〈エコノミークラス症候群〉避難所や飛行機以外でもなり得る…リスクが高まる状況とは?医師が解説
肺の血管が詰まる「肺血栓塞栓症」は、重篤な場合は死に至る病気です。避難所生活などでなるものと思われがちですが、実は日常生活にもリスクは潜んでいます。発症のリスクと予防法をご紹介します。
同じ姿勢で長時間いることが「エコノミークラス症候群」の呼び名に
元旦に起こった能登半島地震は記憶に新しいところですが、地震による避難所生活でよく問題になるのが「エコノミークラス症候群」。
もともとは、飛行機のエコノミークラスの乗客に多く見られた病気であることからこの名前がつけられましたが、正式な名前は「肺血栓塞栓症」。血液の塊が肺動脈を塞いでしまう病気で、息切れや胸の痛み、失神からひどい場合は命に係わることもあります。
座りっぱなしや寝っぱなしといった姿勢で長い時間脚を動かさないことで、脚の血流が悪くなり血液の塊=血栓ができます。脚にできた血栓は血流にのって上まで来て、肺の動脈を詰まらせてしまうのです。
妊娠、高齢、などは血栓ができるリスクが大
脚に血栓ができると、どちらかのふくらはぎか太ももに痛みが出たり腫れたりします。両脚に血栓ができると両脚のふくらはぎに症状が出ることも。
血栓ができやすいのは高齢者、妊婦、肥満の人のほか、がんや糖尿病など血液の流れがと滞りやすい疾患がある人などです。基礎疾患がなくても、感染症などで発熱して脱水症状に陥っていると血液がドロドロになり、血栓ができやすくなる場合もあります。
これらの他、例えば避難所生活などでトイレの不便さから極力水分の摂取を控えている人や、ふだん血液をサラサラにする薬を飲んでいるのに飲めない、といった状況になっている場合も血栓のリスクが高まりやすくなります。
それから注意したいのがピルを服用している場合。低用量ピルは病気を予防できたり月経期を過ごしやすくなるメリットがある一方で、血栓のリスクも心配されます。ピルを服用している人で、理由が分からず息苦しくなったり脚に痛みが出たりした場合は、血栓を疑うことも必要です。
血栓の予防には体を動かしたり弾性ストッキングの着用が有効
災害時では、避難所生活とあわせて肺血栓塞栓症のリスクが高いのが「車中泊」。
避難所生活ではベッドの上で寝たままになったり、動くことが減るため運動量が減ります。また車中泊では座ったままの窮屈で脚を動かしづらい姿勢が長時間続くうえ、そうした状況による心的ストレスも大。これらは血栓ができやすくなる要因です。
避難所でも車中泊でも、時間を決めて起き上がったり散歩をするなど意識して体を動かすことが大切です。たとえ座ったままでも、足首やひざを曲げ伸ばしするだけでもリスクを下げることができます。
こうした特殊な状況でなくても、血栓のリスクがある人は弾性ストッキングの着用がおすすめ。適度な締め付けがポンプの役割を果たし、血流が滞りにくくしてくれる働きがあります。
また、気が付かないうちに脱水になっている場合もあるので、こまめに水分を摂って血液がドロドロになるのを防ぐこともポイントです。
教えてくれたのは…草ヶ谷英樹先生
草ヶ谷医院(静岡県静岡市清水区)院長。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本内科学会総合内科専門医。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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