3月は自殺予防強化月間|『心のケアをもっと身近に』オンラインで行う第3のメンタルヘルスケアとは?

 3月は自殺予防強化月間|『心のケアをもっと身近に』オンラインで行う第3のメンタルヘルスケアとは?
南 舞
南 舞
2023-03-28

3月は自殺対策強化月間です。もともと自殺者数が多い日本。コロナ禍も相まって、ますますその数は増えています。尊い命を自ら断とうとする人の数を減らすために、心のケアの大切さやセルフメンテナンスをいかに習慣にするのかが課題であると筆者は考えています。そんな中、2022年12月に『心のケアをもっと身近なものにしたい』という想いのもと、医療、カウンセリングに続く第三のメンタルヘルスケアとして【MeeetU】というオンラインサービスがスタート。同サービスを運営する一般社団法人国際心理支援協会の浅井伸彦さんにお話を伺いました。

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MeeetUとは、どんなサービスですか?

浅井伸彦さん(以下,浅井さん)MeeetUは、オンライン上・グループでメンタルヘルスケアを行うサービスです。これまでのメンタルヘルスケアというと、大きく分けて医療(医師の診察と投薬治療)・個別の心理カウンセリングの2択でした。もちろん双方に良いところはありますが、一方で限界も感じています。例えば、診察と投薬治療によって一時的に症状が落ち着いても、根本的なところの心の問題にはふれるのが難しい。そこで役立つのが個別の心理カウンセリングですが、現在心理カウンセリングは保険診療の対象外なので、どうしても高額になりがち。カウンセリングを利用したいと思っていても金銭的な問題で断念してしまうと言った声を聞いていました。そこで思いついたのが、グループで心のケアを行うことでした。グループであれば、診察や投薬治療ではカバーしきれない心のケアの部分にふれることができ、かつ個別の心理カウンセリングほど高額ではない価格で継続的に心のケアを受けやすい状態を作ることができると考えました。

世の中的には、カウンセリングはカウンセラーと1対1で行うイメージが強いと思うので、グループで心のケアって意外に思う人もいるかもしれません。

浅井さん:そうですよね。しかし、心理支援の形として【集団心理療法】【自助グループ】と呼ばれるものがあります。集団心理療法では、みんなで特定のプログラムを行ったり、セルフケアについて学んだりして、回復を目指していきます。日本でも集団心理療法を行っている場所はありますが、数としては少ないのですよね。また、自助グループとは、同じような悩みや問題を抱える人たちが集まって、心理士などの治療者や他の参加者と悩みや困りごとについて話し合うことで、互いに支え合うものですが、コロナ禍で活動を休止しなければいけないという声も。対面では難しくても、オンラインだったらコロナの問題もクリアできますし、場所を選ばずより多くの人たちが参加することができるのではないかと思ったんです。また、グループであれば金銭的な部分の負担も少なくすることができますし、メンタルヘルスケアを必要としている人たちが継続的にケアを受けられる。そう言った意味で、医療・心理カウンセリングに続く、第3のメンタルヘルスケアになるのではないかと考えています。

――確かに、これまでよりもメンタルヘルスケアのハードルが下がりそうです。MeeetUでは具体的にどんなことを行っているのですか?

浅井さん:MeeetUでは、こころとからだの両方からセルフメンテナンスを行い、生活習慣を改善すること、学校や会社では教えてくれないコミュニケーションについて知り、実際に体験することで、日常生活に活かしてもらえるよう、様々なプログラムを用意しています。大きく2つのプランがあります。ひとつは【学習・体験型】。講師が講演・実践する、あるいは講師同士が対話するものを聞いていただき、それに質問する、あるいはワークやエクササイズを実際に体験してみるということを通して、メンタルヘルスケアや精神疾患やその周辺の悩み・問題への対処法を学ぶ場を提供しています。いま話題のHSPについての講義や、マインドフルネス・ヨガのプログラムが特に好評いただいていますね。もうひとつが【交流・居場所型】。参加者同士がチャットや音声での対話、画面をオンにしてのビデオ対話などを通じて、交流を行える環境を提供しています。例えば、働き方に悩みを抱えている人たちのグループや、怒りとうまく付き合うためのアンガーマネジメントのグループなど。画面や音声をオンにすることを強制していないので、参加者の方からは安心して参加できるという声をいただいています。今後は、精神疾患などを持つ当事者同士でのグループである自助グループや、当事者の家族間をつなげる家族会を悩み別で実施するなど、充実させていくことも考えています。MeeetUの強みは、講師あるいはグループのファシリテーター全員が、心の専門家である公認心理師あるいは臨床心理士の有資格者であるというところ。様々な心理ケアの実践を積み、日々学び続けている先生方ばかりなので、自信を持っておすすめできます。

きっかけは対話の大切さに気づいてから

――MeeetUのサービスが生まれたのは、浅井さんご自身の心理士としての経験も大きいのだとか。

浅井さん:私の専門のひとつに、【オープンダイアローグ】というアプローチがあります。当事者、家族、そして当事者を支えるネットワークに関わる人達が集まり対話を行うというものです。1980年代にフィンランドの西ラップランドにある精神科病院、ケロプダス病院で行われるようになって以降、西ラップランド地方の統合失調症の入院病床数が激減したといわれています。統合失調症の他にも、その他精神疾患や、精神疾患ほどではなく日常での悩みを持つ人にも有効と考えられています。オープンダイアローグは、名前の通り『開かれた対話』を大切にし、その人の“いま、ここで”の話をジャッジすることなく純粋に聞き、対話自体を続けること自体を目的とします。「対話」と聞くと『そんなの簡単だ』と思う人もいるかもしれません。しかし、実は意外と難しいことなんですよね。例えば、相手が話している時に自分が次に何を話そうか考えながら聴いている時ってありませんか?それは対話とは言えないんです。また、相手の意見が変わったり、治療の効果を出すために行うのも対話とは違います。こうやって説明すると対話へのハードルが上がってしまうかもしれませんね(笑)でも、それくらい対話がメンタルヘルスに与える影響は大きいということ。だからこそMeeetUでもそういった対話の時間を大切にしたいと考えています。

――安心・安全な場所で話をすることはもちろん、コミュニティの中でつながりを持つということ自体に良い影響があるのでしょうね。実際使っている方の反応はどうですか?

浅井さん:そうですね。開設して3ヶ月ほど経ちましたが少しずつユーザーさんが増えています。学習・体験型の方では、同じ先生の講座にリピートして参加されるという方も増えてきました。交流・居場所型の方は何度か参加していくうちに、顔を出して話してくれたり、自分の考えを話してくれる人たちが増えてきましたね。『参加することで心が軽くなる』『他の人たちの話も聞けて、悩んでいるのは自分だけではないと安心できた』と言った声もいただき、こうして参加者の方同士が対話することが心の相互ケアになっているのを知って、やってよかったなぁと改めて思いました。

――MeeetUをどんな方に使っていただきたいですか?

浅井さん:オンラインで全国どこからでもつながることが可能なので、心の専門家の話を聞いてみたい、質問してみたいという方、お住まいの近くで心の専門家に会う機会がない、あるいはセルフメンテナンスが必要と思っているけれど、その機会がないという方に使っていただきたいです。現在すでに心療内科やカウンセリングにかかっている方に第3のツールとして使っていただくことはもちろん、いわゆる未病と呼ばれる「病気にかかる前の状態」で予防的に自分の心のメンテナンスをしたい人にもぜひ体験してもらいたいですね。対話することやセルフケアの方法を学ぶことって、メンタルヘルスにとって大事なことだけど、日常生活の中では難しいこともあると思います。そんな時にMeeetUの提供する講座やグループを通して、誰かにあるいは何かに侵害されることない安全な場所で、安心して自分のことを話せること、そして周囲の人に受け止めてもらえたという体験を多くの人に知ってもらい、みなさんの心の健康を育むお手伝いができたらうれしいです。

About:MeeetU

MeeetU

【わかる】【つながる】【対話する】ことを通して、心と体を整えていく、オンラインのメンタルヘルスケアサービス。公認心理師・臨床心理士などの有資格者による様々な心のケアの方法をすることができます。

http://lp.meeetu.jp/

お話を伺ったのは…浅井伸彦さん

浅井信彦
浅井伸彦さん

一般社団法人国際心理支援協会 代表理事、株式会社Cutting edge代表取締役。MEDI心理カウンセリング東京、MEDI心理カウンセリング大阪の代表。公認心理師・臨床心理士・保育士、オープンダイアローグ国際トレーナー。これまで大学の研究補助、スクールカウンセラー、特別支援学校講師、学生相談室カウンセラー、心療内科の臨床心理士、大学非常勤講師として従事してきた。専門は、オープンダイアローグ、家族療法、EMDRなどのトラウマケア。

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南 舞

南 舞

公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。



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