「感情ではなく、正しい知識を知った上でケアを」ピルオンラインサービスOops WOMBの思い

 「感情ではなく、正しい知識を知った上でケアを」ピルオンラインサービスOops WOMBの思い
Oops WOMB

今回お話を伺ったのはピルのオンライン診療サービスを展開するOops WOMB(ウープス ウーム)のブランドマネージャーを務める小川友菜さん。「ピルは飲まない方がいい」「生理痛はセルフケアで治るだろう」という"なんとなく"の感覚に頼るのではなく、正しい知識を持ってピルをもっとポジティブにアクセシブルな選択肢として届けたいと話します。サービスに込められた思いや、Oops WOMBだからこそ叶えられる診療体験についてお伺いしました。

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どんな目的であれピルを飲むということをポジティブな選択肢にしたい

– Oops WOMBのお話を聞きたいと思ったのは、最初にサイトを見た時に、世界観が素敵だなと思ったのがきっかけです。パッケージのデザインやサイトがポジティブな雰囲気で、「これならピルを試してみたい」と思う印象を受けました。ブランドが発足したのは、いつですか?

小川さん: ありがとうございます!ローンチは2023年8月1日です。

– では、まだ始まったばかりなんですね。

小川さん: そうなんです。ありがたいことに、ご利用くださる方も順調に増えております。おっしゃられたように、パッケージもサイトも、わりとポップな色使いだったり、イラストだったりを施しているので、「純粋に気分が上がる」というユーザーの方も多く、そこは皆さんに響いてるポイントなのかと思います。

– ブランドに込められた思いを教えていただけますか?

小川さん: はじめにブランドをつくってきたメンバーで座談会をして、「子宮まわりって不安とか痛みとか不快感がつきまとうものだよね」っていうところからスタートしました。そんな”子宮まわり”に少しでもピースを届けたい、という思いを込めています。

–子宮まわりの不安や痛み…数え切れないほど身に覚えがあります(笑)。小川さんご自身も、不安や痛みを経験したことがありますか?

小川さん: 私は、20代入ってすぐの頃にピルを飲もうか迷っていたことがあったのですが、周りからあまり良い反応を受けず、躊躇したことがありました。そのあとに偶然妊娠して、出産を諦めるという経験をしたんです。あとになって、あの時ピルがもっとポジティブなものとして世の中にあったら、私の選択も違ったかもしれないと思いました。ピルを自分のために飲むのは、どんな理由であれ、どんな目的であれ、もっと社会に受け入れられるべきだと感じています。

– そうだったんですね。その後に、ピルを飲みはじめたんですか?

小川さん: 実は、その後もしばらく躊躇してピルを避けていました。ピルを飲んで積極的に避妊することを自分で受け入れるのにも時間がかかったんです。

– なるほど。ピルを飲み始めたのは、何かきっかけがあったんですか?

小川さん: もともと生理痛がかなり重かったんですが、痛み止めで凌いでいたら、とうとう子宮内膜症(※)になってしまって。それがきっかけでピルを始めました。「痛みがあるなら、悪いこと言わないから飲んどいた方がいいよ」くらいに誰かに言ってほしかったですね。(笑)だからこそ、Oopsを通してピルを自分のために取り入れるのは絶対的にポジティブなことだよと伝えながらピルを届けたいと思っています。

※子宮内膜症:子宮内膜症とは 子宮内膜またはそれに似た組織が何らかの原因で、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患。(参考: 公益社団法人 日本産婦人科学会

– 実は私がピルの存在を知ったのは、20歳を越えた時。今から12〜3年前だったんですが、その頃生理痛が結構重くなってきていて試してみたいと思ったんですよね。だけど、当時オンラインで手に入るものではなかったんですよ。婦人科にわざわざ行かなくてはいけなかった。けどまだ若かったし、婦人科に行くことに抵抗感があったというか...だから、ピルって、すごく敷居が高いものでした。

小川さん: おっしゃる通りだと思います。特に生理の悩みが重くなりはじめる頃や、性行為をする機会が増えてきて、けどまだ出産は考えていないというピルを必要とする年頃って、婦人科にはまだ行ったことがないという方も珍しくないんですよね。若い世代にとって、婦人科に行くことの心理的なハードルって、すごく高いのではないかと思うんです。もちろん、子宮や卵巣の状態を確認するなどはオンラインではできないので、自分の状態を正しく知るには、婦人科の受診も必要。だけど、まずはオンラインで相談してみる、ピルをはじめてみる、という手軽さを入り口にできたらいいなと思っています。手軽さだけでなくポップなデザインや、ポジティブなイメージも含めて、ピルに対する抵抗感をさげることができたらいいなと思います。

子宮との日々を送るすべての人に届けたい

– Oops WOMBのパッケージは、本当にポジティブな印象を持つようなデザインで、見ていてすごく明るい気持ちになります。特に素敵だと思ったのは、パッケージには色々な方のショーツのイラストが描かれていて、その中にトランクスショーツもありますよね。それはすごく魅力的だなと思いました。

小川さん: 気づいていただいて、ありがとうございます! イラストは全部で6種類あるんですけど、トランクスのイラストはとくに好評。サイトトップの女性のおなかから下あたりにフォーカスしたビジュアルも、パッケージのイラストも、体型だったり、肌の色だったりも含めて、いろんな人物像が表現されているんです。「女性」という言葉を便宜的に使いましたが、わたしたちのブランドは、女性のため、というより子宮との日々を過ごすすべての人のため、という考え方。きっとピルを取り入れる人たちの中にも、いろんな人物像があるよねということを大事にしました。

Oops WOMB
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– その通りですね。

小川さん: ピルを飲んで、こういう悩みが解決できるよっていう話をする時に、今の世の中では「働く女性」とか「ブルーな女の子の日」みたいなイメージとくっついて語られる場面も多く、そういったところにも違和感を感じているんです。そもそも、そこの人間像と悩み自体は、切り離したいと考えています。ピルを取り入れる人には色々な理由があるし、色々な人間像があるっていう考え方をOopsでは大切にしています。

– ブランドネームも、とても面白いですよね。日本語で言うと「おっと、子宮」じゃないですか。これには、どんな思いが込められているんですか?

小川さん: 「Oops」はもともと、「Oops LOVE」というED(勃起障害)のお薬をオンライン診療で届けるというブランドと、「Oops HAIR」というAGA(男性脱毛症)のためのオンライン診療サービスからはじまり、「Oops WOMB」は、第3段目ブランドとしてスタートしました。「Oops」には、相談しにくい悩みをオンライン診療っていう手軽さとブランドの明るくポジティブな世界観で「Oops(おっと)」くらい軽やかに向き合えるものにしたいという思いが込められています。

– 素敵ですね!「WOMB(子宮)」の方はどうでしょう?

小川さん: ブランドの根本である、子宮まわりの不安や不快感や痛みなど、そういう悩みに寄り添うブランドということで、ど真ん中かつニュートラルなWOMBというブランド名に落ち着きました。

ピルを納得してはじめてもらうためにこだわったポイントとは?

– Oops WOMBさんのピルのオンライン診療サービスで、誇っているところはどんなところですか?

小川さん: 私たちは、LINEでの個別相談を受け付けているんです。体調のことだったり、ピルについて悩んでいるということだったり、始める前も始めたあとも、気になることがあればLINEでお問い合わせいただけるようになっています。

– 相談にお答えするのは、医師の方なんですか?

小川さん: 医療に関わらない内容、例えば配送に関する質問などはカウンセラーがお答えします。医師の判断が必要な質問は、医師から直接もしくは、カウンセラー経由でユーザー様にお伝えしています。

– それってオンラインならではですよね!

小川さん: そうですね。例えば、ピルをはじめようか迷っているという方が納得してはじめるには、丁寧なコミュニケーションがないとできないことなのかなと思うんです。

– 確かに、病院などでは、診療時間が決まっているから、そこまで丁寧に話は聞いてもらえませんよね。時間が押している時とか、「質問はありますか?」と聞いてもらえないときもあって、「まだ話したいのに…」と思ったり。診療が終わってから、これも聞きたいと思うこともあって電話してみたら「じゃあ来院して下さい」とか言われたりして…(笑)

小川さん: LINEで一時相談して、医師と話して、結論を持ち帰る方もいらっしゃいます。先生に言われたことだけじゃなくて、自分なりに調べて、悩んで納得してから始めたいっていう自然なインサイトに寄り添えるのはオンラインならではだと思っています。迷われている間も、LINEで相談していただけますし、時間をかけてお客様とコミュニケーションをとって、その上で納得してピルをはじめていただくのは、対面診療だと逆に難しいですよね。LINEでのやり取りを重ねたうえで「不安が解消された」「納得できた」というお声をいただくと、良かったなと思いますね。

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–  大切なことだから時間をかけて決めたいという気持ちをお持ちの方は多いかもしれませんね。

小川さん:はい。診察内容も大事だと思っていてピルはいくつか種類があるのですが、Oopsの診察を受けてくださる方の中には、以前に婦人科でピルを処方されたけれど、なんで自分がそれを処方されたのか分からないという方も結構多いんです。もちろん最初から「これが絶対に合う」っていうのを言い切るのは難しいんですが、どんな効果を重視するのか、どんな特徴をより自分に必要と感じるかというところを、医師がきちんとヒアリングしたうえで、「それなら、まずはこれから始めてみましょうか」というかたちでピルの種類の提案までしています。

– 私も何度かピルを飲んだことあるんですけど、実は私の場合は何のピルを飲んだか分からないです(笑)種類とかの話もなかったと思いますし、「じゃあこれを飲んで下さい」というように出されたものを受け取ったという感じでした。

小川さん: そういう方も結構いらっしゃいます。もちろん、どのピルでも、基本的には同じような効果が得られますが種類によって、それぞれ特徴があります。それに、そもそものホルモンの分泌量やバランスは人それぞれなので合う、合わないというケースも臨床的にあります。種類選びまで医師が向き合ってくれる診療体験ってあんまりなかったのかなと思うんです。

感情の上ではなく、正しい知識の上で自分をケアする

– 生理まわりのお悩みについて「セルフケアで解決すべき」という考えを前提にピルに対してのイメージに肯定的出ない方、ピルを不自然なものだという風に考える方もいると思います。こうしたピルを届けるサービスを展開する側として、それについてはどうお考えですか?

小川さん:まさに、そこから変えていきたいと思っています。薬って、不自然なもの、基本的に悪いもの、よっぽどの時にしか飲まないものってイメージも強いですよね。もちろん個人の価値観として薬を避けるという考え方もあると思うんですけれど、社会全体にそういうイメージがあると、選択肢が勝手に遠ざかってしまうっていうことはあると思っているんです。

私個人の話として、生理痛が重かったし、貧血もあって、毎回の生理が本当に辛かったんですけど、なぜかピルはやめておいた方が良い気がしていて。結局悪化してしまい、痛み止めも完璧に効かない、2時間半すぎると痛み止めが切れて痛みが再び始まるので、次のを飲まないとやってられないという状態になってました。もし、薬を飲むタイミングを逃したり、手元にない時には寝込むし、悶えて泣き叫んで、気絶するっていうところまでいきましたね。

– それは辛すぎますね...。

小川さん: それなのに「自然に生理がくるってなんかありがたいし、このままの方がいいかな」と思い込んでいたんですよ。「ピルでコントロールすることは不自然」「体に悪いこと」という”なんとなくの感覚”は、正しい知識がないから抱いていたものだったなと今は思います。

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– 実は、私も波はありますが生理痛が結構ある方で。運動も食生活もかなり気を使っている方だし、冷やさないようにもしているんですけど、セルフケアだけでは限界があるのかなって思うんですよね。

小川さん: 私も、筋トレして、毎日走って、お風呂にも毎日浸かって、料理もしっかりして、とすごく気をつけていたときも生理痛だけは毎回辛かったです。「温めて、食生活も気をつけて、適度に運動することが大事」ってよく聞くと思うんですけど、それで生理痛がゼロになる方ってすごく少数ではないかと思います。なぜかと言うと、生理痛の原因は、はがれ落ちた子宮内膜を血液と一緒に経血として押し出すために子宮の収縮が起こるから。子宮内膜が産生するプロスタグランジンという物質が子宮を収縮させます。子宮内膜の量が多いと痛みは強くなりやすいということなのですが、じゃあ生活習慣を変えたらホルモンの量が減って、子宮内膜の量が減っていくかというと、そんなことないですよね。

– 確かに。

小川さん:これぐらいなら我慢したほうが良い、これくらいなら薬に頼った方が良いみたいな医療へのハードルは正しい知識に基づいてないことも多いのかなと思います。ポジティブにライトに届けるっていうだけじゃなくて、正しい知識と一緒に届けていくっていうのは頑張っていきたいポイントですね。皆さんのセルフケアの文脈の中に、医療に頼ること、ピルを取り入れることも入ってくるといいなと思います。

– 確かに、医療っていうのは特別なものとして思いがちですが、本来は医療って私たちみんなが受けることができるものですもんね。医療に対するハードルを自分からさげていくことが出来たら、ハッピーな人も増えて、もっと世の中がよくなるような気がします。

小川さん:そうですね。医療って、広く捉えると、QOL(生活の質)をあげましょうっていうものでもあると思っていて。生活できないレベル、とかじゃなくて、今よりもっと過ごしやすくなる、ということのために取り入れて良いものなんですよね。そうやって自分たちの生活に身近に寄り添ってくれるものが医療だと思えるようになるといいなって思います。

 

インタビュー後編では、運動している人におすすめの「おりものシート」についてお伺いしました!おりものシート開発の裏話や、「毎日つけたい」と思えるほど快適なおりものシートの秘密について伺っています。

取材協力: Oops WOMB ブランドマネージャー 小川友菜

1996年生まれ。2019年に新卒で入社した企業で、美容ブランドの起ち上げや新商品の企画制作、SNS運用などを担当。2023年に株式会社SQUIZにジョイン。重い生理痛をはじめ、子宮まわりの病気や妊娠・中絶など、自身がさまざまな不安や悩みを経験したことから、Oops WOMBをローンチ。趣味はランニング、特技は起きて15分で家を出ること。

Oops WOMB:公式HP

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AUTHOR

桑子麻衣子

桑子麻衣子

1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。



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