意外!階段の下りは身体の負担が大きい?【階段下りの長所と短所】を理学療法士が解説
運動のために階段を利用ことは良いことです。でも下り階段は身体に負担だと考えた方が安全かも?その理由を理学療法士の堀川ゆきさんが教えてくれました。
階段の下りは身体に良い?悪い?
日々の運動不足解消のために、通勤・通学時に駅などの階段を積極的に利用しようとしている人は少なくないと思います。私もその一人です。そのように健康のために階段を利用することはとても有益ですが、それは上り階段に限ったことかもしれません。今回は階段の下りのメリットとデメリットをお話しようと思います。
階段の下りのメリット
・階段上りよりも筋トレ効果がある
・血糖値の上昇を抑え糖尿病予防になる
・骨を刺激し骨粗鬆症対策になる
階段を上るのは立派な有酸素運動ですが、下りはエネルギー消費はあまり多くないため、有酸素運動としての効果は下がります。しかし、階段を下る動作は、筋トレとしての効果が意外と高いのです。NHK「みんなで筋肉体操」で有名な谷本道哉准教授は、階段の下りを推奨しています。階段を下る際には、着地の衝撃を筋肉が受け止めて、そのダメージが筋肉に微細な損傷を与え、これが「筋肉痛」となります。実際に、階段を上るよりも下ったほうが翌日に筋肉痛を起こします。筋肉痛を引き起こす階段下りの刺激が、筋肉を発達させ鍛えてくれるのです。また、階段を降りる動作を続けると、血糖値の上昇を抑える働きが高まるという報告があります。階段の下りは、素早く力を発揮する「速筋」が優位に働くため、速筋が鍛えられる結果、糖尿病の予防や改善に効果的となります。さらに、階段の上りの時よりも下りでは骨に刺激がより入るので、骨粗鬆症の対策にもなります。
階段の下りのデメリット
・膝など関節に負担がかかる
・捻挫や転倒のリスク
階段の下りは、実は腰や足首、特に膝に大きなストレスがかかります。理学療法士向けの専門書を数多く出版されている理学療法士の園部俊晴先生も、職場の8階の病棟までは階段で上りるそうですが、下りは膝の負担を避けるためにエレベーターを使うそうです。また、あのメジャーリーグのイチロー選手も、階段の下りをできる限り使わないようにしていたとも言われています。理由は足を滑らせて捻挫の可能性を防ぐためだそうで、階段を使わずスロープで上り下りをしていたようです。また、駅構内のエスカレーターは、上りエスカレーターを優先して設置しているところがほとんどです。これは私個人の意見ですが、膝など関節への負担や、捻挫や転倒などケガのリスクを考慮するなら、本来は上りではなくすべて下りエスカレーターに切り替えるべきではないか、なんて思っています。もちろんそんなことになったら、通勤や通学時の駅の上り階段だけで疲弊してしまい、職場や学校に着く頃にはみんなグッタリしていることでしょう(笑)
階段昇降にオススメの筋トレ
階段の上り下りとも必須の、大殿筋と大腿四頭筋。その2筋を鍛える簡単で易しめの筋トレを紹介します。両足を縦に30センチほど開きます。後ろ脚はつま先を床につけて踵は浮かせて、膝は緩んだ状態がスタートです。そこから後ろ脚の膝を伸ばして力を入れます。後ろ脚のお尻(大殿筋)とももの正面(大腿四頭筋)にキュッと力が入ったのを自覚しながら、10秒キープ×5回を両脚行います。
まとめ
運動のために階段を利用することは良いことです。しかし、有益なのは上り階段だけと考えた方が私は安全なのではないかと思います。それでも下り階段で先程述べた効果を狙うなら、ケガを回避するためにもスピードをゆっくりにして、一歩一歩確実に下りるようにしましょう。ゆっくり下りた方が、しっかりと筋肉に負荷がかかるので筋トレ効果もあがります。試してくださいね。
参考:
谷本道哉「新装版 学術的に『正しい』若い体のつくり方ーなぜあの人だけが老けないのか?」中央公論新社,2020
園部俊晴「健康寿命が10年延びるからだのつくり方」運動と医学の出版社,2017
AUTHOR
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。
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