禁酒したいなら「ノンアルコールビール」は逆効果?管理栄養士が考える、お酒との付き合い方
近年はおいしいノンアルコールビールが増えました。本物のビールの代わりに利用して、禁酒にチャレンジしている人もいるでしょう。しかし「ノンアルコールビールでは禁酒できない」という声も聞かれます。そこでノンアルコールビールの禁酒効果について、管理栄養士が解説します。健康のためにお酒を控えたいと考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
ノンアルコールビールでは禁酒できない場合がある
ノンアルコールビールとは、アルコール度数1%未満のビールテイスト飲料のことです。ビールの風味を忠実に再現しており、アルコールを含まないにもかかわらず、本物のビールかのような味わいを体験できます。
また、禁酒とは飲酒を完全にやめる、断つことを意味します。習慣的にお酒を飲んでいた人が、いきなりすべてのお酒を断つことは簡単ではありません。しかしノンアルコールビールを上手に利用すれば、ストレスなくアルコールを遠ざけられるとされています。
しかし飲酒習慣によっては、ノンアルコールビールで禁酒できない場合があります。
週末だけ、飲み会のときだけお酒を飲むような飲酒頻度が高くない人であれば、ノンアルコールビールを利用して禁酒するのはむずかしくないでしょう。しかし連日のようにビールを飲んでいる人が禁酒する場合、ノンアルコールビールを利用すると逆効果になる可能性があります。
習慣的に飲酒していた人がノンアルコールビールを飲むと、味を思い出して「ビールを飲みたい」という欲求が呼び起こされてしまうおそれがあります。「1本だけなら…」とビールを手に取ってしまうかもしれません。ビールを飲まずに耐えられたとしても、かなりのストレスになるはずです。
飲酒頻度が高い人が禁酒する場合、ノンアルコールビールも避けることをおすすめします。参加せざるを得ない飲みの席ではお茶や炭酸水を選び、お酒からきちんと距離を取りましょう。
ノンアルコールビールは「減酒」におすすめ!
ノンアルコールビールは禁酒ではなく、減酒に利用するとよいでしょう。
減酒とは、飲酒の量や頻度を減らすこと。飲酒習慣に問題がある人の治療でも、いきなり禁酒するのではなく、減酒からはじめるケースが近年増えています。飲酒習慣に対して不安がある人のための減酒外来も続々と開設されています。
ノンアルコールビールを活用した減酒の方法はさまざまです。1日2本飲んでいたビールのうち1本を、ノンアルコールビールに変えてもよいでしょう。週2日はビールではなくノンアルコールビールだけを飲む日にする、という方法もあります。
このようにビールと置き換えてノンアルコールビールを利用すると、自然にアルコールの摂取量は少なくなるでしょう。
ノンアルコール飲料でお酒と上手に付き合おう
アルコールの摂取量を減らすメリットは、以下のとおりです。
・肝臓の負担が軽減する
・摂取エネルギーが減る
・睡眠の質が向上する
・翌日も体調よく過ごせる
・節約できる
アルコールは肝臓で処理されます。飲酒量が減ると肝臓の負荷が軽減され、肝疾患のリスクも低下するでしょう。お酒自体にエネルギーが含まれるうえに、酔いが回ると食も進みます。減酒できればおつまみの量も減り、摂取エネルギーが少なくなるため、ダイエット効果も期待できますよ。
飲酒すると、寝つきはよくなるものの夜中に目が覚めやすくなり、眠りの質は低下します。ノンアルコール飲料に置き換えれば、朝までぐっすり眠れるでしょう。二日酔いにならないため、翌日も朝から元気に過ごせます。お酒にかかるコストも削減できるでしょう。
ノンアルコール飲料を利用すると減酒できることは、大学の研究でも実証されています。この研究では、12週間の研究期間が終了したのち、8週間後も減酒効果が続いていました。
お酒には楽しさがありますが、さまざまな悪影響もあることを忘れてはいけません。「最近お酒の量が増えたかも」という人は、ノンアルコールビールで減酒に取り組んではいかがでしょうか?
【参考文献】
厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと肝臓病」
厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールの作用」
沢井製薬 サワイ健康推進課「どこからがアルコール依存症?気になるときの相談窓口『減酒外来』」
筑波大学「ノンアルコール飲料の提供で飲酒量が減少することを世界で初めて実証」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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