自覚ないまま病状がかなり進んでしまうことも…骨粗しょう症になりやすい人の特徴とは?医師が解説
高齢者がなるイメージのある骨粗しょう症。骨粗しょう症とはどんな病気なのでしょうか?医師が解説します。
骨粗鬆症とはどのような病気か
世界保健機関によると「骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴としており、骨の脆弱性が増大して骨折の危険性が増大する疾患である」と定義しています。
骨粗鬆症とは、骨の強度が低下することで引き起こされると考えられており、骨の強度を規定する要因としては、骨密度と骨質が挙げられ、約70%が骨密度、残りの30%前後は骨質に影響されると言われています。
骨粗鬆症では基本的に自覚症状が乏しく、背中が丸くなる、身長が縮むなどの症状が少しずつ認められるため、いわゆる「病気」と気付かずに放置する、あるいは気付いた時には病状がかなり進行していたということも多い疾患です。
年齢を重ねるごとに身長が縮むことはよくありますが、加齢の影響だけではなく、身長低下の主な原因は骨粗鬆症であると指摘されており、本疾患では骨が脆弱になって、背骨がつぶれてしまい身長が縮むことがあります。
骨粗鬆症における初期段階では、特に痛み症状も強くなく、外観などにも明らかな変化は見られませんが、時に背中から腰部にかけて重苦しく疲れやすいという症状を自覚する場合があります。
これらの症状は、骨減少所見が背骨の領域に引き起こされやすく、脆弱化した背骨の負担を周囲の筋肉で補おうとするために、異常な緊張がかかって筋疲労が生じることによって出現します。
病状が進行すると腰背部痛が出現して、外観的にも背中や腰が曲がって円背の姿勢を呈して、身長も有意に低くなり、X線レントゲン検査でも明確に骨の粗鬆化、背骨の椎体変形、あるいは背骨が上下から押しつぶされる圧迫骨折もよく見受けられるようになります。
骨粗鬆症に罹患すれば些細なことで骨折しやすくなるだけでなく、身体全体の不調を招きかねない疾患ですので十分に注意する必要があります。
骨粗鬆症になりやすい人とは
骨粗鬆症とは、骨の強度が低下して脆弱になって、骨折しやすくなる病気であり、主に女性ホルモンが欠乏する、あるいは運動不足などに関連する生活習慣が危険因子として考えられています。
一般的に認識されている骨粗鬆症では、加齢や女性ホルモンのエストロゲンが欠乏するため、特に閉経後の高齢女性が発症しやすいと言われています。
健康な骨の維持には骨の形成や吸収といった代謝のバランスが鍵となりますが、加齢に伴うビタミンDや副甲状腺ホルモンの働きの異常性変化によって骨代謝のバランスが崩れていきます。
特に女性の場合には、閉経や加齢によって骨の分解を抑制するエストロゲンというホルモンの分泌が急速に低下する結果、骨の形成が吸収に追いつかなくなり、より骨が脆弱になる方向性へと傾きます。
これら以外にも、無理なダイエットや偏食により栄養バランスが崩れてしまうと、カルシウムやタンパク質、ビタミン群などが不足して骨量が減りやすくなります。
骨粗鬆症の治療予防策は?
骨粗鬆症における治療では、腰背部痛など疼痛症状の乏しい場合には、骨量の減少を少しでも改善して、骨折を予防することが治療の大原則となります。
背中の痛み症状などを認める際には、まずは患者さんの苦痛である疼痛症状を緩和することが基本となり、特に急性期治療では、安静、湿布、消炎鎮静剤の内服、痛み止めの坐薬などが使用されることになります。
万が一、圧迫骨折などを伴う場合には、骨折の治療が最優先となり、保存的治療で治療ができる際にはギプス固定や体幹コルセットを装着することになります。
また、大腿骨頚部骨折など手術治療が求められるケースでは、早期的に離床することを目標として、骨接合術(ヒップスクリュー)や人工骨頭置換術などの根治的治療が実施されます。
全般的に骨折を助長させるリスク因子とされている骨粗鬆症という疾患は予防が非常に重要な病気です。
カルシウムは骨の材料になっていることはよく知られていますが、実際には骨はカルシウム物質だけで構成されているわけではありませんので、常日頃からカルシウムだけでなく、ビタミンDやビタミンK類、リン、適量のたんぱく質を摂取することも必要です。
骨はタンパク質であるコラーゲン成分にカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが固着して成長しており、骨密度を高めるためにはタンパク質やマグネシウムなど主要ミネラルも十分に摂取する必要があると言えます。
まとめ
これまで、骨粗鬆症とはどのような病気か、骨粗鬆症になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。
骨粗鬆症とは、骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気であり、症状も再発しやすいと考えられています。
高齢になると骨を合成して製造する機能が低下するため、骨密度が減少して骨粗鬆症を発症しやすくなりますし、閉経後女性は女性ホルモンが低下して骨が脆弱になると指摘されています。
また、生活習慣が乱れて食事バランスが悪化すると、骨を形成するために必要なカルシウムやビタミン群など栄養素が摂取できなくなることで骨粗鬆症を引き起こしやすくなります。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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