AIによるカウンセリングのメリットと限界とは?【臨床心理士が解説】

 AIによるカウンセリングのメリットと限界とは?【臨床心理士が解説】
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佐藤セイ
佐藤セイ
2023-09-28

最近、あちこちで「AI」の話題を目にします。メンタルヘルスの分野でもAI技術の活用が検討されており、文章生成AIによるカウンセリングサービスも提供され始めています。しかし、まだ歴史の浅いAIカウンセリングに不安を感じる方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、AIによるカウンセリングのメリットとデメリットについて詳しく解説します。

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AIによるカウンセリングのメリット

まずはAIによるカウンセリングのメリットを4つご紹介します。

つらいときにすぐ相談できる

人間とのカウンセリングでは、時間や場所が決まっており、「しんどい」と思ったときにすぐ相談できるとは限りません。

しかし、AIによるカウンセリングは、24時間365日対応可能なため、「話を聴いてほしい」と思ったそのときに利用できます。「いざというときはすぐ相談できる」という安心感が心を支えてくれるでしょう。

人間相手より話しやすいことも

人間のカウンセラー相手だと「つまらない相談だと思われていないかな」「信じてもらえないんじゃないかな」など、反応が気になって相談に集中できない方もいるかもしれません。

また、過去のカウンセリングでうまく話せなかったり、嫌な思いをしたりして、人間のカウンセリングに前向きになれない方もいるでしょう。

そんな方は、いつでもフラットに対応してくれるAIカウンセリングの方が、話しやすい可能性があります。

必要な情報にアクセスできる

私たちは悩みがあると、インターネットで解決策を探そうとします。しかし、膨大な検索結果を1つ1つ見ていると時間がかかりますし、「結局どうすればいいの!」とかえって悩みを深めてしまうこともあります。

一方、AIは膨大な情報を迅速に処理する機能を持っています。そのため、相談内容を入力すれば、必要な情報を示すことが可能です。

対人での相談より低価格

AIによるカウンセリングには、人件費や家賃などの費用がかかりません。そのため、人間のカウンセリングよりも低価格で提供されることが多く、「カウンセリングを受けたいけど、経済的に難しい」という方でも利用しやすくなっています。

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AIによるカウンセリングの限界

ここからはAIによるカウンセリングの限界についてお話しします。

共感されている感覚が薄い

カウンセリングを受けたい方のなかには、「ただ話を聴いてほしい」「共感・理解してほしい」という方もいます。

人間のカウンセラーであれば、共感や理解を言葉にするだけでなく、表情や頷き、言い淀み、ときには涙など、さまざまな形で示せます。しかし、AIは「言葉」でのやり取りしかできません。共感・慰め・励ましの言葉を生成してはくれるものの、「受け止めてもらえた!」と感じづらいのが現状です。

「ただ話を聴いてほしい」「つらい気持ちを受け止めてほしい」という場合には、AIカウンセリングはうまく機能しないかもしれません。

言葉にならない想いが伝わらない

自分の気持ちや考えが整理されておらず、十分に言葉にできない方もいるでしょう。人間のカウンセラーであれば、「こういう気持ちでしょうか?」など、言葉にできるようにサポートできます。

しかし、AIは入力された言葉を処理することはできても、言葉を引き出すことはできません。自分の気持ちを言葉にするのが苦手な人には不向きといえるでしょう。

不適切な助言が行われることも

AIによるカウンセリングでは、不十分な情報に基づいて誤った助言が行われる可能性もあります。例えば、「痩せたい」という相談に対し、ダイエット方法を助言するのは大きな問題ではないかもしれません。しかし、その方が明らかに痩せすぎている摂食障害の方であれば非常に危険です。

AIはデータに基づいた一般的な助言を提供するのは得意ですが、個別の状況に合わせた助言は苦手です。そのため、相談者にそぐわない助言を行うことがあります。

個人情報の取り扱いに注意

人間によるカウンセリングでは、カウンセラーと相談者との間に「守秘義務」が発生し、相談者の秘密は守られます。

しかし、AIによるカウンセリングでは、相談データがサーバーに残ってしまいます。AIカウンセリングサービスの利用規約をよく読み、個人情報・相談データの取り扱い方やセキュリティーに関してしっかり確認することが大切です。

参考文献

西田昌規(2023.5.1)ChatGPTは心理カウンセラーになれるのか

REUTER(2023.6.25)焦点:増える「AIセラピスト」、心の健康に役立てるには課題も

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AUTHOR

佐藤セイ

佐藤セイ

公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。



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