マスクを外すことに不安を感じていませんか?不安の原因とは|臨床心理士のアドバイス
マスクを外す不安を感じていませんか?感染対策の面からマスクを外さない場合もあれば、違う理由から外さないという選択をする人もいます。例えば、「マスクがない顔を見せるのが不安」「どう思われるか心配」「マスクがあった方が安心する」といった場合があります。特にマスク後に築いた対人関係の場合、その人の前でマスクを外すことに抵抗が生まれやすいことでしょう。今回は、マスクを外す不安感について解説します。
2023年3月13日以降、「マスクの着用は、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本」と発表されました。しかし、実際にマスクを外すとなると様々な不安や心配の声を耳にします。それでは、実際にどのような不安があるのかご紹介します。
マスクを外すことの不安
目立ちたくない
街を歩いていると、現在もマスクをしている人たちが多数となっています。少数派は目立ちやすく、注目されやすくなるので、「みんなが外していないから外したくない」と集団に同調したい気持ちが出てきます。日本は集団を大切にする「集団主義」やみんなに合わせることを良しとする「同調圧力」を感じやすい文化があると考えると、現在はまだマイノリティであるマスクを外す行動に移りづらくなります。
ルッキズムの影響
ルッキズムとは、人を外見で評価する思想のことです。文化や時代に応じた「良い」とされる容姿や体型を基準に、自他を評価する考え方は、時に差別や劣等感につながります。「自分の容姿に自信がない」「見た目が気になる」「顔をなるべく見せたくない」という場合、顔の半分を覆ってくれるマスクは人に見られる面積を減らすことになるので、不安の軽減につながります。特に顔の下半分にコンプレックスを抱えている人にとって安心のアイテムになります。マスク美人という言葉が流行ったように、マスクを外した顔よりマスクをしている顔の方が「良い」と感じている場合は、外すことの不安がより強くなるでしょう。
社交不安
社交不安とは、人前で話すなど、人と関わる状況で強い不安や恐怖、緊張を感じることです。人と関わることが苦手で、対人関係に不安感を感じている場合は、マスクをすることで不安が軽減される場合があります。マスクや帽子、フードなど、何かに包まれている感覚は安心につながります。気づかないうちにマスクで安心感を得ていた場合、外すことに不安を感じやすくなるでしょう。
マスクをつけ続けるデメリットは?
マスクには不安軽減や感染対策などメリットがある一方で、マスクをつけ続けることのデメリットはあるのでしょうか。自律神経系による対人関係の交流システムから考えると、口周りの筋肉はコミュニケーションにおいてとても重要になります。マスクによって口周りの筋肉を使う機会が減ってしまうことは、人との交流を促進されづらい、人と関わって安心感を得られ難いといったデメリットになるでしょう。また、マスクによって呼吸が浅くなると、不安を感じやすくなり、自律神経系の乱れにつながります。
マスクを外す場合は少しずつ慣れさせよう
マスク着用については個人の判断に委ねられています。しかし、今後、状況によりマスクを取る場面が生じる可能性があります。特に抵抗感や不安を感じない場合は、エイっとすぐに外しても良いですが、抵抗や不安が強い場合もあると思います。その場合は、少しずつ慣れさせるようにしましょう。例えば、「まずは安心できる相手の前で外してみる」「屋外など抵抗感がない場面から始めてみる」「短時間だけ外してみる」と少しずつ時間や場面を広げてみます。
また、外すことに抵抗感や不安が強い場合は、「なぜ抵抗があるのだろう」「もしかしてルッキズムが気になっているのかな」「社交不安があるのかな」等と自分を見つめ直す機会にしてもいいでしょう。理由が分かれば、考え方を見直したり、自信が持てることを探したり、不安を軽減する方法を試す等、今後の生きづらさの軽減につながることでしょう。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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