自覚症状が乏しいまま進むから怖い大動脈瘤|何が原因?大動脈瘤を引き起こす食事って?医師が解説
大動脈とは、心臓から全身に血液を送る働きを担っている血管のこと。大動脈瘤は先天的な組織異常や後天的に発生する動脈硬化などによって大動脈領域にこぶ状のふくらみが形成される病気のことを指しています。 大動脈瘤の基礎疾患となっている動脈硬化を事前に予防することは非常に肝要であり、日々の食事や生活スタイルを適切に実施する必要があります。 今回は、大動脈瘤を引き起こす食事・生活を中心に医師が詳しく解説していきます。
大動脈瘤とは
大動脈瘤は、患者さんが有意な自覚症状が乏しいままで経過することが多い疾患です。
ところが、いったん瘤が破裂した際には急激に大出血を起こして、死亡率が非常に高いために自覚症状の有無に関係なく、大動脈瘤が発見された時点で専門医を受診して適切に治療を受ける必要があります。
大動脈瘤を発症する原因として、ほとんどは生活習慣に関連した動脈硬化によって血管が老化現象を起こして脆弱になることが深く関与していますし、生まれつきの組織異常が関連しているケースもあります。
大動脈とは、心臓から送り出された血液を全身に供給する機能を有するために最も心臓からの血圧を直接的に受ける組織であり、万が一動脈硬化や組織異常などで血管が脆くなると高圧に耐えることができずに少しずつ血管が拡張して大動脈瘤が形成されてしまいます。
一般的には、動脈硬化を引き起こす因子として糖尿病や高血圧、脂質異常症や喫煙習慣、日々のストレスなどが挙げられており、これらのリスク要素を持つ場合には大動脈瘤に罹患する危険性が上昇します。
それ以外にも、マルファン症候群など先天性の結合組織疾患でも大動脈瘤を発症することが多く見受けられますし、細菌感染や外傷から引き続いて二次的に大動脈瘤を形成することも経験されます。
大動脈瘤の症状としては、声がしゃがれる嗄声などが出現することも時に見受けられますが、発症者の多くは無症状であるためになかなか疾患が発見されずに経過し、大動脈瘤の破裂に伴う突然死などのイベントによって病気が初めて明らかになることも想定されます。
基本的には、大動脈瘤が発生している部位に応じて特徴的な症状が出現すると考えられています。
例えば、弓部大動脈の周囲に大動脈瘤が形成されると周囲の主要な組織が瘤によって圧迫されて、物の飲み込みにくさ(嚥下困難)やしゃがれ声などが認められるケースも存在します。
また、巨大な腹部大動脈瘤がある場合には、患者さん本人が腹部にドクドクと拍動するこぶを自覚する場合もありますし、破裂の危険性が切迫しているようなケースでは、動脈瘤の部位に沿って強い痛みを訴える患者さんも認められます。
大動脈瘤を引き起こす食事・生活内容
大動脈瘤を発症させる原因は、動脈硬化や高血圧、喫煙などが考えられており、特に普段の食事内容が塩分過多になっている場合には高血圧に罹患しやすいと指摘されています。
食生活が不規則で運動習慣を持たない生活を送っていると、動脈硬化が進行した血管の内側にコレステロールなどの粥腫が付着して血管が狭くなり、血液の流れが悪くなることで大動脈瘤など健康障害を引き起こして命に関わる病気を発症させます。
大動脈瘤発症の危険因子である高血圧症を発症させる要素としては、塩分過多以外にも肥満、運動不足、アルコール、喫煙習慣などが知られています。
高血圧症を患うと血管に常に多大な負担がかかるため、血管内壁が傷ついて動脈硬化を起こして大動脈瘤などの重大な病気を発症する直接的な原因にもなるために十分な注意をする必要があります。
高血圧症は我が国において約4000万人以上にも及ぶ国民が罹患していると指摘されている病気であり、高血圧を制御することによって大動脈瘤だけでなく、脳血管障害や心臓病の発症を抑制することが大いに期待されています。
高血圧症が長期的に持続することで動脈硬化が知らぬ間に進行して、大動脈瘤が引き起こされるため、十分に注意を払うことが重要です。
また、大動脈瘤を引き起こさないように、普段から体重のコントロールを行うことが重要であり、肥満である人が1kg減量すると、血圧は約2㎜Hg程度下降すると言われています。
日々の運動などを実践して減量することで血圧は下がりますが、急激な減量には弊害もありますので、適度に運動することで長期的な計画を立てて減量を目指しましょう。
高血圧症自体は自覚的な症状がほとんど認められずに自分自身で気づかないことが多いですが、大動脈瘤の発症を効率的に予防するためにも常日頃からバランスの取れた食事だけでなく、定期的な運動に前向きに取り組み、体重をコントロールすることが重要です。
まとめ
これまで、大動脈瘤とはどのような病気か、大動脈瘤を引き起こす食事・生活内容などを中心に解説してきました。
一般的に、大動脈瘤は腹部に形成される腹部大動脈瘤、胸部に形成される胸部大動脈瘤、胸部から腹部にまたがって形成される胸腹部大動脈瘤などの種類があります。
動脈瘤は血管の老化現象である動脈硬化が原因となる場合が多く、加齢に伴ってだれでもこの病気を発症するリスクを持っています。
特に、動脈硬化を促進する原因である塩分過多の生活習慣、長期的な喫煙習慣、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を有している方は、大動脈瘤を認める可能性が健常者よりも高率に認められます。
大動脈瘤を発症しないためにも、日常生活において塩分の過剰摂取を控えて、肥満にならないように注意し、過度なストレスを抱えて運動不足にならないように心がけましょう。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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