高齢期の筋力低下を防ぐために食べた方が良いものは?今からできる予防法|管理栄養士が解説
「最近、運動していないな」「食事量が減ってきたかも」という人は、将来筋力が低下してしまうかもしれません。日常生活を送ることがむずかしくなり、さらに骨折などのケガをしたり、介護が必要になったりする確率も高まるでしょう。そこでこの記事では、”今すぐできる”高齢期の筋力低下を防ぐ方法を、管理栄養士が解説します。さっそく生活に取り入れてみてくださいね。
すでにはじまっている“筋力低下”
加齢にともない、筋力は確実に低下します。筋肉量は25〜30歳頃から低下しはじめ、生涯を通して進行すると考えられています。30代、40代でまだ元気に動けていても、運動習慣がない人はとくに要注意です。
高齢期にみられる筋力と筋肉量の低下はサルコペニアと呼ばれ、健康寿命を延ばすうえで課題とされています。筋肉が衰えると少し体を動かしただけでも疲れやすくなり、外出が億劫になったり、日常生活さえむずかしくなったりすることもあるのです。
転倒によるケガや、介護が必要な状態になる可能性も高まります。筋力が低下すると自身の生活の質が低下するだけではなく、家族などまわりの人の手を煩わせることになりかねません。
もちろん20代の頃のような筋力を取り戻すことは不可能ですが、今から生活を見直せば将来の筋力低下のリスクは回避できます。また、すでに高齢期に入っている人も筋力は高められます。食事と運動を少し意識して、筋力低下を予防しましょう!
たんぱく質を摂って筋肉量アップ!
高齢期の筋力低下の予防には、筋肉のもとになるたんぱく質を摂ることが大切です。
たんぱく質は肉、魚、卵、大豆製品、乳製品に多く含まれる栄養素。高齢期の筋力低下を防ぐには、適正体重1kg当たり1.0g以上のたんぱく質を摂取しましょう。適正体重とは「もっとも病気になりにくい体重」のことで、身長(m)×身長(m)×22の式で求められます。
歳を重ねると、脂身が多い肉を食べにくく感じるかもしれません。また調理が苦手という人もいるでしょう。たんぱく質を手軽に摂取するなら、納豆やヨーグルトがおすすめです。塩サバや魚の干物であれば、焼くだけで食べられます。卵もゆでたり焼いたりするだけでよく、調理の手間があまりかかりません。
ただし腎臓病などの病気によりたんぱく質の摂取を制限されている人は、医師や管理栄養士の指示に従いましょう。
カルシウムとビタミンDで骨を丈夫に
たんぱく質と同時に摂取を意識したいのが、カルシウムとビタミンDです。
どちらも骨の形成に必要な栄養素。高齢期の骨粗しょう症や転倒による骨折のリスクを低下させるために、今から積極的に摂るようにしましょう。
牛乳やチーズなどの乳製品を利用すると、手軽にカルシウムを摂取できますね。しらす干しもカルシウムが豊富です。ご飯にふりかけたり、和え物に加えたりするとよいでしょう。
ビタミンDはきのこや、イワシ・鮭などの魚類に豊富です。たんぱく質も摂取できるので、食卓に魚を取り入れていきましょう。
たんぱく質やカルシウム、ビタミンDの摂取は大切ですが、基本は栄養バランスのよい食事を摂ることです。さまざまな食材を取り入れながら、主食・主菜・副菜をそろえるように心掛けましょう。
体を動かすように意識することからはじめよう
高齢期の筋力低下を防ぐには、食事とともに運動も重要です。レジスタンス運動、いわゆる筋トレが有効とされていますが、運動習慣がない人はまず体を動かす機会を増やすことを意識してみましょう。
通勤で利用する駅や会社で階段を使ったり、歩幅を広くして早歩きで移動したりしてもいいですね。テレビを見ながらストレッチする、歯を磨きながら屈伸するなど、ながら運動もおすすめです。時間があればウォーキングやストレッチ、ヨガなどに取り組んでみましょう。ただし膝や腰に痛みがある人は、医師などに相談してから取り組むようにしてください。
高齢期の筋力低下は、今から対策すれば予防できます。高齢期に入っている人でも、日常生活を支障なく送れる程度に筋力をアップさせることは可能です。いつまでも元気に活動できるように、食事と運動の改善に取り組んでみませんか?
【参考文献】
厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」
長寿科学振興財団 健康長寿ネット「サルコペニア・フレイル」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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