大雨や台風が近づくと具合が悪くなる…気象病になりやすい人とは?予防のためにできること|医師が解説

 大雨や台風が近づくと具合が悪くなる…気象病になりやすい人とは?予防のためにできること|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-06-03

台風や大雨の日が近づくと頭痛がする「天気痛(気象病)」について、医師がわかりやすく解説します。

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気象病(天気痛)とはどのような病気?

台風や大雨の日が近づくと徐々に頭痛がひどくなる、湿気が多い季節には関節が痛い、梅雨の時期はだるくて倦怠感が改善しないなど気圧の変化によって引き起こされるこれらの一連の症状は「気象病」とあるいは「天気痛」と呼称されています。

思っている以上に多くの人がこの症状を抱えていると考えられており、気象病(天気痛)に関連する症状はケースバイケースであり、代表的には片頭痛など慢性的な一次性頭痛の悪化、肩周囲や首の凝り、膝や腰部分の痛み、めまい、抑うつ症状などが挙げられます。

通常、気象病(天気痛)の症状は、一定期間安静にすれば我慢できるぐらいの場合もあれば、家事や仕事が手につかないほど重大な症状に悩まされるケースもありますし、体調変化に対する不安や心理的要素が複雑に関与して症状が悪化する傾向も見受けられます。

ひどい場合には、いつ何時気象病(天気痛)が出現するか判断できないという理由で、親しい友人や家族と旅行できない、台風や落雷が襲ってくるという天気予報を見るだけで体調が悪化することも想定されます。

気象病(天気痛)になりやすい人とは

一般的に気圧が低下すると天気が崩れる傾向を認めますが、気象病(天気痛)などの体調不良をきたす大きな要因は「気圧」であると考えられています。

気象病あるいは天気痛を患っている人は、天候など気圧変化による刺激がストレスとなり、脳が過敏に反応して、交感神経の働きが高まる結果として、脳血管の収縮などの変化を招き、頭痛症状などを強く感じるようになります。

また、気圧の変化を耳の奥にある内耳がセンサーとして検知すると、前庭神経や三叉神経が刺激されて、神経伝達物質や炎症性サイトカインを放出することで、脳の血管が拡張して頭痛を引き起こすと言われています。

内耳の部分に気圧を感じるセンサーがあると考えられていますので、日常的にめまいや耳鳴り症状を起こしやすい人、あるいは乗り物酔いをしやすい場合などにおいては、このセンサーが過敏に検知する結果、通常よりも気象病(天気痛)を起こしやすいリスクがあります。

天気痛
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気象病(天気痛)の治療予防策は?

気象病(天気痛)の治療に際して、有力な武器になるのが「痛み日記」です。

頭痛に関する自分の日記には、その日その日ごとの天気や気圧変化、痛みの強さ、薬の服用の有無や行動パターン、症状が出たタイミング、運動したかどうか、あるいは良質な睡眠が確保できているかなどの状態を定期的に記録するようにします。

数か月程度日記を書き続けると、体調と天気がどう連動しているかがある程度判明し、専門医療機関での画像診断など精密検査で他疾患でないことを確認したあとは、本格的な治療を実践する運びとなります。

具体的には、自分なりの「痛み日記」で気象病(天気痛)が出現するパターンや時期などが事前に予測できるので、気圧や天候の変化に応じてもっとも効果的なタイミングで予防的に鎮痛剤などの薬を服用して、疼痛症状やメンタル不調を防ぐ作用が期待できます。

特に、気象病(天気痛)に効果的とされている薬剤としては、抗めまい薬や内耳の血液循環を良好にする五苓散などの漢方薬が具体例として挙げられ、個々によってどの薬が適しているかを少しずつ試しながら様子を見ます。

薬物治療以外にも、自律神経を整えるために十分な睡眠、適度な運動、バランスの良い食事摂取などを含めて規則正しい日常生活を送ることが重要なポイントとなります。

最近では、全国の地域毎に気圧の変化などから気象病(天気痛)の発症リスクを提示してくれる「全国の天気痛予報」といった専用アプリを入手して、薬を服用するタイミング、旅行の日程調整などにも活用して役立てることもできます。

まとめ

これまで、気象病(天気痛)とはどのような病気か、気象病(天気痛)になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。

気象病(天気痛)とは、天気や天候が悪くなると気圧が変化して頭痛や関節痛など身体の痛みが悪化する、あるいは寒暖差で自律神経のバランスが崩れて様々な不調症状が起こる状態を指しています。

気象病(天気痛)の治療や予防で肝心なポイントは、顕著な心身症状を自覚する前に自分なりのセルフケア方法を確立することであり、天候や気圧の変化に対して効率的に対処できるように日々工夫しましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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