コーヒーは体にいい?悪い?管理栄養士が解説する、コーヒーを飲むメリット・デメリット
毎日、習慣的にコーヒーを飲んでいる人は少なくありません。「コーヒーを飲むと目が覚める」「頭がすっきりする」といった声はよく聞かれますが、コーヒーのメリットはほかにもたくさんあります。逆に、コーヒーは健康へ悪影響を及ぼす可能性もあるのです。身近な飲み物、コーヒーが持つ健康への作用や摂取目安量を知り、コーヒーを効果的に生活へ取り入れましょう。
コーヒーがもたらす健康効果
コーヒーの有効成分として1番に思い浮かべるのは、カフェインではないでしょうか。カフェインのはたらきとしてよく知られているのは、眠気を覚ます効果ですね。カフェインには、神経を鎮めて眠気を誘う物質のはたらきを阻害する作用があります。
また交感神経を刺激して、基礎代謝を上げることもカフェインの作用です。基礎代謝が上がると消費エネルギーが増えるため、コーヒーにはダイエットを後押しする効果があるといえるでしょう。そのほか運動能力の向上や疲労回復、痛みをおさえる作用などがあります。
コーヒーの苦味や香りのもとになる成分「クロロゲン酸」にも注目してください。クロロゲン酸はポリフェノールの一種であり、活性酸素のはたらきをおさえて老化を防ぐ「抗酸化作用」が期待できます。
胃酸の分泌を促して消化を助けることも、クロロゲン酸の特徴です。そのため「食後のコーヒー」は理にかなっているといえますね。
さらに糖尿病の予防効果が見込めることでも、クロロゲン酸は関心を集めています。クロロゲン酸は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」を分泌する細胞にはたらきかけ、インスリンの分泌を促進すると考えられているのです。ほかにも脂肪燃焼を促す効果や、血圧を低下させる効果も期待されています。
コーヒーのデメリット
コーヒーが体にもたらす影響は、よいものだけとはかぎりません。眠気を覚ましてくれるカフェインは、摂り過ぎると神経が興奮して夜に眠れなくなってしまいます。さらに過剰摂取すれば、めまいや心拍数の増加、震えといった症状があらわれます。消化器官の神経も刺激され、下痢や吐き気などの症状が出るおそれもあるのです。
またコーヒーに含まれる成分は、栄養素の吸収を阻害する可能性があります。
カフェインはカルシウムの尿中への排泄を促し、カルシウムの吸収率を低下させます。とはいえ栄養バランスのよい食事を摂り、カルシウムの摂取量が十分であれば、骨に影響することはほとんどありません。
コーヒーに含まれる渋み成分「タンニン」は、鉄と結びついてそのまま排出されるため、鉄の吸収を阻害します。しかしこちらも、コーヒー1〜2杯程度ではあまり影響がないと考えられています。コーヒーをよく飲む人で貧血症状が気になる場合は、コーヒーの杯数を減らしたり、食後に飲むのを控えたりするようにしましょう。
1日の摂取目安量は?
コーヒーにデメリットがあったとしても、1日に飲んでもよい目安量がわかれば安心ですね。
コーヒーの摂取目安量を設定するうえで、ひとつの基準になるのがカフェインの量です。しかし、カフェインが体に及ぼす影響は個人差が大きいといわれており、日本では上限値などの具体的な数値は定められていません。
しかし海外に目を向けると、数値を用いてカフェインの摂取について注意喚起を行っている機関があります。欧州食品安全機関は「1日の最大摂取量を400mg以下、一度の摂取量を200mg以下にするべき」、カナダ保健省は「健康な成人は1日最大400mgまでとする」と提言しているのがその一例です。
ドリップコーヒー(1杯150ml)には約90mgのカフェイン、インスタントコーヒー(1杯2gの粉末)には約80mgのカフェインが含まれています。先ほどの数値をもとにすると、コーヒーは1日4杯程度までであれば健康への心配がないと考えられるでしょう。
コーヒーには眠気覚ましや抗酸化作用、生活習慣病予防といったメリットがある一方、神経を過度に興奮させたり、栄養素の吸収を阻害したりするおそれもあります。コーヒーが好きでも、あまり飲みすぎないようにしてくださいね。
【参考文献】
厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」
農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
一般社団法人日本乳業協会「カフェインを多く含む飲み物がカルシウムの吸収に影響を及ぼすことはありますか?」
全日本コーヒー協会「糖尿病の予防には、クロロゲン酸が効く?」
花王「コーヒーが本来持っている健康機能を引き出す技術」
小林製薬「お茶やコーヒーを飲んではいけないのですか?」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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