【尿路結石】男性では7人に1人、女性では15人に1人が患う?なりやすい人の特徴は?医師が解説
知っているようで知らない尿路結石について医師が解説します。
尿路結石とはどのような病気か
一般的に、腎臓で濾過された尿は、尿管を通過し膀胱へ溜められ、尿道を通って排泄されることが知られており、この腎臓から膀胱、そして尿道の間にできる石を「尿路結石」と言います。
尿路結石の発症には食生活が大きく関係していると分かってきており、特に日本人の場合は、シュウ酸カルシウム結石症と呼ばれるものが圧倒的に多いです。
日々の生活における食事内容などでこのシュウ酸を摂りすぎることによって結石の主な原因に繋がるといわれています。
小さな結石が腎臓にできても無症状な場合がほとんどですが、尿路結石が腎臓から流れ出た途中で詰まってしまうと、わき腹~下腹部などの激しい痛みや血尿などの症状が出現することになります。
さらに、尿が下流の膀胱へと流れないがために上流で尿が貯留して淀んでしまうため、腎盂腎炎などの尿路感染症を引き起こして腎臓の機能障害などが生じることになります。
尿路結石になりやすい人とは
尿路結石については、かつては多くの場合でカルシウム自身が結石を作る原因であると考えられていましたが、現代ではカルシウムよりも「シュウ酸」のほうが結石を作りやすいことがわかってきました。
具体的にシュウ酸を多く含む食品の代表として、ほうれん草、コーヒー、紅茶、コーラなどが挙げられますので、これらの食料品を日常的に多く摂取している方々は尿路結石になりやすいと考えられます。
また、尿路結石を抱える患者さんの特徴として、運動不足で肥満傾向、あるいは動物性タンパク質や脂肪の摂取過多、そしてカルシウムや牛乳摂取頻度の低下などが考えられます。
同時に、動物性脂肪を多く摂りすぎている人の場合には、腸内の脂肪酸が増えてカルシウムと結合するためにシュウ酸がカルシウムと結合できなくなり、このシュウ酸が吸収されて尿中へ排出されて尿路結石ができやすくなると考えられています。
日々の生活で野菜類や海藻類の摂取不足が認められ、夕食中心の食生活を送り夕食から就寝までの時間が短いなどの項目が該当する人も尿路結石症を発症しやすいと指摘されています。
尿路結石の治療予防策は?
水分をあまりとらないと脱水状態になって、尿が濃縮されて尿路結石ができやすくなりますので、尿路結石症の罹患予防に向けて、まずは十分な水分を摂ることが重要です。
食事以外にも1日だいたい2L以上の水分補給を心がけて、1日尿量を2リットル以上とすることで、結石再発リスクを減少できるという報告もありますので、特に脱水になりやすい夏場の暑い時期や、入浴後や運動後の水分補給が大切です。
そして、尿中に排泄されるシュウ酸は、カルシウム結石の最も重要な危険因子とされていますので、日常生活においてシュウ酸を摂り過ぎないことに留意しましょう。
シュウ酸を多く含む食品例としては、ホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリーなどの野菜のみならずバナナ、玉露などのお茶、ココア、チョコレート、コーヒー、紅茶などが挙げられます。
さらに、尿路結石症を発症させないためには「プリン体」の多く含まれる食品や飲料を摂り過ぎないことを念頭に置きましょう。
ビールなどに含まれているプリン体は体内で代謝されて尿酸となり、過剰に摂取すると高尿酸血症や酸性尿を引き起こします。
プリン体の有無にかかわらずアルコール自体の代謝に関連して血清尿酸値が上昇すると言われていますので、種類を問わず過剰なアルコールの摂取は控えましょう。
血清尿酸値への影響を最低限度に抑えるための目安となる量は、1日あたりで大体日本酒1合、またはビール500ml、あるいはウイスキー60ml程度とされています。
また、肉類、魚介類、干物などの高プリン体の範疇に入る食物を摂取しすぎないように、1日あたりプリン体の摂取量がおよそ400mg前後を超えないようにすることが望ましいです。
尿路結石を発症した際の治療方針は、結石の大きさや症状によって異なり、その多くは経過観察、薬物治療、そして専用の超音波装置を用いて体外から体内の結石を砕く治療法、あるいは手術治療(多くは内視鏡手術)に大別されます。
まとめ
これまで、尿路結石とはどのような病気か、尿路結石になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。
尿路結石が腎臓にできても無症状な場合もありますが、この結石が腎臓から流れ出た途中で閉塞すると、わき腹から下腹部などにかけて激しい痛みを引き起こして、血尿などの症状が合併することに繋がります。
尿路結石を予防するために、規則正しくバランスの良い食生活と十分な水分摂取を日常的に心がけて、万が一尿路結石を発症した際には泌尿器科など専門医療機関を受診しましょう。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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