「お酒を飲む前に牛乳を飲むと酔わない」って本当?医師が教える、酔いを最小限にするためにできること

 「お酒を飲む前に牛乳を飲むと酔わない」って本当?医師が教える、酔いを最小限にするためにできること
Adobe Stock
甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2022-12-12

忘年会やクリスマスなどお酒を飲む機会が増える年末年始、アルコールと上手に付き合うために知っておきたいことを医師がわかりやすく解説します。今回は「アルコールを飲む前に牛乳を飲むと酔わない」という話について。

広告

飲酒する前に牛乳をあらかじめ飲んでおくと、胃に膜が張ってアルコールの吸収が遅くなるという話を耳にした経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

実際のところ、アルコールは腸管のみならず、胃からも一定程度吸収されますので、万が一空腹の状態でアルコールを大量に飲むと、すぐにアルコール成分が胃から吸収されて酔いが回りやすいと言われています。

そんな中で、事前に飲酒する前に牛乳などを飲んで胃の粘膜に牛乳の成分を取り込んでおくと、アルコールが多少なりとも胃から吸収されるのを妨げられる効果があって、少しは酔いが回るのを遅くさせると考えられています。

牛乳がアルコールから胃の粘膜を保護する効果は一定程度あるかもしれませんが、一般的にはアルコール成分で胃が荒れやすいのは原液くらい濃度が高いお酒を摂取したときと言われていますので、普段から濃いアルコールを過剰に飲まないように留意しましょう。

お酒
普段から濃いアルコールを過剰に飲まないように留意しよう。

酔わないor酔いを最小限に留めるためにできること

牛乳以外にも、飲酒後に酔わない、あるいはアルコールに伴う酔いを最小限にとどめるために実践できる事の一つに、チーズやヨーグルトなどの乳製品を摂取することが挙げられます。これらの乳製品は二日酔いの予防にも貢献できると考えられています。

通常、アルコールは胃で吸収される分は比較的少なく、およそ9割以上が小腸で吸収されることが知られています。

主にタンパク質と脂肪分が含有されている乳製品は胃粘膜に長時間とどまり、アルコール成分が小腸に流入する速度を緩徐にして、その結果として体内への吸収スピードも遅くしてくれると想定されます。

チーズ
「酒のつまみにチーズ」というのは理にかなっていた!?乳製品は、酔いを最小限に抑えてくれる可能性が。

また、お酒に含まれるアルコールは体内への吸収がとても早い物質であり、空腹の状態で飲酒すると、アルコールの血中濃度が速やかに上昇して、早く酔いが回って悪酔いにも繋がりますし、飲酒量が自然と増加して二日酔いに陥りやすくもなるので注意が必要です。

飲酒しても酔いにくくするためには、アルコールを摂取する前に脂肪成分を含んだ唐揚げやトンカツなどの固形物を摂取すると、胃の出口部である幽門(ゆうもん)部分が自然と閉まって食べ物が胃の内部にとどまりやすくなるため、アルコールの吸収も緩徐になります。

また、飲酒する前に脂肪分を含んだ食べ物だけでなく、タンパク質を含む大豆製品の冷ややっこや枝豆を摂取すれば、そのタンパク質が体内で分解されて、アルコールを代謝しやすくなることで酔いにくくなる可能性があります。

まとめ

これまで、「アルコールを飲む前に牛乳を飲むと酔わない」って本当なのか、酔わないor酔いを最小限に留めるためにできることなどを中心に解説してきました。

胃の粘膜は通常レベルに飲酒する程度では、直接的に甚大な障害を受けるわけではありませんが、飲酒する前に牛乳を飲んでおくと多少はアルコールの代謝を遅らせて酔いにくくなる可能性があると考えられます。

また、牛乳以外にもチーズなどの乳製品、あるいは脂肪分やタンパク質を含むおつまみや食べ物を事前に摂取して空腹の状態で飲酒しないように心がけて、健康的にお酒を楽しみましょう。

広告

photos by Adobe Stock

AUTHOR

甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

お酒
チーズ