【今の時代は当たり前!?】婦人科医が解説!生理を4ヶ月に1度だけ起こす最新ピル、メリットと注意点
生理前におこるPMSや生理痛などの辛い症状に悩まされ、大事な試験や重要な仕事の場面で実力を発揮できない……ということ、ありませんか? 生理周期によっておこる女性特有の心身の不調を解消するために「4か月に一度だけ生理をおこすピル」が今、注目を集めています。そこで『女性の悩みはFemtechで解決! オトナ女子のためのカラダの教科書』(宝島社)の著書である婦人科医の松村圭子先生に、生理とピルについて詳しく教えていただきました。
4ヶ月に1度の生理周期になるように設計されたピルで「生理痛」から解放される!?
女性の体は毎月、妊娠に備えて機能し、卵巣では、妊娠の準備をするためのエストロゲンと、妊娠を維持するためのプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが作られています。排卵前になると、卵巣からエストロゲンが多く分泌され、子宮内膜を厚くします。排卵後は、プロゲステロンが多く分泌され、厚くなった子宮内膜を柔らかくし、赤ちゃんのためのベッドを作ります。このベッドは妊娠が成立すると役に立ちますが、妊娠しなかった場合は不要に。そのため、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、血液とともに排出。これが、生理です。つまり、生理とは「妊娠しなかったことを表すサイン」と松村先生。
「妊娠を望んでいる場合は、子宮内膜を厚くして赤ちゃんを育てるためのベッドを作る必要がありますが、妊娠を望んでいない場合は、特に必要がないもの。妊娠を望まない期間に、腹痛や腰痛、頭痛、吐き気、強い眠気など、生理のたびに辛い不調を我慢するほうが、今の時代はナンセンスと言えるのではないでしょうか」(松村先生)。
腹痛、腰痛、頭痛など生理痛や、イライラ、倦怠感、情緒不安定などのPMSの症状は、女性ホルモンの変動のタイミングでおこりやすくなります。そこで、今、注目を集めている婦人科医療が、月経困難症の治療薬として開発された「4カ月に一度だけ生理をおこすように設計されたピル」です。
「ピルの主成分は、エストロゲンとプロゲステロンで、ピルを飲み、体の外からエストロゲンとプロゲステロンを取り入れることで、通常、卵巣から分泌される女性ホルモンがほとんど分泌されなくなります。すると、生理サイクルの間にダイナミックに変動していたエストロゲンとプロゲステロンの変動が少なくなり、結果的に排卵がおこらず、子宮内膜を薄いまま保つことができるため、生理痛やPMSの改善につながるのです」(松村先生)
卵巣&子宮のダメージを軽減!?ピルを服用する意外なメリット
「生理を止めると血がたまりそう……」と、不安に感じる人もいるかもしれませんが、婦人科医として「4カ月に一度だけ生理をおこすように設計されたピルを勧める理由がある」と松村先生は話します。
「まず、ピルを飲んで生理が止まるのは、子宮内膜が厚くならないためで、子宮内に血液がたまっているわけではありません。なので、その点は安心してくださいね。その上で、婦人科医としてピルを勧めるのは、排卵をしない期間をつくることで卵巣を休ませることができるからです。出産回数が多かった昔の女性の生理回数は、生涯で100回にも満たない程度でしたが、今は、子どもを2人出産したとしても、生理回数は400回を軽く超えます。卵子は排卵時に卵巣の膜を破って飛び出すため、その都度、細胞の修復が必要になり、その修復中にエラーがおきると卵巣がんの原因になります。ピルを飲んで排卵を止めると、細胞の修復回数を減らすことができるので、がんのリスクを下げることになるのです。また、子宮も、妊娠に備えて厚くした子宮内膜をはがす作業をくり返すことでダメージを受けるため、ピルの服用は子宮を休めることにもつながります」(松村先生)
注意!ピルの服用が向かない人とは?
「4カ月に一度だけ生理をおこすように設計されたピル」は毎日決まった時間に、4か月続けて服用した後、4日間休薬します。その間、3日間連続して出血があった場合は、翌日から4日間休薬をします。ピルを飲み始めて1〜3か月は、吐き気や頭痛、むくみなどの「マイナートラブル」がおこることもありますが、体が慣れてくると、こうした症状もなくなります。費用は、月経困難症の治療薬として服用する場合は保険適用となり、診察料のほかに薬代が月に2500円程度。保険適用外の場合の費用は、クリニックによって異なりますが、8000円前後(※ヤーズフレックスの場合です)が一般的だそう。
「ピルの服用を考えるうえで、副作用も気になるところだと思いますが、副作用には血栓症が考えられます。そのため、血栓症のリスクのあるBMI30以上の肥満の人(BMI は体重〈kg〉を身長〈m〉×身長〈m〉で割った数値)、生活習慣病の人、遺伝的に血栓症を起こしやすい人などは、ピルを服用することができません。また、35歳以上で1日15本以上喫煙する人、年齢的に血栓症のリスクが高くなる45歳以上の女性も、おすすめできません」(松村先生)
副作用などのリスクを回避するためにも、ピルの服用には医師の処方箋が必要になります。
「初診時には問診のほかに、体重、血圧の測定をし、血液検査や子宮頚ガン検査などを追加で行う場合もあります。検査結果に問題がなければ、服用が可能ですが、ピルは一度飲み始めたら、継続しないといけないというものではありません。飲み始めて体に合わない場合は、いつでもやめて大丈夫。また、最近は生理の予定日が受験や旅行、重要な仕事を控えている日などにあたってしまうときに、一時的にピルを飲んで生理をずらす人もいます。生理の悩みから解放される、選択肢のひとつとして、ピルの服用は効果的と言えますね」(松村先生)
【教えてくれたのは…】
成城松村クリニック院長 松村圭子先生
日本産科婦人科学会専門医。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て、現職に。若い世代の月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけ、アンチエイジングにも精通している。生理日管理を中心としたアプリ・ルナルナの顧問医、女性特有の体温リズムを自動計測するアプリ&デバイス「わたしの温度」顧問医。西洋医学のほか、漢方薬、サプリメント、各種点滴療法なども積極的に治療に取り入れている。『女性の悩みはFemtechで解決! オトナ女子のためのカラダの教科書』(宝島社)など著書多数。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く