。
グリーンピースは食物繊維とビタミンB1が多めです。食物繊維には整腸作用に加えて、血糖値の上昇を緩やかにする作用があります。またビタミンB1は、糖質をエネルギーに変換する働きをサポートします。
糖質が多めの食事のときはグリーンピースも一緒に摂取すると、血糖値の上昇を抑えながら糖質をスムーズに代謝できるでしょう。ただしグリーンピース自体にも糖質が多く含まれるため、食べ過ぎには注意が必要です。
さやと実の両方を食べるスナップエンドウは、栄養価もさやえんどうとグリーンピースの中間といえますね。
3種類の豆はどれも、ひとさや当たりの重さは数g程度。栄養を十分に得るには、料理にたくさん使用してたっぷり摂取する必要があります。旬を迎えて流通量が増加している時期に、しっかり摂取しておきましょう。
おすすめの食べ方
さやえんどうは、ビタミンCを逃さないために加熱はほどほどに。またβ-カロテンは、油と一緒に摂取すると吸収率が高まります。炒め物の仕上げに加えて、さっと火を通すのがおすすめです。
スナップエンドウは、歯触りのよい食感と甘みのあるさやが特徴的。さっとゆでてサラダにすると、スナップエンドウのおいしさを堪能できます。
実は苦手な人が多い、グリーンピース。缶詰や冷凍のものは青臭さがありますが、生の状態で出回っているグリーンピースは味が濃くて甘みがあります。
生のグリーンピースでぜひ食べてほしいのは豆ご飯です。フレッシュな風味をシンプルに楽しめて、ご飯に効かせたほのかな塩味で豆の甘みも引き立ちます。豆ご飯をつい食べ過ぎてしまっても、グリーンピースに豊富な食物繊維とビタミンB1の効果で、血糖値や肥満への影響も少しは抑えられるかもしれません。
さやえんどう、スナップエンドウ、グリーンピースの鮮やかな緑色を目にすると、春の到来を感じます。旬を迎えた野菜は風味が豊かになり栄養価も高まるので、おいしい時期にたくさん食べてくださいね。
【参考文献】
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
公益財団法人 日本豆類協会「豆の種類別特徴 えんどう」
白鳥早奈英. 坂木利隆. もっとからだにおいしい野菜の便利帳.高橋書店.2011.
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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