プラスチックフリーの梱包・規格外食材の変身……「食」からエシカル消費を考える

 プラスチックフリーの梱包・規格外食材の変身……「食」からエシカル消費を考える
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商品を購入する際に、価格や質だけでなく、環境や社会問題への配慮がなされているかをチェックする人もいるのではないでしょうか。社会問題を意識しながら行う消費を「エシカル消費」といいます。オンラインで生産者から野菜・肉・魚・乳製品・加工品などの食品や花を直接購入、環境へ配慮した商品も購入できる直売所「食べチョク」(https://www.tabechoku.com/)。同サービスは代表の秋元里奈さんの農業を営んでいたご実家が廃業し、農家の不安定な経営状況に課題意識を持ったことから始まりました。同サービスを運営する株式会社ビビッドガーデン広報の佐藤安奈さんに話を聞きました。

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生産者のこだわりが評価される世界を実現

ローンチしたのは2017年。代表の秋元里奈さんのご実家が農業を営んでいたものの、秋元さんが中学生のときに廃業してしまいました。社会人になってから実家が廃業した理由を考えた際、農家が不安定な経営状況になりやすい課題を抱えていることに気づきました。

例えばトマトという一つの野菜でも、それぞれの生産者にこだわりの作り方があります。秋元さんのご実家も小規模で多種多様な品種の野菜を作っていました。従来の市場に卸して販売する形態ですと、市場によって価格が決まってしまい、こだわりの作り方まで加味されず、生産者自身には価格決定権はありません。そのため市場環境が変化し、価格の高騰・下落に伴う生産者の収入への影響が大きいのです。

「生産者から消費者に届くまでに様々な仲介業者が入っていたところ、生産者と消費者の間に食べチョクだけが入ることで、安定的な収入を得られる一つの販路を作りたい」——そんな思いから同サービスは生まれました。

同社のミッションは「生産者のこだわりが正当に評価される世界を実現する」。生産者が手間をかけて作った食材を、コストを踏まえて価格設定し、消費者に直接販売できるプラットフォームです。

「消費者のニーズとしては、単においしいものを買うというより、購入までの体験や、生産者のストーリーを知ることで満足感を得る傾向が高まっています。顔の見える状態で生産者のこだわりを理解し、直接繋がりを持って購入できる点を重視しています」(佐藤さん)

同サイトでは購入後に生産者に「届いた報告」や、どのように食べたかを直接伝えたり、生産者からも購入のお礼やおすすめの食べ方を伝えたりと、双方向からコミュニケーションが可能。消費者からのセット売りの要望によって、新しく商品化した例もあるとのことです。

2023年7月現在、ユーザー数は85万人を突破。全国8700件以上の農家・漁師が登録し、5万点以上の商品が掲載されています。

農家
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「食べて応援」もできる

食べチョクでは、感染症の蔓延や災害など生産者の緊急事態のとき、消費者の「食べて応援」のニーズに応えるような特集も行っています。筆者も新型コロナウイルス流行初期に、コロナの影響を受けている生産者の特集ぺ―ジを見て、初めてサービスを利用しました。

2022年8月の東北地方を中心とした大雨による被害があった際には、応援チケットの販売で支援プログラムを実施しています。たとえば青森県のリンゴ農家は、収穫直前にリンゴ園が水没してしまい、全く収穫ができなくなりました。サイト内で応援チケットの販売を行い、チケット購入者には生産者からお礼メッセージが送られてくる形で、消費者が生産者をサポートできる仕組みを設けました。

2023年3月からは、物価高騰の影響で経営状況が悪化した酪農家を応援するプログラムを行いました。生産者が直面している状況を伝えた上で、寄付対象商品が一つ購入されるごとに生産者に100円の寄付を行ったり、対象商品を購入した人に抽選でクーポンをプレゼントしたりと、消費を促しました。

食品ロス削減と美味しさの両立

生産者の方々は、日々自然環境と繋がりながら農作物などを作っているため、SDGsという言葉が普及する前から、環境に関する社会課題への意識は高い方が多かったとのことです。

「生産者さんが既に行っている取り組みを届けるため、『SDGs』という切り口でフォーカスすることによって関心を持ってもらえると考え、2021年からSDGs特集ページを設けています」(佐藤さん)

プラスチックフリーで梱包している商品や、破棄されてしまう規格外の食材を使った加工品は、エシカル消費に関心の高い人には人気とのこと。

たとえば、青森県弘前市のもりやま園さんは、摘果したリンゴを活用した「テキカカシードル」というお酒を販売しています。

摘果とは、一つ一つのリンゴに十分に栄養を行きわたらせるために、成長過程のリンゴを間引きする作業のこと。おいしいリンゴを作るためには必ず必要な作業であるものの、全て廃棄となり、その量は全体の3分の1程度を占めるといいます。

摘果したリンゴは強い酸味があり、テキカカシードルは酸味を活かしたお酒。「2019年ジャパンシードルアワード大賞」を受賞しており、佐藤さんによると「ギフトとしても人気」とのことです。

もりやま園さんの商品(食べチョクよりご提供)
もりやま園さんの商品(食べチョクよりご提供)

食べチョクでは未利用魚を購入することもできます。網を使った漁では、目的外の魚が獲れることは日常的。数が少なかったり、小さかったりして市場に卸すことができないため、自分たちで消費するしかないものの、食べられる量には限界もあり、廃棄するしかありませんでした。

2020年から未利用魚の販売を開始していますが、報道番組で取り上げられるなど、少しずつ未利用魚の認知度が高まり、2022年1月時点でサイト内検索が月に70回程度だったところ、2023年1月には45倍にもなり、需要が高まっていることがうかがえます。

「漁師さんにとっては、今まで値段がつかなかったものから収益を得ることができていますし、消費者にとってどんな魚が届くかわからないワクワク感があります。地域によっては、のどぐろのような高級魚が入っていることもあるんです。血抜きされた状態で届くのですが、捌く必要はあって、お子さんのいる家庭では食育にも繋がっているという話も聞きます」(佐藤さん)

ほかにも、生産者直伝のレシピで食品ロス削減ができるよう、サイト内での特集を行っています。

「ほうれん草の根っこをフリットにして食べたのですが、甘みが強くてとてもおいしくて。『もったいないから頑張って食べる』のではなくて、美味しく食べられるので、楽しみながら食品ロス削減に貢献できます」(佐藤さん)

できることから始める

筆者自身、正直生活にさほど余裕はなく、常に社会問題を意識した消費ができているわけではなく、価格を最優先に商品選択することも少なくありません。

ですが、食に関してだけでも「梱包の素材を意識」「食品ロス削減に貢献した商品を購入」「買った商品を無駄なく食べる」など、できることは複数あることに気づきました。フードロス削減に貢献した商品にはオシャレなものもあり、ギフトとして贈るという選択肢もできました。一消費者として、できることだけでも、できることから始めようと思います。


 

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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