卵を食べすぎるとどうなる?1日何個までなら大丈夫?管理栄養士が解説
「卵はコレステロールが多いから1日1個まで」と耳にしたことはありませんか?実際のところ、卵を食べ過ぎると健康に悪影響はあるのでしょうか。この記事では、卵の食べ過ぎによる体への影響や1日の摂取目安量など、身近な食品「卵」について抱きがちな疑問について、管理栄養士がお答えします。
卵を食べるとコレステロールの摂り過ぎになる?
「完全栄養食」といわれるほど栄養価が高い卵。実をいえば、ビタミンCと食物繊維は含まれていないものの、卵にはそれ以外の栄養素がバランスよく含まれています。
一方「卵は1日1個まで」「卵はコレステロールが多いから食べ過ぎてはいけない」と言われたことがある人は少なくないでしょう。たしかに卵1個(50g)には190mgのコレステロールが含まれており、卵はコレステロールが多い食品に分類されます。卵の食べ過ぎは、体によくないのでしょうか?
かつて、コレステロールは動脈硬化などの疾患を引き起こすとして、1日の目標量の上限値が定められていました。しかし、厚生労働省が現在発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、健康な人のコレステロールの摂取基準値は設定されていません。
そもそもコレステロールは、すべてが体に悪であるわけではありません。コレステロールは主に2種類あります。動脈硬化の原因とされている「LDLコレステロール」は、肝臓で作られたコレステロールを体中に運ぶ、いわゆる悪玉コレステロールです。反対に善玉コレステロールと呼ばれるのが、体中の余分なコレステロールを回収して肝臓へ運ぶ「HDLコレステロール」なのです。
コレステロールは食事から摂るだけではなく、必要量の大半が体の中でも作られています。体内での合成量は常に調整されており、食事からのコレステロール摂取量が多ければ、体内での合成量が少なくなる仕組みになっているのです。
そのほかさまざまな研究の結果、コレステロールの摂り過ぎは体によくない、という説には十分な根拠がないとされました。
気をつけたいのは飽和脂肪酸
卵を食べるときに気をつけたいのは、飽和脂肪酸の摂り過ぎです。
飽和脂肪酸は体を動かすエネルギーとして使われるほか、中性脂肪になって体に蓄えられます。飽和脂肪酸を摂りすぎると肥満になるだけではなく、LDLコレステロールの増加から動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが高まるのです。
飽和脂肪酸は肉の脂身やソーセージなどの加工肉、乳製品といった動物性の脂肪に多く含まれており、卵も1個(50g)当たり17.6gの飽和脂肪酸を含んでいます。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、飽和脂肪酸の摂取量は1日に必要なエネルギー量の7%以下におさえる、とする目標量が設定されています。
卵は1日2個までが目安
卵の食べ過ぎで気にするのは、コレステロールではなく飽和脂肪酸です。飽和脂肪酸の過剰摂取を避けるために、卵は1日2個までとするのがよいでしょう。もし3個以上食べてしまっても、1週間のなかで調整すれば問題ありません。
ただし脂質異常症の人はLDLコレステロール値が高いため、コレステロールの摂取をおさえる必要があります。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には「脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい」と記述があります。脂質異常症の人は、卵以外の食品からのコレステロールの摂取も考慮して、卵は1日1/2個程度までにしましょう。
【参考文献】
厚生労働省 e-ヘルスネット「LDLコレステロール」
厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症」
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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