豆腐は肉の代わりになる?たんぱく質を効率的に摂る方法を管理栄養士が解説
豆腐はたんぱく質が豊富でヘルシー、というイメージを持っている方は多いでしょう。健康やダイエットを考えると「肉の代わりに豆腐を食べたほうがよいのでは?」と思うかもしれません。しかし実は、豆腐は肉の代替になる、と一概には言い切れないのです。豆腐と肉の栄養価を比較しながら、効率よくたんぱく質を摂取する方法を管理栄養士が解説します。
豆腐を食べるメリット
豆腐と肉はどちらもたんぱく質が豊富な食材ですが、豆腐のほうがヘルシーなイメージがあるでしょう。ダイエットや健康維持のために「肉を豆腐で代替できるといいのに」と思う方がいるかもしれません。
まずは肉と比較したときの、豆腐のメリットを見ていきましょう。
豆腐と肉の大きな違いは、エネルギー量です。100g当たりのエネルギーを比較すると、絹豆腐は56kcalであるのに対し、豚ロース肉では248kcalと大きく差があります。
脂質の量も、豆腐と肉で差が見られます。肉のほうが脂質量は多く、飽和脂肪酸の割合が高いことが特徴です。飽和脂肪酸は中性脂肪や悪玉コレステロールのもとになるため、摂り過ぎには注意が必要です。一方、豆腐に多く含まれる不飽和脂肪酸は、適量の摂取で血液中のコレステロールを減少させる効果が期待できます。
豆腐はカルシウムやマグネシウム、銅などのミネラルが豊富で、肉にはない食物繊維も含んでいます。
さらに豆腐には、レシチンやサポニンなどの成分が含まれることも見逃せません。レシチンは動脈硬化の予防、サポニンはコレステロール値を下げる効果が期待できる、大豆由来の機能性成分です。
豆腐だけではたんぱく質を補えない
豆腐には、肉にはないメリットが数多くあります。しかしたんぱく質の含有量については、豆腐は肉に及びません。
100g当たりで比較すると、絹豆腐のたんぱく質量は5.3gである一方、豚ロース肉には19.3gものたんぱく質が含まれています。豚ロース肉と同じ量のたんぱく質を摂取するには、絹豆腐を約360g食べなければなりません。すると、絹豆腐のエネルギー量も約200kcalにまで増えてしまいます。これでは肉とほとんど変わりませんね。
また、豆腐に含まれるイソフラボンの過剰摂取にも注意してください。イソフラボンは体の中で女性ホルモンと似た働きをするため、更年期障害の症状改善に効果が期待できる成分です。しかし摂りすぎると、乳がんの発症や再発のリスクを高めるおそれがあると考えられています。
豆腐100gには、約20mgのイソフラボンが含まれています。イソフラボンの1日摂取目安量の上限値は70〜75mgとされているため、肉と同程度のたんぱく質を補うほど豆腐を食べていると、イソフラボンを過剰摂取するおそれがあるでしょう。
さらに、豆腐に含まれる植物性たんぱく質は、肉の動物性たんぱく質よりも吸収率が低いことがわかっています。やはり、豆腐だけで肉に含まれる豊富なたんぱく質を補うことは困難です。
豆腐と肉をバランスよく食べるのが正解
豆腐は低エネルギーで低脂質、ミネラルや食物繊維が豊富で、肉にはない機能性成分を含んでいます。一方、肉にはたんぱく質がたっぷり含まれていますが、脂質やコレステロールの量が気になります。たんぱく質を効率よく摂取するには、豆腐と肉、どちらかに偏ることなく食べるのがよいでしょう。
たんぱく質は魚や乳製品、卵、豆腐以外の大豆製品にも含まれています。これらの食品をバランスよく食事へ取り入れると、たんぱく質だけではなく、ほかの栄養素も摂取できます。
食品中のたんぱく質を分解して体の中で利用するには、ビタミンB2やビタミンB6、パントテン酸、ビオチンなどの栄養素が必要です。多様な食品を食べてさまざまな栄養素を摂ることが、たんぱく質の効率的な摂取と利用につながります。
【参考文献】
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
厚生労働省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」
厚生労働省「大豆イソフラボンの安全な摂取目安量の設定の検証」
速水 泱「動物性蛋白質と植物性蛋白質の栄養上の相違点」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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