大切な人を亡くした人に、私たちができること。そして、してはいけない行動|臨床心理士が解説

 大切な人を亡くした人に、私たちができること。そして、してはいけない行動|臨床心理士が解説
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佐藤セイ
佐藤セイ
2023-12-16

日常から「死」というものが遠ざけられている昨今、大切な人を亡くす苦しみは十分に理解されていません。嘆き悲しむ遺族を前に、手を差し伸べたい気持ちはあっても「どうすれば傷つけずに支えられるのか」に悩んでしまう人も多いでしょう。そこで今回は、大切な人を亡くした遺族に私たちができるグリーフケアと避けるべき行動を解説します。

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グリーフケアとは?

グリーフとは

グリーフ(grief)は「悲嘆」を意味する英単語ですが、現在では「大切な人を喪失したストレスがもたらす心や身体などの反応」という、広い意味合いで用いられています。

大切な人との別れによるストレスは大きく、次のような反応を引き起こします。

・心の反応:悲しみ、抑うつ、不安、怒り、罪悪感、孤独感、絶望など

・身体の反応:不眠、食欲不振、免疫機能や内分泌機能の低下など

・行動の反応:強い緊張、過活動、生活習慣の乱れ、人と交流しないなど

多くの場合、大切な人を偲び、悲しみに浸る「喪」の期間を経て立ち直っていきますが、人によっては何年も悲しみを抱え続ける場合もあります。死別後は心身の病気や自死のリスクも高まるため、周囲の人のサポートが必要です。

グリーフケアとは?

グリーフによって日常生活が妨げられている人に提供されるのが「グリーフケア」です。「グリーフサポート」と呼ばれたり、死別を意味する英単語「ビリーブメント(bereavement)」から「ビリーブメントケア」と称されたりすることもあります。

グリーフケアの定義はさまざまですが、遺族が、

・喪失した現実を受け入れる

・大切な人の喪失による感情を消化する

・喪失後に起こる問題を乗り越え、生活に適応する

・大切な人を思い出しつつ、残りの人生を歩んでいく

といった課題を乗り越えるためのサポートであると考えられています。

遺族
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私たちにできるグリーフケア

大切な人を失って悲嘆に暮れるのは自然なこと。しかし、何もできずに苦しむ遺族を見ているのはつらいですよね。ここでは、遺族が喪失を受け入れ、乗り越えるまでの時間を支えるために、私たちにできるグリーフケアをご紹介します。

情緒的サポート

「情緒的サポート」とは、遺族に寄り添い、話を聴くことで、遺族の悲しみや絶望をほんの少しだけ一緒に抱えるケアのこと。

話を聴くときには、以下のポイントに注意しましょう!

【話を聴くポイント】

・「あなたのことが気にかかっていましたが、最近はいかがですか?」など、心配している気持ちを伝える

・「〇〇さん(亡くなった人)のことを聴かせてもらってもいいですか?」など、確認した上で話を聴く

・つじつまのあわない話や以前聞いた内容とは違う話があっても聞き流す(間違いなどを指摘しない)

・感情や話したい内容をそのまま受け止める

基本的には、の人が話したいことを受け止めればOK

遺族が話したいこと以上の内容を無理に聞き出そうとしたり、話してくれたことを否定・矮小化したりしないことが大事です。

道具的サポート

大切な人の喪失という大きなストレスと深い悲しみを抱えた状態で、喪失に関する手続き(金融機関や自治体などでの手続き)を行ったり、行事(葬儀や法要など)を取り仕切ったりするのは非常に大変なことです。

これらの手続きを直接的に手伝う「道具的サポート」も、グリーフケアのひとつになります。

やってはいけない対応

大切な人を亡くした遺族にやってはいけない対応についても知っておきましょう。

その1:遺族を傷つけるワードで話す

遺族を傷つけてしまうワードを確認してみましょう。

・励まし:がんばってね

・比較:あなたより大変な人もいる

・回復の確認:気持ちの整理はついた?

・回復の強要:あなたがしっかりしなきゃだめ

・自分の気持ち優先:私まで悲しくなるからそんなに悲しまないで

・安易な同調:あなたの気持ちはわかるよ

・決断を迫る:そろそろ納骨したら?遺品を整理したら?

・死の意味の押し付け:きっと安らかに成仏したよ

・喪の形の押し付け:〇〇家の法事はこうすべき!

「元気づけたい!」という善意からの言葉であるケースも少なくありません。しかし、これらの言葉は、遺族の悲しみや苦しみを否定し、軽く扱ってしまっています。

その2:死の状況を詮索する

「どうして亡くなったの?」

「どこで亡くなったの?」

「なんで病気が悪化するまで気づかなかったの?」

「亡くなった様子を聞きたいのでお電話ください」

など、亡くなった原因や状況などを質問し、詮索するのはやめましょう。

詮索しても自分の「知りたい」という欲求が満たされるだけで、遺族のためにはなりません。対応のための余計な手間をかけてしまいますし、質問されるたびに悲しい別れを思い出して苦痛が増すこともあります。

参考文献

・坂口幸弘(2022)増補版 悲嘆学入門 死別の悲しみを学ぶ 昭和堂

・島薗進・鎌田東二・佐久間庸和(2019)グリーフケアの時代「喪失の悲しみ」に寄り添う 弘文堂

・大西秀樹(2023)遺族外来―大切な人を失っても 増補版 河出書房新社

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佐藤セイ

佐藤セイ

公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。



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