「当たり前」から「ありのまま」へ。ゼクシィが考える、従来の枠にとらわれない「NOノーマル婚」とは

 「当たり前」から「ありのまま」へ。ゼクシィが考える、従来の枠にとらわれない「NOノーマル婚」とは
AdobeStock

かつては結婚とは「して当然のもの」「幸せの証」というイメージが強かったものの、最近では、結婚しない人も増えてきたり、事実婚やパートナーシップ制度の利用、妻の姓を選ぶカップルなど、色々な選択も可視化されています。結婚式についても“当たり前”とされてきた様式や演出に変化が見られているとのこと。2023年に30周年を迎えた、結婚情報誌『ゼクシィ』統括編集長の森奈織子さんに、結婚式のあり方の変遷や、最近の結婚式の傾向、また30周年の新しいブランドメッセージ「あなたが幸せなら、それでいい。」について伺いました。

広告

“当たり前”にとらわれない結婚「NOノーマル婚」

——結婚式のあり方はどのように変化してきたのでしょうか?

1980年頃までは「家と家の結婚」の意味合いが大きかったのですが、結婚式がお披露目の場になってきたのが1980年代からです。

結婚式のトレンド自体は、世代と時代背景の掛け合わせで約10年スパンで大きく変化しています。80年代は「派手婚」が流行し、5メートルくらいの高さのあるイミテーションケーキや、ゴンドラ入場などバブル期を象徴するような演出が見られました。「結婚するのが当たり前」「一人前の証」と人生のステップとして考えられていた時期でもあります。

1990年代に広がったのは「地味婚」です。バブルが崩壊するという時代背景もあって、挙式のみで行ったり、写真撮影のみのカップルも。お披露目することなく、2人のみで挙げる方も増えていた時期です。

2000年代はミレニアム婚ブームがありました。結婚式場もゲストハウスのように一軒家を貸切して、海外で行われているようなウェディングがブームで、結婚式をみんなでつくるようになりました。この頃は結婚が「一人前の証」から「幸せの象徴」として捉えられるようになった時代です。同時に、アットホーム婚やレストランで開催するウェディングなど、ホテル以外の場所で自分の好む形でカジュアルに結婚式を行うことが増えてきた時期でもあります。

2010年代は「繋がり婚」の時代であり、背景にあるのは2011年の東日本大震災です。演出や衣装の派手さよりも、繋がりを重視するようになった時期でした。たとえば、親子の繋がりを感じる演出として、挙式の前にお母さんにベールを下げてもらって「ありがとう」と伝えるベールダウンが生まれ始めたのもこの頃です。「結婚=家族の証明」と捉えられていて、ゼクシィとしては、そのままの2人で感謝を伝えていく「ありのまま婚」というメッセージを発信しました。

2020年以降はコロナの影響で改めて価値観の変化が起きました。結婚すること自体が当たり前ではなくなり、結婚式をするもしないも自由。「せっかく結婚式を挙げるのであったら、大切な人を招いて、自分たちらしい形で祝いの場を持ちたい」という考えから広がったのが「NOノーマル婚」です。

——「NOノーマル婚」にはどのような特徴がありますか?

コロナ以降に「ニューノーマル」という言葉がよく使われ、リモートワークやオンラインミーティングが当たり前になりましたよね。結婚式場でもオンラインで、おじいちゃんやおばあちゃんなど、遠方のゲストと繋ぎながら開催する形が生まれています。その段階を経て、ゲストとの距離がより近くなりました。

また、自分の気持ちを伝えていくことを大事にする方も増え、ゼクシィでは2022年は「推し婚」というキーワードを出していました。結婚式の演出として好きなものを入れたり、好きな人を呼んだりと、「推し」を表現し、自分たちらしく楽しむ結婚式のあり方も特徴的です。結婚式自体が「○○しなければならない」「当たり前の形式」にとらわれず、自分たちと向き合いながら「ありのまま」の形で開催していくカップルが増えているように感じます。

——演出や様式で、具体的にはどのような変化が見られていますか?

たとえば、花嫁の手紙は新郎新婦どちらも親への感謝の手紙になったり、「バージンロード」についても、「なぜお父さんと歩くことを厳守しなければならないんだろう?」と疑問を抱いたカップルが新郎新婦2人で歩いたり、謝辞も新郎だけでなく、2人で言うようにしたりといった話を伺います。

ファーストバイトも両親を交えてファミリーバイトにしたり、ケーキの代わりに2人の好みであるハンバーガーで行ったりする方も。儀式の意義や価値、目的に立ち返りながら、ジェンダーロールにとらわれない演出も出てきていますね。

今までは当然だった、主賓の挨拶や、ゲストの人数が80人であること、職場の関係者を呼ぶことといった暗黙のルールを見直す方もいらっしゃいます。もちろん、伝統的な様式を好む方もいらっしゃって、結婚式の選択肢が増えて、多様になったのが現状です。

ウェディングプランナーさんとの会話の中で希望を伺い、どのような形なら、2人らしく結婚式ができるかをプランナーさんから提案し作り、首都圏を中心に今までの形にとらわれない形式の結婚式が出てきています。当たり前になっていたことについて、新郎新婦のみなさんが疑問を持ち、モヤモヤしたことを言葉にする。それを私たちも取り上げて紹介しており、今は結婚式の形態の移り変わりの時期だと感じております。

事実婚・国際結婚・同性カップル……「誰かと一緒に生きることを決めた、全てのカップルを応援したい」

——2023年12月1日にゼクシィ30周年として「あなたが幸せなら、それでいい。」と新しいブランドメッセージを発信し、屋外広告を出されています。広告の8組のカップルの中には、同性カップルもいらっしゃいます。SNS上では「可視化したことに意味がある」「企業の苦労を想像すると嬉しい」といった肯定的な反応がある一方で「同性では限られた自治体でパートナーシップ制度があるだけで、法律婚はできないので、選びたくても選べない」「他人事感があって寂しい」といった意見も見られました。こういった声はどのように捉えていらっしゃいますか?

賛否さまざまなお声をいただき、お送りいただいたご意見はすべて拝見しています。今回のブランドメッセージの背景として、同性カップルに限らず、事実婚や国際結婚など、多様なカップルから、一緒に生きる選択をすることを踏みとどまっていることや、さまざまな悩みがあることを伺ってきました。そのため今回一新したコピーには、「誰かと一緒に生きることを決めた、全てのカップルを応援したい」という気持ちを込めています。

今後はゼクシィの記事やSNSを通じて「自分たちの幸せの形を、自分たちの意思で選択するすべてのカップルを応援していきたい」というスタンスを発信していきたいですし、結婚式場やジュエリーショップなど、ウェディングにかかわる業界の方々と一緒に、多様な結婚式を応援していきたいです。

※なお、ゼクシィの発行元であるリクルートは、2023年6月に「Business for Marriage Equality」に賛同しています。

結婚
AdobeStock

※後編に続きます。

広告

AUTHOR

雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

結婚