相手の自信や可能性を取り戻すための方法【エンパワーメント】とは?臨床心理士が解説

 相手の自信や可能性を取り戻すための方法【エンパワーメント】とは?臨床心理士が解説
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南 舞
南 舞
2020-11-17

あなたの周りに、自信を失っていたり、サポートが必要だと思われる人はいますか?そんな時に活用できるのが【エンパワーメント】というスキル。実はカウンセリングの場面でも多く使われています。このスキルをどうしたら日常生活に取り入れられるかを、臨床心理士である筆者が解説します。

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人へのサポートに欠かせない、エンパワーメントとは?

【エンパワーメント】とは、否定的な評価を受けるなどして生活力を失っている人に対して、無力感の克服、自身の問題の解決、生活をコントロールしていけるようになるためのサポートをすることを指します。言い換えるとその人らしく生きる、自分の持っている能力やスキルを自覚し、社会と関わる中で成長させていく」ために行うものです。1960年代にアメリカで黒人問題やジェンダーに関わるソーシャルワークの実践から生まれたのを機に、今ではコミュニティ心理学と呼ばれる分野の中で、重要なサポートの方法として注目されています。エンパワーメントの最大の特徴は、【個人の持つ能力を尊重する】ということ。もともとは、人それぞれに個性や能力、可能性を持っているものですが、社会的な制約によって発揮できていないという場合が多くあるのが現実。エンパワーメントをすることによって、自分に対する自信を取り戻したり、QOL(生活の質)が向上するという恩恵があることから、今では教育やビジネスなど幅広い領域で採用されるようになってきています。

エンパワーメントを日常生活に取り入れるには?

エンパワーメントは、もともとは福祉やカウンセリングの領域で援助者に求められてきた考え方ですが、実は日常生活でも取り入れることができます。今回はエンパワーメントによって相手の自信を取り戻すために必要な3つのスキルをご紹介しますね。

スキル1:聴く(傾聴する)

特に大切なスキルが【聴くこと】です。人は、自分の話を聴いてくれる人に対して心を開きやすいと言われています。聴く際に大事なのは、【自分よりも相手が主役である】【相手を理解しよう】という姿勢を持つこと。会話の中で、『どんなことアドバイスしようかな?』と、いつの間にか自分主体になっていませんか?アドバイスなどをすることよりも、『ただ相手の話に耳を傾け聴く』ということの方が、実は相手の心を満たすことができます。

スキル2:質問する

エンパワーメントに大切なのは、スキル1と同様に、こちらがアドバイスや気づきを与えるよりも、相手に考えさせて、自分自身で気づきを得てもらうこと。そのためには、【質問をする】というスキルが有効です。例えば「今までで一番〇〇だったことは?」「〇〇と感じた出来事は?」など具体的な話が出やすい質問を投げかけると、相手の気づきを促すことができます。

スキル3:受け入れること(承認する)

受け入れる・承認すると言うと難しく思えますが、比較的取り入れやすいのが【相手を褒める】こと。例えば、「〇〇さんっていつも説明がわかりやすいですよね」「〇〇してもらうと私はとてもうれしいです」「〇〇なところがあなたのすごいところだと思います」など、具体的に伝えると、相手に伝わりやすく、より良い行動を取りたいと言うモチベーションへと繋がっていきますよ。

エンパワーメント力を高めるために大切なことは?

様々なスキルをご紹介してきましたが、これらを行うために大切なのは、相手との間に信頼関係を築くこと。信頼を持ってもらえなければ、いくらスキルを使ってもうまくいくことはありません。「あなたのことが知りたい」「あなたのサポートになりたい」そういった姿勢を伝えていくことが、相手にとっての安心となり、変化へと繋がっていきます。あなたの周りでサポートが必要かもと思う人がいたら、まずは信頼関係を築くことから始めましょう。

ライター/南 舞

臨床心理士。岩手県出身。多感な思春期時代に臨床心理学の存在を知り、カウンセラーになることを決意。大学と大学院にて臨床心理学を専攻し、卒業後「臨床心理士」を取得。学生時代に趣味で始めたヨガだったが、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングと近いものを感じ、ヨガ講師になることを決意。現在は臨床心理士としてカウンセリングをする傍ら、ヨガ講師としても活動している。

Instagram: @maiminami831

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