肥満だけじゃない「睡眠中に呼吸が止まる」睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴とは?医師が解説

 肥満だけじゃない「睡眠中に呼吸が止まる」睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴とは?医師が解説
Adobe Stock
甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-10-21

寝ている間に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」。なりやすい人の特徴とは?対策は?医師が解説します。

広告

睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:略してSAS)は、眠り出すといびきをかいて知らぬ間に呼吸が止まってしまい、日中の眠気を含めた過眠症状や高血圧などを引き起こすとされている病気です。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まり、周囲の方からいびきをよく指摘される、夜間の睡眠中に頻繁に目が覚める、起床時に頭痛や倦怠感を自覚しやすい、日中の眠気などを経験するなどの特徴を有します。

睡眠時無呼吸症候群は、いったん眠り出すと知らず知らずのうちに呼吸が止まってしまう病気であり、眠り出すとまた呼吸が止まってしまうことを一晩中繰り返すために夜間睡眠が全くとれずに日中に強い眠気が出現します。

睡眠時無呼吸症候群の方は、夜間における深い睡眠が妨げられることによって多大なストレスが蓄積されることによって、血糖値やコレステロール値が高くなることで様々な生活習慣病やメタボリック・シンドローム症候群を引き起こしやすくなります。

睡眠時無呼吸症候群になりやすい人とは

睡眠時無呼吸症候群を発症させる主な原因は、肥満による喉周りの脂肪であることが多いと言われています。

睡眠中は誰でものどの緊張が緩むために健常者でも空気の通り道が細くなりますが、特に肥満の方ではのどへの脂肪沈着率が増加するために更に空気の通りが悪くなります。

また、鼻中隔湾曲症の人も睡眠時無呼吸症候群になりやすいと考えられています。

鼻の穴を左右に隔てて軟骨と骨で構成されている壁構造を鼻中隔と呼んでおり、この鼻中隔が強く曲がって湾曲していることによって、鼻閉やいびきなどの症状が長期に渡って出現する病気が鼻中隔湾曲症です。

鼻中隔湾曲症は、基本的にはアレルギー反応や細菌感染などの内因性の病態ではなく、鼻中隔が物理的に湾曲しているためにいびきや鼻閉などの症状が引き起こされます。

また、扁桃腺が肥大している場合も睡眠時無呼吸症候群に陥りやすいと指摘されています。

扁桃腺が肥大化すると、空気の通り道が自然と狭くなって、いびき症状が引き起こされて、睡眠の質が低下するために、日中に眠気が強く襲ってきて集中力が低下することに繋がります。

睡眠時
イラスト/Adobe Stock

睡眠時無呼吸症候群の治療予防策は?

基本的に、睡眠時無呼吸症候群の多くは肥満を合併しているため、まずは体重の減量を目指した食生活の見直しや運動習慣の継続など一般的な生活指導が重要な視点となります。

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、その重症度によって様々な理学的療法や手術治療が実践されることになります。

夜間の睡眠中に途中で何回も呼吸が止まって、大きないびきを認める際には危険な兆候であると考えられるので、速やかに病院を受診する必要があります。

睡眠時に呼吸が止まると脳や心臓、腎臓など主要な臓器に十分な酸素成分が供給されずに、高血圧や脳梗塞、慢性腎不全などを合併する危険性が上昇すると考えられています。

現在のところ、全国的にまだいびきを対象としている専門医療施設が必ずしも多く存在するとは言えませんが、総合内科、耳鼻咽喉科、循環器内科、呼吸器内科などに併設していびき外来という専門外来の形態で診療が実施されている場合もあります。

そうしたいびき外来においては、普段から大きないびきを鳴らす可能性がある睡眠時無呼吸症候群を含めた疾患の有無を調査し、その結果に応じて睡眠中に気道が狭くなる状態を改善する治療を実践することも可能となります。

睡眠時無呼吸症候群に対する最も重要な治療法と考えられている経鼻的気道持続陽圧療法というのは鼻にマスクをつけて特殊な機械で圧力をかけて空気を送り込ませることで肺への空気の循環が良好となり睡眠時に呼吸が停止することがなくなります。

この経鼻的気道持続陽圧療法を実際に導入する際には、短期間入院する必要があり治療後には体調確認や機械調整を要するため、月に一度は主治医の先生の所へ受診していただく必要があります。

近年では、経鼻的気道持続陽圧療法に使用される機械そのものが非常にコンパクトに小型化されており、外出時などにカバンに入れて持ち運びすることも出来ますので行動範囲が制限されることもなく便利なツールとなっています。

まとめ

これまで、睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か、睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。

日常的に軽視されがちな「いびき」症状ではあるものの、夜間の睡眠の質低下や日中の眠気や疲労感などの症状が出現している際には、睡眠時無呼吸症候群が潜在化している懸念がありますので、一度専門医療機関に相談してみましょう。

広告

AUTHOR

甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

睡眠時