形が違うだけじゃない!トマト缶の「ホール」と「カット」は何が違う?使い分け方は?管理栄養士が解説
トマト缶には「ホール」と「カット」の2種類がありますが、あなたは使い分けていますか?「調理が楽そうだから」とカットトマト缶ばかり選んでいないでしょうか?この記事では、ホールトマト缶とカットトマト缶の違いを管理栄養士が解説します。それぞれのトマト缶に向いている料理も紹介するので、上手に使い分けて味わい豊かな料理を作りましょう!
生のトマトとトマト缶は何が違う?
トマト缶について知る前に、まずはトマト缶と生のトマトとの違いを知っておきましょう。
トマト缶に入っているトマトと生のトマトは、品種が異なります。トマト缶に使われているのは赤系品種のトマトですが、生のトマトはピンク系品種が採用されています。
トマト缶を開けると、真っ赤なトマトが現れますね。赤系トマトは完熟してから収穫されており、味わいは濃厚でうまみも十分。果肉が厚くしっかりしている特徴があるため、加熱してもトマトの存在感が残ります。そのため加熱調理には、赤系トマトを使ったトマト缶が向いています。
一方でピンク系トマトの特徴は、皮が薄くて果肉がやわらかいこと。そのため生食するとおいしく食べられます。またトマトには、収穫後も熟成が進む性質があります。店頭で販売されるタイミングで甘くおいしい状態になるように、ピンク系トマトは完熟前に収穫されることがほとんどです。
「ホール」と「カット」の違いとは
ホールトマト缶には丸ごとのトマトが入っていますが、カットトマト缶にはダイス状にカットされたものが入っていますね。実は、両者の違いは形状だけではありません。
ホールトマト缶とカットトマト缶は、使われているトマトの品種が異なります。ホールトマト缶で使用されているのは、サンマルツァーノ種という細長い形をしたトマトです。カットトマト缶ではサンマルツァーノ種ではない、丸い形の品種がよく使われています。
ホールトマト缶に使われるサンマルツァーノ種は、手で簡単につぶせるくらい果肉がやわらか。種に酸味があるため、トマトが丸ごと入っているホールトマト缶には酸味が感じられます。しかし果肉には甘みもあり、加熱によりうまみが引き出されることから、ホールトマト缶を使うと料理が味わい深い仕上がりになります。
カットトマト缶に入っているトマトは果肉が固めで、煮崩れしにくいことが特徴です。ホールトマト缶は煮込むと形がなくなってしまいますが、カットトマト缶は形が残ります。また種がほぼ取り除かれているため、酸味が少なく果肉の甘みを感じる味わいです。トマト缶を使い分けて料理をワンランクアップ!
ホールトマト缶とカットトマト缶に使われているトマトには異なる特徴があります。上手に使い分けて、料理の味わいをレベルアップさせましょう。
ホールトマト缶は、長時間煮込む料理に使うのがおすすめです。トマト煮込みやトマトソースなどに使うと、トマトのおいしさが引き出されます。
煮込むことでホールトマトの形が崩れ、種の酸味や果肉の甘みが混ざり合い、奥深い味わいに仕上がります。加熱前に缶の中身をボウルに移して、トマトを手でつぶしてもよいでしょう。果肉と種がしっかり混ざって火の通り具合が均一になり、料理がよりおいしくなりますよ。
果肉が固めのカットトマト缶はトマトの果実感を活かすため、加熱時間を短めにするとよいでしょう。ミネストローネのようなスープの仕上げに加えてさっと加熱すると、トマトの食感や味わいが残ります。
またトマト缶は加熱しなくても食べられます。缶詰に加工する際に加熱殺菌されているため、缶を開けてそのまま食べてもかまいません。加熱せずに食べるなら、火を通すことでうまみが増すホールトマト缶よりも、酸味の少ないカットトマト缶がおすすめです。
缶ごと冷やして、冷製パスタや冷製スープにするとよいでしょう。汁気を切ったカットトマトをサラダにトッピングしたり、バゲットにのせてブルスケッタにしたりしてもおいしく食べられます。
トマト缶の「ホール」と「カット」は形状が違うだけではなく、味わいや食感、向いてる料理も異なります。賢く使い分けて、おいしいトマト料理を作ってくださいね。
【参考文献】
坂木利隆. からだにおいしい野菜の便利帳.高橋書店.2009.
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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