てんかんとはどのような病気?発症タイミングは?発作に対して周りの人ができることは|医師が解説

 てんかんとはどのような病気?発症タイミングは?発作に対して周りの人ができることは|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-01-20

てんかんという病気について知っていますか?ご自身はもちろん、まわりで発作を起こした人がいたらどのように対処すべきか、医師が解説します。

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てんかんとはどのような病気?

てんかんとは、脳が一時的に過剰に興奮することで、意識消失やけいれんなどの“てんかん発作”を繰り返し引き起こす病気のことであり、神経細胞の電気的な興奮が過剰に発生する部位が生じ、脳のはたらきに異常が引き起こされることによって発症します。

てんかんには症状の現れ方や原因によってさまざまなタイプがあります。乳幼児から高齢者まで全ての年代で発症する可能性があり、外傷による脳へのダメージ、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病など脳の病気によって引き起こされるてんかんのタイプもあります。乳幼児や小児は原因が分からないタイプが多く、高齢者は病気や外傷によるタイプが多いことが特徴的であり、てんかんの症状は人によって大きく異なります。

多くの場合には、てんかん症状に対して抗てんかん薬の服用など適切な治療を行うことで発作を抑制し、問題なく社会生活を送ることができるとされています。

しかし、頻繁に発作を繰り返して徐々に脳の機能自体が低下していく場合には、それぞれの症状に応じて適切な社会的支援を受ける必要があります。

てんかんは、どんなタイミングで発症する?

てんかんは、脳の神経細胞が過剰な電気的興奮を引き起こすことによって起こります。過剰な電気的興奮が生じる詳細な原因は、人それぞれであり明確に判明しない部分もあります。

成人が発症するてんかんの半分弱の症例では今なお明確な発症原因は不明ですが、近年の遺伝子診断の進歩によって、てんかん発症と遺伝子との関連性が指摘されています。

症候性てんかんと呼ばれるタイプのてんかんの場合には、頭部外傷、脳出血や脳梗塞、脳腫瘍、皮質形成異常といった脳の二次的な構造的異常や脳炎などの感染、免疫の異常、または代謝の異常がてんかん症状を引き起こす原因であると考えられています。

てんかん発作に対して周りの人ができることは?

てんかんを発症すると、意識消失やけいれんなどの“てんかん発作”が繰り返して引き起こされるようになり、その発作症状の現れ方は非常に幅が広く、人それぞれです。

また、神経細胞の異常興奮が生じる部位や強さによって発作症状が大きく異なり、発作の主な分類として、脳全体が同時に巻き込まれる全般発作、あるいは脳の一部から発作が生じる焦点性発作(部分発作)に分類されます。焦点性発作は、発症部位がつかさどる機能に何らかの異常が現れるようになります。

具体的には、手や足の運動をつかさどる部位に発症した場合は手足のけいれんが生じ、視覚をつかさどる後頭葉に発症した場合は視覚や視野の異常といった症状が出現します。また、側頭葉などに波及した場合は、けいれんしなくても開眼したまま意識を失い動作が停止する、手足をもぞもぞ動かしたり口をもぐもぐさせたりするなど、外見だけでは判断しにくい意識消失発作をきたすことも少なくありません。

目の前の人がてんかん発作で突然倒れ、呼吸が止まり、顔色が土気色になっていくのを見ると誰でも慌ててしまいますが、落ち着いて行動することが重要です。

けいれんが体の一部に留まり、全身に拡がらない時は、本人の安全に気をつけて、そのまま様子を見るようにするとよいですし、全身にけいれんが起きた場合でも、通常であれば1分~数分前後で発作は収まり、その後は数十分以内に意識が回復することが多いです。

けいれんが長時間にわたって止まらない時や意識が戻らないうちに再びけいれんが起きる場合は、すぐに治療を受ける必要がありますので、早期的に病院に連れて行きましょう。

目の前の人がてんかん発作を起こした際には、周りにいる人は、本人を危険な場所(道路、階段など)から安全な場所に移動させてあげてください。

また、本人を横にして、周囲の危険物を除き、てんかん発作によって体を打撲しないように配慮する、呼吸しやすいように服のボタンを外してベルトをゆるめる、あるいは発作が起こった時刻や継続時間を確認して、てんかんの様子を観察することを心がけましょう。

てんかん
本人を横にして、周囲の危険物を除き、てんかん発作によって体を打撲しないように配慮する、呼吸しやすいように服のボタンを外してベルトをゆるめるなどてんかんの様子を観察することを心がけましょう。
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まとめ

これまで、てんかんとはどのような病気か、どんなタイミングで発症するか、またてんかん発作に対して周りの人ができることなどを中心に解説してきました。

てんかんは、発症原因がはっきり分からないケースも多く、確立した予防方法は現在のところありませんが、てんかんと診断された場合は抗てんかん薬の内服継続など適切な治療を続けていくことで発作をコントロールして社会生活を送ることが可能です。

明確な症状がないからといって治療を自己中断すると、思わぬ場面で発作が再発して発作が止まらなくなる状態に陥る場合もありますし、肺炎、外傷などの危険な合併症や交通事故などを起こす可能性があるため、必ず専門医と相談しましょう。

目の前の人がてんかん発作で突然倒れても、発作時には周りの方々は落ち着いて行動することが大切であり、その発症様式や発作が起こった場所や時間を記録する、あるいは発作時や発作後にしばらく本人の様子観察を怠らずに継続することが重要なポイントです。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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