〈体調不良時の疑問〉発熱と嘔吐が同時にある→水を飲んでも良い?飲まないほうが良い?専門家が解説

 〈体調不良時の疑問〉発熱と嘔吐が同時にある→水を飲んでも良い?飲まないほうが良い?専門家が解説
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発熱と嘔吐の症状が同時に起きたとき、水を飲んだ方が良いのか、飲まない方が良いのか、迷う人も多いようです。この記事では、発熱と嘔吐が同時に起こった場合の対処法を解説します。

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発熱と嘔吐が同時に起こる病気とは?

発熱と嘔吐が同時に起こる場合、「感染性胃腸炎」という病気が疑われます。感染性胃腸炎とは、ウィルスや細菌などの病原体に感染し、発熱、下痢、腹痛、悪心、嘔吐などの症状を起こす病気で「おなかのかぜ」とも呼ばれます。

感染性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスなど、ウイルスの感染による場合が多く、毎年秋から冬にかけて流行します。また、カンピロバクターやサルモネラなどの細菌が原因となることもあります。それぞれの感染症と症状は次の通りです。

●ノロウイルス感染症……乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層に急性の胃腸炎を引き起こします。激しい嘔吐と下痢が起こり、頭痛、発熱、のどの痛みなど、かぜと似たの症状が現れることもあります。冬場に多く発生し、11月頃から流行がはじまり12〜2月にピークを迎えます。

●ロタウイルス感染症……乳幼児をはじめ子どもに多い感染症です。例年2〜3月が感染のピークとなります。ほかのウイルス性胃腸炎にくらべて下痢や嘔吐の症状がはげしいことが多く、入院が必要となるケースもあります。

●アデノウイルス感染症……アデノウイルスは、かぜのウイルスの一つで、38℃以上の発熱、嘔吐、のどの痛みのほかに、目やにや充血などの症状を引き起こすこともあります。感染力が非常に強い感染症です。

●カンピロバクター感染症……とくに鶏肉からの感染が多い感染症です。また、不衛生な飲料水、犬や猫などのペットなどから感染することもあります。下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などの症状を引き起こします。 多くの患者は1週間ほどで治癒します。

●サルモネラ感染症……牛、豚、鶏などの食肉、卵などから感染します。犬や猫などペットから感染することもあります。吐き気、腹痛、38℃前後の発熱、下痢などの症状が起こり、感染すると長期にわたり保菌者となることもあります。

胃腸炎
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発熱と嘔吐が同時に起こったときの対処法

発熱や嘔吐が起こる病気の原因を正確に特定するには、医師の診察が必要ですが、一般的に、胃腸のトラブルによって嘔吐や下痢をしたり、発熱で大量の汗をかいたりすると、体内の水分が少なくなって脱水症状に陥る危険があります。

脱水症状は、ぐったりする、めまい、ふらつき、頭痛、悪心、意識障害、痙攣を起こすなどで、重症化するとショック状態を引き起こすこともあります。そのため、発熱と嘔吐の症状が同時に起きた場合、脱水症状を防ぐために水分を摂る必要があり、水を飲むべきか、飲まないべきかという点で言えば、“水を飲んだ方が良い”ということになります。ただし、水を飲んでも再び嘔吐するような場合は、30分ほど水を飲まず様子を見ますが胃が飲食物を受けつけない状態だからです。その後、吐き気や嘔吐が治まってきたら、少量ずつ水を飲み、さらに嘔吐が起きなければ、水を飲む量を増やしていきます。急性の胃腸炎の多くは自然治癒が期待できるため、水分補給を行い、脱水症状を予防しながら、症状が治まるのを待つのが一般的な対処法です。水や湯冷ましでも構いませんが、スポーツドリンクや経口補水液のほうが良いでしょう。

子どもの場合の対処法

子どもの場合は、嘔吐すると水を飲みたがるのですが、一度吐いた後、ケロっとしているようであれば、水を飲ませても構いません。もし、嘔吐が治まらないようであれば、30分ほど水を飲ますのをやめて様子をみてください。30分間吐かなければ、ペットボトルのキャップ1杯分(7.5ml)ほどの水を飲ませます。吐かなければ5分後にもう1杯分、さらに5分後にはキャップ2杯分……というように、吐かないことを確認しながら、少しずつ水の量を増やしていきます。コップ半分くらいの量を飲んでも吐かないようであれば、欲しがるだけ水を飲ませても良いでしょう。

受診する必要は?

発熱や嘔吐の原因にはさまざまな病気が考えられ、基本的には医療機関を受診する必要があります。不調や不安を抱えたままにせず、早めに相談して対処することをおすすめします。とくに、吐き続けてぐったりしている、尿の出が悪いなど、脱水症状を起こしているかもしれない場合は、早めに受診してください。なお、症状が起こり始めたときに、市販の解熱剤や止瀉薬(下痢止め)などを服用すると、症状が悪化する場合があります。発熱が起きるのは、体内に侵入したウイルスや細菌を弱らせたり、増殖を抑えたりするための正常な防御反応です。また、下痢は体内の毒素を体外に排出するためで、無理に止めようとすると体内に毒素が留まってしまいます。いずれも、病気の回復を遅らせてしまう可能性があるため、注意してください。

まとめ

発熱と嘔吐が同時に起こる場合、原因の一つとして考えられるのは、細菌やウイルスなどによる感染性胃腸炎です。基本的には、脱水症状を防ぐために、水分を補給したほうが良いでしょう。ただし、水を飲んで嘔吐を繰り返すような場合は、30分ほど時間を空け、様子をみながら少しずつ水分を摂るようにしてください。嘔吐の症状がはげしい場合や脱水症状を起こしている場合は、医療機関を受診し、輸液(点滴)による処置などを受けてください。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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